2024.10.18 18:00

UNFAIR RULE、『ひとりごと』で綴ったありのままの感情　バンドとしての新たな音楽的挑戦を語る

文・取材＝小林千絵、写真＝山川哲矢

『ひとりごと』はUNFAIR RULEの“レベルアップの始まり”

──6曲目の「消しゴム」は、歌詞もサウンドもいつものUNFAIR RULEとは雰囲気が違いますね。

山本：私の同い年は就活している人もいると思うんですが、そういう人たちが聴いてハッとしてくれたらいいなと思って書いたのもあるし、自分の周りにいる大人が、魔法がかかったように戦えるような人であってほしいなと思って書いた曲です。

──そういうテーマで曲を書こうと思ったきっかけは何かあったのでしょうか？

山本：免許合宿に行った時に超久しぶりに消しゴムを使ったら、めちゃくちゃ綺麗に消せたんですよ。小学生の時は黒くなったり、紙が破けたりしたのに、なんで綺麗に消せたんだろうと思ったときに、大人になって力の入れ方がわかったんだなと思って。でも私は、どっちかというとそんな綺麗に消せる術を知るより、がむしゃらにうわぁとやっていた自分のほうが好きだなと思った。そう思ったときに、“術を知ってしまうと面白くなくなってしまうことが多いな”と気付いて。自分にも言い聞かせるように、手紙のような気持ちで書きました。

──なるほど。

山本：ただ、綺麗に消せるようになった人……それは悲しまないように生きる術を覚えたとか、そういうことだと思うんです。それも良いことだと思う。たとえば何か問題が起きたときに、それにクビを突っ込まないでいたほうが楽なことってありますよね。クビを突っ込んでしまうと、しんどい思いをすることになるから。だから「悲しまないように自分を守る選択をするのもわかるよ」という歌です。“こうなっていけばいいな”というぼやきみたいな感じで書いたんですけど、結局自分に一番刺さる曲で。スタジオで練習していても泣きそうになります。

杉田：この曲のドラムに関しては、“マジでいらんことせんとこう”ということだけを考えました。難しかったのがコーラス。サビのメロディが暗めなので、普通にハモリを考えると、めっちゃ暗くなっちゃう。どうしようかと試行錯誤した結果、すごくいいものができたと思うので、コーラスもしっかり聴いてもらえたらうれしいです。

──ラストナンバーは「内緒」。この曲は譜割が独特ですよね。「曖昧」と反対で、空白がほとんどない。

山本：これ、歌っていてもしんどいんですよ。レコーディングも大変でした。

──ご自身で作ったのに（笑）。

山本：はい。「誰が作ったんだ」と思いながら（笑）。

──歌うのも大変なほどの曲に、どうしてなったのでしょうか？

山本：書いていたら、言いたいことが止まらなくなっちゃって。一呼吸もせんでいいくらい、入れたい歌詞が出てきました。この曲で書いているのは、「曖昧」と同じ人なんですけど、こっちのほうが正直な気持ちを綴っています。それでも結局「好き」とは言っていないんですけど、私のできる最大の愛の表現がこの曲です。その結果、私にしては爽やかな曲ができました。

杉田：爽やかだよね。

山本：アコギも初めて入れたし、ギターリフでもちょっと変わったことをしていたりして。とっても良い曲ができたなと思います。

杉田：僕も良い曲だなと思っています。早くライブで演奏したい！　できればそれこそ青空の下、野外フェスとかでやりたい曲ですね。

──さまざまな山本さんの感情とバンドの挑戦が詰まったアルバム『ひとりごと』ですが、どのような1作になったと思いますか？

山本：思い描いていた理想以上の作品ができたと感じています。さっきも言ったようにこのアルバムでは挑戦をしたかったけど、だからといって「メジャーに行って変わったな」と思われるのは嫌だった。「消しゴム」でも〈変わらないために変わっていく選択をしていて〉とあるんですが、それは自分たちに言い聞かせている部分もあって。メジャーにいくから新しいことをしようと思ったわけじゃないし、私たちは自分たちがやりたいことをやり続けて、それをいろんな人が好きになってくれたらいいなと思っているだけ。これからも自分たちのやりたいことを突き詰めていくだけです。そんなUNFAIR RULEの“レベルアップの始まり”がこのアルバムだと思うので、ぜひ聴いてもらえたら嬉しいです。

杉田：今までのUNFAIR RULEって、ライブハウスで爆音で鳴らすのが好きな“爆音小僧”だったんですけど、それだけじゃないところでも戦えるようになりたいと思うようになって。そのためのレベルアップだと思っています。今までのUNFAIR RULEを大事にしながら、他にも良いところを見せられるようになっていけたらと思っています。