森川葵咲樹、メコン、Hammer Head Shark、COX2、LNGSHOT……編集部が選ぶ「いま、出会ってほしい」音楽たち
特集「いま知りたい人、聴きたい音楽 ~2026 春~」の一環として、編集部員が語りたい&推したいアーティストたちの「必聴ガイド」をお届け。次世代シーンを彩る才能たちの魅力を、おすすめ曲とともに独自の視点で紹介する。2026年、あなたの日常を彩る新たな音楽との出会いを、ぜひここで見つけてほしい。
森川葵咲樹
歌が上手い、声がいい、そうした才能に出会えることはあっても、歌詞が気になるシンガーソングライターに出会えることは意外と少ない。どんな出自で、どんな活動をしてきたのか。前情報なくふれた森川葵咲樹(もりかわあさぎ)の歌は、一聴して歌詞の意味に興味が湧いた。後から「ダーウィン事変」にみられる独創的な詩の世界には、幼少期からの読書体験があると知り、腑に落ちるものがあった。彼女が紡いできた歌のなかでも、「棘のある腕に抱かれて」は白眉だ。〈私を一番楽に殺す方法〉という扇情的な歌い出しから始まるこの曲は、ひときわ異彩を放っている。彼女にとってのA面/B面、どちらの表現なのかはわからないが、こうした楽曲を個人的にはもっと聴いてみたい。(久蔵)
メコン
「角」という曲をまずは聴いてほしい。〈笑わないで聞いてくれるかい/僕には角がある/そろそろ許してくれるかい/君にも非はある〉という爽やかな歌い出しだが、笑わないで、許してと低姿勢気味でお願いしながらも、〈君にも非はある〉と苦言を呈する鮮やかな手のひら返し。普通は「僕が悪かった」だ。だが、思い返すと心の中でそう思ったことがあるのではないか。穏やかなサウンドに反する、この皮肉めいたユーモアに心惹かれてしまった。2023年結成のメコン。フォーク/カントリーの繊細さとUSインディー味のある荒っぽさを調和したロックサウンドが軸にありつつ、日本語に重きをおいたメロディとリズム隊によるグルーヴの心地よさが魅力的だ。〈君の手は汚れてるから/ちゃんと洗ってよ〉と何度も繰り返す「君の手は汚れてる」、〈でもさ〉や〈じゃんか〉のような話し言葉を小気味よく響かせる「夏休み」など、作詞曲を担当する鶴岡光起は、はっぴいえんど、キリンジ、くるりなどをルーツに挙げているが、そういった連綿と続く日本語ロックのDNAを引き継いでいる。とはいえ、ユーモアだけで終わらないのもメコンである。〈やり直せたとしても/それはただのレプリカなんだ〉と核心をついてくる「Replica」、〈僕がいつも思ってることでは/きっと届きはしないから/誰か代わりに伝えてくれないか〉ととつとつと歌う「異星人」など、哀愁や諦念という人の持つ弱さに光を当てた歌詞も秀逸で沁みるのだ。(泉)
Hammer Head Shark
「名前を呼んで」を聴いた時は衝撃だった。曖昧ながらも確かに存在している、世界と自分の間にある境目。その輪郭にそっと触れながら、儚くも力強いメロディに乗せて紡がれるのが〈名前を呼んで〉という言葉だ。それは時に消え入りそうな“個の存在”を肯定し、形と安心を与える歌として、心の奥底までスッと浸透した。バンド名が意味するのはシュモクザメ。攻撃性はありつつも実は臆病な性格のサメだそうだが、まるで安寧の地を求めて水中を彷徨っているかのようなHammer Head Sharkの音像は、混沌とした現代の優しい子守唄となって聴き手の魂を癒やすだろう。昨年のアルバム『27℃』は、流麗でノイジーなギターポップが揃った名作(「レイクサイドグッドバイ」の美しい演奏にはとりわけ酔いしれた)。インディロックの新たなる至宝として、今こそ触れてほしいバンドだ。(信太)
COX2
SAKIKA(Vo/Gt)とMIREI(Rap/Dr)のふたりによるポップロックデュオ。一つひとつのビートがもたらす確信、サウンドに宿る煌めき、歌の力強さ、言葉の発語感――。一切の迷いなく、清々しいまでに堂々と放たれるこの音楽は、明快で最高のエンターテインメントである。しかも、それは絶対的な柔軟性を持っている。2026年一発目のリリース「調子に乗っちゃって」で見せてくれた可能性が何よりの証拠。デュオであるからこそ羽ばたく、大きな夢を叶えるべき巨大な才能だ。これまでに見たことも聴いたこともない、今最も痛快で新しい、そしてみんなが本当は求めている音楽。ここからたくさんの人に届いていくのが楽しみで仕方ない。(林)