アマピアノは日本でどのように波及している？　全国に拡がるパーティー『AMAPINIGHT』とSpotifyコラボの一夜を振り返る

　南アフリカから生まれたダンスミュージックAmapiano＝アマピアノを軸におき、毎回とてつもない盛り上がりをみせていると巷で噂のパーティー『AMAPINIGHT』とSpotifyのコラボレーションパーティー『AMAPINIGHT with Spotify』が10月13日にCircus Tokyoにて開催された。今や全世界で熱狂を生むアマピアノがどのように日本でも波及しているのか、今回はダンサーとして出演してきた筆者による現場レポートを交えながらお届けする。

大阪から日本全国に拡がる『AMAPINIGHT』のパーティー熱

　『AMAPINIGHT』のホストを務めるのは、ダンサー／モデル／ヨガインストラクター／コレオグラファーなど多くの顔を持ちながらカルチャーアイコンとして活躍する、SAKURA、AOI TAKASE、RINA HAGAIの3人。そして大阪のコレクティブクルーFULLHOUSEのSAMOとTAKENOKO、渋谷を中心に幅広く活動するYUUGOHらがレジデントDJを担当。2022年より大阪アメ村で始まった『AMAPINIGHT』は、東京、京都、名古屋、福岡、沖縄と日本各地でも開催されるビッグパーティーへと成長している。

　メインホストのSAKURAがSpotifyの招待を受けて、6月に南アフリカ最大の都市ヨハネスブルグで開催された『A Decade of Amapiano』に参加したことをきっかけに生まれた今回のコラボレーション。4日間にわたるツアーでより理解を深めたアマピアノカルチャーに関するプレイリストの作成や会場のデコレーション、オリジナルドリンクの提供を通じてイベントを盛り上げた。

　まず当日一番に驚いたのはフロアーに降り立ったときの熱量。「Boiler Room」のごとくオーディエンスが前のめりになってDJブースの周りを囲み、オープン間もない時間から踊る、踊る、踊る！　今年南アフリカで現地のシーンを目の当たりにしてきたSAKURAをはじめ、ホストの3人が率先して楽しむ姿をみせてくれることで、こちらの身体も自然と揺れる。さまざまなバックグラウンドを持つ彼女たちの影響も多いだろう、フロアーには国境を超えたオーディエンスが入り混じっていた。

　今回はパーカッショニストとしてLuckymugisとNiiteteの2人が参加。アマピアノ以前に隆盛した南アフリカのダンスミュージックGqom（ゴム）を中心に、長年東京でこのカルチャーを支えてきたTYO GQOMクルーが鳴らすビートに、ステージ上で太鼓の音が重なり合う。その刺激的な音楽に思わず居てもたっても居られなくなった私も、ステージ上でダンス。もちろんDJの選曲、太鼓の演奏、踊りに打ち合わせは一切なし。ここでしか得られない興奮を体感して、時刻1時過ぎにしてすでに汗だくだった。

アマピアノに欠かせないダンスカルチャー

　1980年代末〜ハウスミュージックをヒップホップと交えて独自解釈したKWAITO（クワイト）、テクノ要素を強くしたゴムなど南アフリカのダンスミュージックの歴史を経由して生まれたアマピアノは、ハウスの要素も色濃くある音楽ジャンルだ。メロディアスかつポップなアフロビーツが基本的に2〜3分の楽曲が多い中、アマピアノは6分超えの楽曲がベーシック。よりショート化が著しい現在の音楽シーンとは相性が悪いようにも思うが、それをキャッチーに魅せたのがダンスの存在だろう。楽曲中の一番盛り上がるビート（主にログドラムが特徴的に映える）の部分で決まった一つの動き、もしくは一連の振り付けをTikTokやInstagramで投稿したことで、アマピアノの魅力を可視化することに成功した。

　今年の代表曲に挙げられるのはTitoM & Yuppe「Tshwala Bam」。左右に足を踏みながら体を震わせるダンスはシンプルながらも難しく、今では世界中のダンサーが振り付けにも取り入れて（ミーガン・ジー・スタリオンと千葉雄喜の「Mamushi」ダンスの元ネタとも推測される）最大のビッグチューンとなった。

　また昨年の大ヒット曲、Tyler ICU & Tumelo.zaによる「Mnike」をガーナ出身のダンスアーティストCalvin Perbiが振り付けしたダンス動画も多く広まった。白目を剥きながら踊る特徴的なダンスと複雑なログドラムのビートを再現した肉体表現で、同曲のヒットにも一役買っている。

　この日の『AMAPINIGHT』では、テクノウルフの一員としても知られ長年のDJキャリアを持つDIYZが最新アマピアノのダンスチューンを投下しフロアー熱も最大級に。Kmat「MKK」に合わせて、この曲お決まりのダンスを大勢が同時に踊っている絵は圧巻で、感動的だった。もちろんこの日のダンサーであるDreamgirl、Umi、私も参加して腰回し。アマピアノのダンスは共有できると倍楽しい。