milet、『葬送のフリーレン』第2期最終話に「Trace」が起用された必然性 「The Story of Us」とも繋がる物語を読み解く
TVアニメ『葬送のフリーレン』は、2023年9月の初回放送以来、miletの歌とともに旅を続けてきた作品だと言っても過言ではないだろう。第1期のエンディングテーマ「Anytime Anywhere」、初回スペシャルで流れた「bliss」。miletの歌声はいつもフリーレンたちの旅のそばにあり、物語の余韻を静かに受け止めてきた。
ヒンメルとフリーレンの対話にも聞こえる「The Story of Us」と「Trace」
そして第2期の放送開始とともに届けられたのが、新たなエンディングテーマ「The Story of Us」だ。第1期に引き続き、miletが作詞・作曲を、Evan Callが編曲を担当したこの楽曲は、『葬送のフリーレン』が見つめ続けてきた時間の流れ、人から人へ受け継がれていく思い、そして失われたあとにもなお残り続けるものへのまなざしを、ひとつに束ねたような曲だった。だからこそ、3月27日に放送された第2期最終話・第38話「美しい光景」の特別エンディングとして、シングル収録曲「Trace」がサプライズで使用されたことにも、強い必然があったように思う。
印象的なのは、「The Story of Us」のサビにある〈振り返ればいつも Holy trace あなたが笑ってた〉という一節だ。毎週のエンディングで繰り返し耳にしてきた“trace”という言葉が、最終話において「Trace」という別の曲としてあらためて響いたことで、その意味が一気に開かれたように感じられた。もしかすると、この2曲は最初からどこかで響き合うように置かれていたのかもしれない。
「The Story of Us」の歌い出しは、〈So don’t you worry あなたに知られないように あなたを守れますように〉。思いをあえて言葉にせず、それでも相手の見えないところで支え、道を照らそうとするその在り方は、生前のヒンメルの姿勢とも重なって聞こえる。一方、「Trace」には〈誰よりも あなたに言えるように どこでも あなたに見えるように〉というフレーズがある。守ろうとする側の祈りと、その痕跡をたどりながら歩いてきた側の思い。2曲を並べて聴くと、ヒンメルとフリーレンの時間差のある対話のようにも思えてくる。
第2期の「The Story of Us」のエンディング映像では、ヒンメルの羽ペンに宿る青が、フリーレンの手元のランプに灯る青い炎へと受け継がれていくように描かれていた。そして「Trace」にも、〈雨の日もずっと 灯してた光を〉〈優しい火 ずっと 絶やさずに守るよ〉という一節がある。この“灯し続ける光”は、ヒンメルがフリーレンへ遺した思いの象徴として読むこともできるだろう。だが最終話まで見届けた今振り返ると、それは一人から一人へ向けられた感情にとどまらず、誰かが守ろうとしてきた暮らしや、そこで生きる人々の笑顔そのものを指していたようにも思える。
というのも、第2期の物語を振り返ると、そこには“故郷”というモチーフが確かに流れていたからだ。最終話でシュタルクが口にする「誰かの故郷を守るっていいもんだな」という台詞は、その感覚を端的に言い表していたように思う。本作の描く故郷とは、ただの出身地を意味しているわけではない。仲間と共に生き、笑い、日々を積み重ねてきた場所のことだ。第2期は、そうした誰かの大切な営みを守ることの意味を、戦いや旅の先にある風景として描いていたのではないだろうか。