BEGIN、拍手と指笛が途切れず鳴り響いた35周年ツアーの最終地点 石垣市民会館レポート
石垣島出身のバンド、BEGINのコンサートを石垣島で観るのは、特別な体験となった。石垣島の自然や人々や暮らしがモチーフとなった楽曲が数多く演奏されたからだ。BEGINのデビュー35周年を記念して、各地のホールを巡った全35公演のツアー『さにしゃんサンゴSHOW!!~35年目の音楽旅団ツアー~』のファイナルとなる3月29日の沖縄・石垣市民会館。前日の28日に続く2Days公演である。なお、このファイナルのステージは、全国各地の映画館でBEGIN初のライブ・ビューイングも開催され、バンドと超満員のファンとが一体となって作り上げた感動的なフィナーレの熱気を全国へリアルタイムで届けた。
開演時刻となりオープニングアクトとして、本ツアー全公演でBEGINのドラマーを務めた比嘉舜太朗が在籍するHoRookies(ホルキーズ)が登場し、3曲を熱演。盛大な拍手を浴びて、会場の空気が温まったところで、BEGINのメンバーが登場すると、満員の観客が歓声と拍手と指笛で迎えた。この指笛の響きの良さは、石垣島でのライブであることの明確な証だろう。比嘉栄昇(Vo)、島袋優(Gt / Vo)、上地等(Key / Vo)のBEGIN3人に加えて、迎里中(Ba)、比嘉舜太朗(Dr)という5人編成での演奏だ。
「先日、36周年を迎えました。お祝いの気持ちはもういらないです。みなさんに感謝の気持ちをお届けしたいので、好きに楽しんでください」という比嘉栄昇の言葉に続いてのオープニングナンバーは、「防波堤で見た景色」だ。情感あふれる歌声と味わい深い演奏がじわじわと染みてきた。しっとりとした始まり方なのだが、会場の近くの海が舞台の歌ということもあり、歌で描かれた景色と現実の風景との相乗効果によって、郷愁の思いが鮮明に伝わってきた。さらに、「パーマ屋ゆんた」、「イラヨイ月夜浜」と石垣島や八重山諸島にちなんだ楽曲が続く展開だ。
デビューシングルの「恋しくて」では、36年経った今も、せつなさや恋しさはそのまま真っ直ぐ届いてきた。比嘉のエモーショナルなボーカルとブルースフィーリングあふれる島袋のギターの掛け合いも見事だ。島袋のダブルネックギター(12弦)、上地のアコーディオン、客席のハンドクラップが加わって演奏されたのは、1stアルバム『音楽旅団』収録曲の「流星の12弦ギター」。アイリッシュやカントリー、ブルーグラスなどのテイストの漂うアンサンブルやグルーヴに体が揺れる。BEGINの奏でる音楽の素晴らしさは、生まれ育った土地に根ざしながらも、世界各地の様々な音楽のエッセンスを吸収していく柔軟で自由な姿勢を備えている点にある。あらゆる人々に開かれている音楽なのだ。
6曲目からは、昨年リリースされた最新アルバム『太陽』からの楽曲が軸となっていて、デビュー35年の彼らの等身大の歌と演奏を堪能した。「夜空にブルースを」では、観客がハンドクラップで参加する中、島袋が軽やかな歌声を披露した。上地のボーカルをフィーチャーした「開拓者」では、彼の両親が宮古島から石垣島に渡って山の中で開墾したエピソードも紹介された。時空を超えていくようなダイナミックな演奏に乗って、上地の伸びやかな歌声が響き渡った。比嘉のアコースティックギターの弾き語りで始まったのは「ただ雲になる」。上地のアコーディオン、島袋のマンドリンも含めて、無常観と寂寥感とが混ざり合った歌の世界が染みてきた。
島袋のスライドギターをフィーチャーした、サザンロック・テイストの漂う「国境を吹き行く風」の途中で、ステージバックにあった壁面が動き出し、ヤシの木のセットが浮き彫りになってからは、まるで海辺に組まれた野外ステージで演奏しているような光景が出現した。ここから再び、アルバム『太陽』収録曲の「空気いただきます」と「太陽」が演奏された。「太陽」での比嘉のエモーショナルな歌声からは、深い喪失感を乗り越えていこうとするエネルギーがほとばしっていた。昇る太陽のような歌と演奏に胸が熱くなった。デビューして36年と8日。これまでの一日一日、彼らがさまざまな思い出や記憶を音楽に刻みつけてきたことも感じた。
「今回のツアー中に、ライブやレコーディングに参加してくださった太鼓の西川(啓光)さんが天国へと旅立ちました。“最後の石垣島公演はスケジュールを空けておくから”と約束していました。先立たれたことは非常に残念ですが、一緒に音を出した感覚はしっかり残っています」という比嘉の言葉に続いて、「ボトル二本とチョコレート」が演奏された。音楽とは、楽しいことも悲しいこともすべて受け止めてくれるものであることを示すようなステージだ。観客も一緒に歌い、踊り、手拍子している。客席のあちこちで提灯も揺れている。この曲では、「西川さん記念」との比嘉の言葉で撮影もOKとなった。〈みんなで年を取って 写真を撮って〉という歌詞のとおりの光景が出現。悲しみさえもエネルギーとしてしまうところにも、BEGINのライブの素晴らしさがある。演奏が終わってからも、しばらく指笛が鳴りやまなかった。
後半は比嘉が三線を手にして、石垣島や八重山諸島にちなんだ島唄が数多く披露された。島袋がボーカルを務めた「海の声」では、観客の腕が潮風に揺れるヤシの木のように見えた。ミラーボールの光が輝く中での「三線の花」は、観客の手拍子の中で、比嘉の人間味あふれる歌声にも揺さぶられた。
「35公演目、少し寂しい気もします。普段どおりにやれたらと思っていましたが、熱いものがこみあげてしまいました。ここから踊りたい方はガンガン踊っていただけたら幸いです」と島袋。さらに、「がんばれ節」「竹富島で会いましょう」「オジー自慢のオリオンビール」と、観客も歌、手拍子、カチャーシー、指笛などで参加。「ほなバイバイ~大阪マドロス女~」では、マスコットのマルシャンちゃんがステージに登場して踊りを披露。「かりゆしの夜」では上地の凜とした歌声に、観客が雄々しいお囃子で加わり、力強いコール&レスポンスとなった。本編最後の曲「島人ぬ宝」では、比嘉のソウルフルな歌声に胸が熱くなった。比嘉のアカペラの歌に、会場内が一体となって歌で参加する場面もあり、後半はバンドの演奏、お囃子、手拍子、指笛が一体となっていった。ステージ上と客席だけでなく、石垣島の大地と海と空も一緒に共鳴していくような感動的なエンディングだ。
「時間、完全にオーバーしています」という比嘉の言葉に続いて、そのままアンコールの「マルシャメドレー」に突入した。ここでも、マルシャンちゃんが参加。「バルーン」「太陽のチルドレン」「YOU」「愛が走る」「国道508号線」「笑顔のまんま」「ソウセイ」「涙そうそう」というBEGINの代表曲がブラジル音楽のマルシャのアレンジによって、次から次へと繰り出された。「ソウセイ」では、HoRookiesの津波俊之介と垣花義毅もラップと口説で参加。カーニバルにして、お祭りにして、宴会と言いたくなるような、ひたすら楽しくて、にぎやかな空間が出現した。
「長い長いツアーでしたが、ケガもなく、最後に石垣島でやれたことはうれしいです」(上地)
「36年間も3人で音楽を続けてこられるとは思いませんでした。皆様のおかげです」(島袋)
「BEGINは解散なんて、口に出してはダメなバンドなんです。だからこのツアーが終わったら、自分たちがこれから何をすべきか、ちょっといったん休憩して、考えるべき時期が来たんだなと思います。ゆっくり考えて動いていきますので、また会える日を楽しみにしています」(比嘉)
3人それぞれの挨拶に続いて、最後に演奏されたのはアルバム『太陽』収録曲の「なんくる君であれ」だった。比嘉の歌と三線、島袋のギター、上地のキーボード、丹念な演奏にはそれぞれの願いや祈りがたっぷり込められていた。過去への思いだけでなく、未来を見つめるまなざしや、次世代への思いも伝わってきた。演奏が終わると、拍手と指笛が、打ち寄せる波のように途切れず鳴り響いた。35周年ツアーの最終地点、石垣市民会館のステージで、BEGINの3人はデビュー36周年を超えて、未来へと進んでいく準備段階へと入ったところだろう。音楽旅団の旅はまだまだ続いていくに違いない。どんな景色が待ち受けているのかは、空に輝く太陽もまだ知らない。
■ライブ情報
『BEGIN 「さにしゃんサンゴSHOW!!」 〜35年目の音楽旅団ツアー〜』
BEGINの35周年を彩る全35公演 全国ホールコンサートツアー
2025年
9月19日(金) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
9月20日(土) 神奈川・小田原三の丸ホール
9月23日(火・祝) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
9月27日(土) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート大ホール
9月28日(日) 三重・イスのサンケイホール鈴鹿(鈴鹿市民会館)
10月3日(金) 石川・金沢市文化ホール
10月4日(土) 長野・長野市芸術館 メインホール
10月11日(土) 鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
10月12日(日) 宮崎・日向市文化交流センター 大ホール
10月17日(金) 奈良・なら100年会館 大ホール
10月18日(土) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
10月25日(土) 島根・島根県民会館 大ホール
10月26日(日) 香川・サンポートホール高松 大ホール
11月8日(土) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール
11月9日(日) 岩手・奥州市文化会館 Zホール 大ホール
11月13日(木) 山形・酒田市民会館「希望ホール」大ホール
11月15日(土) 秋田・由利本荘市文化交流館カダーレ 大ホール
11月16日(日) 青森・弘前市民会館
11月23日(日) 熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
11月24日(月・祝) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
2026年
1月16日(金) 沖縄・宮古島市文化ホール(マティダ市民劇場)
1月18日(日) 沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
1月31日(土) 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
2月7日(土) 宮城・東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2月14日(土) 山口・三友サルビアホール(防府市公会堂)
2月15日(日) 広島・広島上野学園ホール
2月23日(月・祝) 京都・ロームシアター京都 メインホール
3月1日(日) 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
3月8日(日) 東京・NHKホール
3月14日(土) 愛媛・しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール)
3月15日(日) 高知・高知市文化プラザかるぽーと・四国銀行ホール
3月20日(金・祝) 大阪・オリックス劇場
3月21日(土) 大阪・オリックス劇場
3月28日(土) 沖縄・石垣市民会館
3月29日(日) 沖縄・石垣市民会館
◾️セットリスト
01. 防波堤で見た景色
02. パーマ屋ゆんた
03. イラヨイ月夜浜
04. 恋しくて
05. 流星の12弦ギター
06. 夜空にブルースを
07. 開拓者
08. ただ雲になる
09. 国境を吹き行く風
10. 空気いただきます
11. 太陽
12. ボトル二本とチョコレート
13. 海の声
14. 三線の花
15. がんばれ節
16. 竹富島で会いましょう
17. オジー自慢のオリオンビール
18. ほなバイバイ〜大阪マドロス女〜
19. かりゆしの夜
20. 島人ぬ宝
<アンコール>
01. マルシャメドレー<バルーン~太陽のチルドレン~YOU~愛が走る~国道508号線~笑顔のまんま~ソウセイ~涙そうそう>
02. なんくる君であれ
◾️BEGINオフィシャルサイト
https://www.begin1990.com/