アンジェラ・アキ、幼少期のトラウマから生まれた成功と苦悩 困難を極める時代に今届けたいメッセージ

「書いたことから逃げない」ーー自身と向き合う覚悟を込めた『Shadow Work』

アンジェラ・アキ「Floating Planets」Official Music Video

ーーではアルバムの収録曲についていくつか聞かせてください。1曲目「Necklace」には〈私が変わるのを恐れていた/大人のふりした少年よ〉という生々しいフレーズがありますね。

アンジェラ:これもカウンセリングの一環なんですけど、ジャーナルって言って、感じていることをそのまま書くようにしていて。朝の15分を使って書いてるんですが、ときどき「待って。今、私は何を書いた?」ってハッとすることがあるんです。潜在意識を文字にして、視覚として捉えるというか。それを続けているうちに、恋愛関係にあった人に対するモヤモヤが出てきて、「これを曲にしてみよう」と思ったり。今回のアルバムに関しては「自分が書いたことから逃げない」と決めていたんです。私はもともと編集能力が高いという自負があって。「もっとキャッチ―にするに、こういうフレーズを入れたほうがいい」みたいな。歌詞にしても「私のストーリーではなく、みんなのストーリーにする」というのが得意なんですけど、それをやり過ぎると、どうしても本音から遠ざかってしまう。『SHADOW WORK』は編集能力を使わず、とにかく自分から出てきた言葉をそのまま歌おうと。「Necklace」の歌詞は具体的過ぎて恥ずかしいし、相手の人には「ごめんね」なんですけどね。〈守れないくせに約束だけは18金〉は自分でもすごい言葉だなって思いました。「こんな奇跡の言葉が私から出てくるはずがない」と思って、他のどこかで使われている言葉ではないか、めちゃくちゃ調べてしまいました(笑)。

ーー「Blood River」も心に残りました。特に〈深く、深く刻まれる 嘆きを解き放ちたい〉という歌詞はすごいなと。

アンジェラ:先祖代々続いている悲しみや痛みの連鎖みたいなものですよね。「Blood River」もそのときに感じていたことを書いていて……上手く言えないんですけど、自分が背負ってきたものは、自分だけのものではないと思うんです。それは子育てのなかで気づいたことでもあって。もしかしたら、私が背負ってきたものを息子に渡そうとしているんじゃないかと怖くなったし、「これを断ち切ることはできるんだろうか?」と。これもカウンセリングの先生とよく話すことなんですけどね。

ーーそれはすべての人に当てはまる話ですね。親も、その親も、いろんなものを抱えながら生きてたはずなので。

アンジェラ:抱えないで生きてる人は1人もいないと思います。それを引き続いてしまうとリュックがどんどん重くなってしまう。その連鎖を断ち切るためには貨物列車を素手で止めるぐらいのパワーが必要。まずは脈々と繋がっている連鎖を意識することが大事なのかなと。

ーーブルースロック調のサウンドも歌詞の内容としっかり噛み合っていて。この楽曲はアンジェラさん自身がプロデュースしていますが、他の収録曲はDim Starさん、トオミヨウさん、田中義人さんとの共同プロデュース。アレンジやサウンドメイクはどうやって進めていたんですか?

アンジェラ:私の血液のなかに流れているポップミュージック、私が好きなサウンドやビートを作るというだけですね。プロデューサーに委ねた部分もあるんですが、たとえば「Narcissist」(プロデュース:トオミヨウ)はトオミさんに9回くらいやり直してもらったんですよ。ピアノの弾き語りを渡して「あとはお願い」ではなくて、ビートはこう、低音はこんな感じ……って横からいろいろ言わせてもらって。だいぶメンドクサイ人になってたと思いますけど(笑)、しっかり自分の意図を反映したかったんですよね。

ーーアルバムの最後に収められている「Hitori Janai (Never Alone)」はタイトル通り、“誰も独りじゃない”というメッセージを込めた楽曲。

アンジェラ:この曲は、2024年の年末に瞑想のセッションに参加したのがきっかけです。4時間くらいの長い瞑想だったんですけど、自分のなかにあったいろいろな感情が浄化されて、筒みたいな状態になって。過去の自分、未来の自分が地球全体と繋がるような感覚になったときに、メロディと歌詞が一気に降りてきたんです。瞑想中はメモできないから、「がんばれ私、覚えといて」って言い聞かせて(笑)。瞑想が終わったのが夜11時くらいで、家に帰ってすぐデモを作った「Hitori Janai (Never Alone)」なんです。まだアルバムの制作は半分も終わってなかったんですが、そのときから「この曲を最後にしよう」と思っていました。

ーー〈私の悲しみは治らない傷ではない〉という歌詞もあって。今よりも安心して生きられる、その入り口になるような楽曲だと思います。

アンジェラ:もちろん安心して生きていきたいけど、苦しみは避けられないじゃないですか。親を亡くすこともあるだろうし、何よりもいちばん怖いのは我が子を亡くすことだと思うんです。生きている以上、恐ろしいほどの悲しみや苦しみが襲ってくる可能性は常にあるけど、私自身は少しずつ、それが怖くなくなってきたんです。それはやっぱり“独りじゃない”という思いなのかなって。私たちは別々に存在しているように見えて、じつは一つ。そう思うことができれば、苦しみや悲しみを避けたいと思わなくなるかもしれないなと。

ーーこのアルバムを聴くことは、アンジェラさんの経験を共有すると同時に、リスナーの一人ひとりがそれぞれの生き方と向き合うきっかけになると思います。

アンジェラ:そう、そうあってほしいんですよ。自分のために作ったところもあるし、世に出さずに思い出の作品にしてもよかったんだけど、やっぱりリリースしたいと思ったのは、私の葛藤や体験、光に向かっているエネルギーを波動として共感したかったから。それだけでいいんですよね。

ーーアルバムリリース後は5月から8月にかけて全国ツアー『Angela Aki Tour 2026 SHADOW WORK』を開催。アンジェラさんの体験やエネルギーをリアルに共有できるツアーになりそうですね。

アンジェラ:はい。子どもが夏休みの間にツアーを組もうと思って。ちょっとはみ出ちゃいましたけど(笑)、子どもの父親にも協力してもらえるのですごく感謝しています。次のアルバムがいつになるのか、あるのかないのかも分からないので、とにかくこのアルバムをみなさんに伝えたいなって。ぜひ会場に来てください!

ーーアンジェラさんはアメリカ在住。大変な状況だと思いますが、ぜひ気を付けて、音楽活動を続けてもらえたらなと思っています。

アンジェラ:ありがとうございます。ニュースが見たくなくなるような毎日ですけど、こんななかでも頑張って生きていくしかないですからね。

アンジェラ・アキ「Forgiveness」Music Video

■リリース情報
ニューアルバム『Shadow Work』(デジタル/CD)
発売中
MHCL3150 価格3850円(税込み)
詳細:https://ssl.sme.co.jp/artist/AngelaAki/discography/MHCL-3150

ニューアルバム『Shadow Work』

アンジェラ・アキOfficial Instagram:https://www.instagram.com/angelaaki_official/
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