Number_iの最大の武器=“ボーカル”を徹底解説 平野紫耀&神宮寺勇太&岸優太、研究の痕跡と阿吽の呼吸
Number_iが、止まらない。
デビュー以降の快進撃は、万人の知るところだが、2ndフルアルバム『No.Ⅱ』のリリース以降もその勢いは増すばかりだ。快進撃の一例として挙げたいのが、ミニアルバム『No. O -ring-』(2024年リリース)収録曲の「BON」が、Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」に1年以上もランクインし続けていること。同チャートは、リスナーがシェアした音楽のデータを示す指標を元に作られたランキングである。「BON」は、2025年10月10日付の同チャートで連続487日間、100位圏内をキープ(※1)。同チャートで最も長くランクインした楽曲で、今もなおその記録を更新中だ。
これは、順位の推移が激しい音楽配信サブスクリプションサービスのチャートにおいては特異なことで、国内だけでなく海外でもシェアされている結果だと考える。9月22日にリリースされた2ndアルバム『No.Ⅱ』の収録曲も軒並みバイラルチャートにランクインしている。
なぜこれだけNumber_iが支持されるのか。
それはメンバーの平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太のプロデュース能力の高さが最大の起因だと思うが、本稿では『No.Ⅱ』収録のソロ曲をピックアップし、それぞれのラップや歌声の魅力について考察していきたい。
まずは、平野のプロデュースソロ楽曲「ピンクストロベリーチョコレートフライデー」。エレクトロニカなバックトラックと、ボーカルのオートチューンが印象的なメロウなミディアムチューンだ。平野は曲の序盤では言葉を切るようにラップし、そこからグラデーションをかけるように、子音よりも母音を滑らかに繋ぐグライドなどを聴かせる。サビのフレーズ終わりのトーンを一定にしていることで、ほかのバースのメリハリがコントラストとして映え、メロウなチューンだが、しっかりヒップホップ然とした印象を残している。
神宮寺のプロデュースソロ曲「LOOP」は、トレンドライクでバウンシーな楽曲。平野のソロ曲と同様、BPMは遅めだが、2020年代以降のソウルミュージックやR&Bを想起させる趣があり、ロマンチックなメロディがネオソウルを彷彿とさせる。途中でラップのバースも出てくるが、そこでも神宮寺の歌声が堪能できる。無機質なバックトラックに、少し湿度を与える神宮寺のシルキーな歌声、トーンの終わりを一瞬だけ鼻孔を通すボーカルアプローチなどからも、楽曲に対する解像度の高さを感じられる。
岸のプロデュースソロ曲「KC Vibes」もミディアムチューンだ。ミニマムなピアノとストリングスによるバックトラックと岸の声から、楽曲は始まる。淡々として展開も少ないトラックに、岸は低音域から中高音域まで自在に行き来しながらラップを重ね、自らのフロウだけで、一曲のなかにドラマを作り上げている。子音をあまり強く発音せずに繋ぐ歌唱を巧みに使い、濁音を用いずとも濁音を聴かせるようなドープな響きを生んでいるところもお見事である。
Number_iの最大の武器は、全員が低音域と高音域を同等のポテンシャルで歌えることだ。3人とも、ラップも歌も非常に上手い。アプローチは80年代後半から90年代の日本のHIPHOPを彷彿させるが、さまざまなアーティストと楽曲を相当聴き込んで研究し、己のなかに落とし込んだようにも思える。
彼らのラップには、一朝一夕では生まれない、鮮やかなマイクリレーさえグルーヴに変えるスキルと阿吽の呼吸がある。日本語で、なおかつローボイスのユニゾンでラップを迫力ある音圧で聴かせることができる。これこそがNumber_iの個性だと、あらためて思った。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-10-10