TRACK15、東京での初ワンマンライブをレポート 演奏と観客の合唱が響き合った満員のWWW X

 大阪発の4人組ロックバンド・TRACK15が東京での初ワンマンライブ『TRACK15 ONE MAN LIVE』を渋谷WWW Xにて開催した。

 ボーカル/ソングライターの蓮(Vo/Gt)がSNSにアップしていた弾き語り動画をドラムの前田夕日(Dr/Cho)が見つけてDMを送り、2020年10月結成。翌年11月に1st EP『Stella e.p.』、2024年3月に1stミニアルバム『bouquet』を発表するなど、着実にキャリアを重ねてきた。『JAPAN JAM 2024』などのフェスやイベントにも精力的に出演し、SNSでも話題を集めたことで知名度・観客動員数も著しく増加。東京で初めてのワンマンとなるWWW Xもソールドアウトし、繊細でリアルな感情を映し出すTRACK15の楽曲が確実に浸透していることを証明してみせた。

 開演30分前に会場に入ると、フロアはすでにオーディエンスでいっぱい。“ついにTRACK15のライブが観られる”という静かな熱気が感じられた。

 登場SEは、plentyの「東京」。蓮、寺田航起(Gt)、高橋凜(Ba/Cho)、前田がステージに上がるとどよめきにも似た歓声、そして拍手。〈ふいに見せた横顔が綺麗で/僕はまたちょっと赤くなる〉という歌い出しから始まる1曲目は、この夏リリースされた「青い夏」。「TRACK15、ワンマンライブはじめます!」(蓮)と声を上げ、瑞々しい演奏によって会場全体のテンションをグッと上げてみせた。さらに「ライブハウスへようこそ! 跳べる?」(蓮)という言葉から始まったポップチューン「シティーライト、今夜」、〈あなたに会いたい夜は/あたしだけのこのaikoを聴くわ〉からはじまる切ないラブソング「プラネタリウム」ではシンガロングが発生。冒頭から人気曲を続け、観客との距離を縮めてみせた。

「ライブ自体が1カ月ぶりで、ステージに出て行くのが怖かったんですけど、みんなの楽しみにしている顔を楽屋のモニターで見ていて、“みんなありきでバンドできてるな”と改めて思いました。楽しいときは笑って、感動したら泣いて。そんな1日にしたいと思っています」(蓮)

 そんな言葉を挟んで届けられたのは、「オレンジ」。〈僕は僕の歌で迎えに行くからそこに居て〉という歌詞をオーディエンス一人ひとりに手渡し、さらに強い一体感が生まれた。高揚感に溢れたバンドサウンドと観客の合唱が響き合う瞬間は、この日のライブの最初のハイライトだった。

 “1曲だけ撮影OK”の「私的幸福論」は、恋人に対するデリケートな感情を綴ったミディアムチューン。不安になって顔色を窺ってしまうこともあるし、過去の恋愛も気になるけど、やっぱり君が好き。共感度の高い題材をリリカルに描き出すこの曲には、蓮のソングライティングセンスがしっかりと反映されている。すべての言葉を明瞭に伝えながら、切ないメロディラインを描き出すボーカルも心に残った。

寺田航起
高橋凜
前田夕日

 ベースの高橋、ドラムの前田のトーク(“初めてTRACK15のライブに来た人?”という質問に大勢の人が手を挙げてました)の後は、「Billboard JAPAN Heatseekers Songs」でTOP10入りを果たした新曲「千年計画」(ドラマ『初めましてこんにちは、離婚してください』エンディング主題歌)。「歌ってみる?」(蓮)と語りかけると〈私、愛する人に出会えて/百満開の桜を迎えて〉のパートを観客が合唱。歌を介したコミュニケーションもまた、このバンドのライブの魅力だ。

 鋭利な手触りと切ない情感を併せ持った寺田のギターソロも印象的だった「ロンリーナイト」を挟んで演奏された「ブーケ」も、この日のライブの大きなポイントだった。蓮の弾き語りによる「思い出せば いいたいこと山ほどあるのに」という言葉から始まるアレンジは、音源とは異なるライブバージョン。別れを決めた二人の関係、後悔や諦めきれない気持ちを抱えながら、〈今でも君を想ってるよ〉と真っ直ぐに歌うこの曲は、TRACK15の真骨頂だろう。タイトな演奏で歌を際立たせるリズム隊、壮大なスケール感とリリカルな美しさを含んだギタープレイも素晴らしい。

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