ゆよゆっぺ×nekoが語るニコ動黎明期と現在のボカロ/歌い手シーン 15年越しの共作が示す“ネット音楽の原点”

「“努力してスキルを積めば稼げる”という資本主義的ルールが通用しにくくなってきた」

ーーお二人の目に、今のボカロや歌い手カルチャーはどう見えていますか?

neko:まず、昔と比べて技術がありえないくらい上がっている。曲作りのセンスや音選びもそうだし、ミックスやマスタリングも個人でできる時代になった。音がめちゃくちゃ良いし、歌い手も全員歌が上手い。今は登録者100人のVTuberですらすごく上手い。だから、尊敬しています。完全に“対岸の花火”を見ている感じ。自分がそこにいる感覚はないですね。

ゆよゆっぺ:僕も基本的にねこさむと同じなんですけど、収入の100%が音楽だからこそ、自分がその場所にいる意識は持たなきゃいけないとは思っていて。でも、そう考えた時に行き着くのは、音楽が技術の進歩と結びついた結果、昔みたいに“努力してスキルを積めば稼げる”という資本主義的ルールが通用しにくくなってきたな、ということなんです。さらに生成AIがメロディを作れる時代になった。しかもそのメロディが普通に良いんですよね。破綻していないし。

neko:統計学的に“良い”とされているしね。

ゆよゆっぺ:もう音楽を単体で楽しむ時代ではなくなった。何かしらのコンテンツやSNSと結びついたりして音楽が力を発揮する時代。そうなると、「音楽だけ作る人は必要なのか?」という考えがよぎるんですよ。

neko:めっちゃわかる。そういう意味でも今の音楽シーンは対岸の花火なんです。

ゆよゆっぺ:だから僕は地下で爆弾を作るのが好きだし、ねこさむが言ったアンチテーゼもすごく納得できる。別にそのシーンをぶっ壊そうとか、どうにかしてやるぜ、と思っているわけではないんです。僕たちは僕たちで、まだ“威力のある爆弾”を作れる。そのためにたまに集まって、配線をいじって、試したい。「まだ俺たちやれるな、楽しいね」と互いに確認し合う時間が必要なんです。その意味で、作り終えた作品にはあまり興味が持てなくて、むしろねこさむと二人で配線をいじっている最中こそが、自分の人生で一番の幸せなんだと思います。

neko:今脚光を浴びているボカロPや歌い手は本当に大変だと思います。昔より明らかに難易度が上がっている。どれだけ上手くても伸びないとか、フォロワーを買わないといけなかったり……闇の部分も見え隠れしている時代だと思う。

ゆよゆっぺ:僕らはラッキーだったんですよね。これから音楽を生業にしていきたい若いクリエイターに言いたいのは、自分を見失わないこと。音楽はそんなに根詰めてやるもんでもない。できれば、自分の音楽を認め合える友達がいたら、もっと幸せな音楽生活が送れると思う。

neko:有名である必要もないしね。

ーーお二人の今のポジションと、「Cut it deep」がまさにその証明なんですね。

neko:願わくば、「Cut it deep」が新しい歪みの形になってくれてもいいし、忘れられてもいい。僕たちのやってるメタルコアはどうしても日の目を浴びにくい、最近はおしゃれ系が主流になっている。だから俺らの時代は来ないと思い続けてもう20年。せめて礎になれたらいいなと思っています。

ゆよゆっぺ:僕は研究職みたいな感覚で、流行っているおしゃれなものを自分のフィールドに突っ込んだらどうなるかを考えるのが好きなんです。ジャンルなんてラベルでしかなくて、根本は全部一緒。数字を入れ替えるだけで共存できる。あとは世の中に受け入れられるかどうかの話で……。結局その答えを探す旅こそが、僕にとっての音楽なのかもしれないです。

■リリース情報
ゆよゆっぺ × neko
配信シングル「Cut it deep」
2025年8月27日(水)リリース
配信URL:https://orcd.co/cut-it-deep

■関連リンク
ゆよゆっぺ
X(旧Twitter):https://x.com/yupeyupe
YouTube:https://www.youtube.com/@yuyoyuppe-0/featured

neko
X(旧Twitter):https://twitter.com/nekoniconico
YouTube:https://www.youtube.com/@nekoofficialchannel
ファンクラブ:https://fanicon.net/fancommunities/2513
オフィシャルサイト:https://nekonk.com/

関連記事