トゲナシトゲアリが確立したロックバンドの強靭さ　武道館ワンマンや劇場版『ガルクラ』などトピックだらけの2025年を総括

　2025年のトゲナシトゲアリは、前年のテレビアニメ『ガールズバンドクライ』放送での盛り上がりや、同アニメから生まれた数々のシングルと2枚のアルバム『棘アリ』『棘ナシ』、そして3月の横浜1000CLUBを皮切りに驚異のペースで規模が拡大していく各会場でのワンマンライブを経て、ロックバンドとしての強靭さと、どんなことがあろうとも決して揺るがない信念を確かなものにした、重要な1年だったように思う。

　1月には『BanG Dream!』プロジェクトから生まれたバンド・MyGO!!!!!との対バンライブ『Avoid Note』（※1）を行い、異なるコンテンツがリアルで交差するスペシャルな空間を作り上げることに成功。2月にはパシフィコ横浜 国立大ホールでの5thワンマンライブ『鳴動の刻』（※2）を2部構成で行い、ここで同年9月23日に日本武道館で念願のワンマンライブを実施することも発表された。

　4月には『ガールズバンドクライ』プロジェクト始動2周年を記念したスペシャルライブ（※3）も開催。ここでは劇中ライバルバンド・ダイヤモンドダストが初めてリアルでライブを披露し、アニメの中で描かれた2組が初めてステージ上に揃うこととなった。また、5月にはドラマチックRPG『ヘブンバーンズレッド』から誕生したラウドロックユニット・She is Legendとの対バンライブ『SOUL & CRY』（※4）も実現。MyGO!!!!!との競演から続いて、他コンテンツとの交流を深めることで、バンドとしてのアイデンティティを確かなものとしていく。それ以外にも、Fear,and Loathing in Las Vegas主催フェス『MEGA VEGAS 2025』をはじめ、中国・上海やアメリカ・ロサンゼルスでのイベントへの出演、台北でのワンマンライブ『凛音の理』開催など、国内外で積極的にロックフェスやイベントへの参加、ワンマンライブを実施するなどして、経験値を積み重ねていった。

　また、2025年5月には約1年ぶりのシングル『ダレモ』もリリース。テレビアニメ『ガールズバンドクライ』での物語を投出しつつ、一歩前へと踏み出した彼女たちの姿が投影された新曲たちからは、ロックバンドとしてネクストステージへ突入したことを伺わせた。その傾向は、9月発売のシングル『薄采ディスプレイ』からもしっかり感じとることができる。

　そして9月23日、活動開始当初から大きな目標として掲げてきた日本武道館でのワンマンライブ（※5）を決行。1万2000人を動員した同公演では、360度観客に囲まれた形でトゲナシトゲアリ第一章の集大成と言えるようなステージを展開したと同時に、10月3日公開の『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲』オープニング主題歌「もう何もいらない未来」をライブ初披露し、第二章への布石も見事に提示してみせた。

　その後、11月14日には『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』も公開。これにあわせて、テレビアニメ『ガールズバンドクライ』Blu-rayおよびDVDの第1巻から第7巻に特典として収録された楽曲を1枚にコンパイルした、初EP『小指立てませんか』（※6）も11月19日に発売。武道館以降も学園祭ライブ『ナタリー×日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”』（11月3日）やRAISE A SUILENとの対バンライブ『RAISE MY CATHARSIS』（12月7日）に出演し、屋内音楽フェス『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 25/26』（12月27日出演）で2025年の活動を締めくくることとなる。テレビアニメの爆発的人気に後押しされる形で勢いが加速した2024年もさることながら、気付けば今年もより濃厚な日々を過ごしてきたことがおわかりいただけるはずだ。

　そんなトゲナシトゲアリが年の瀬である12月17日に、今年2枚目のEP『全部をさらして生きてやる』をリリース。本作には先の『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲』および『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』の各オープニング＆エンディング主題歌と、それぞれのインストゥルメンタルバージョンが収録されている。テレビシリーズの延長線上にあった前作『小指立てませんか』とは異なり、本作は劇場版総集編をなぞりつつもバンドの現在進行形の姿が投影されており、ある意味では対照的な作品とも言える。