小2の天才速弾きギタリスト そうちゃん、父が語る“好き”を伸ばす子育て術 音楽を通じた親子の絆

憧れのギタリスト ポール・ギルバートとの対面

ーーそうちゃんは家で弾いているときとライブでお客さんを前に弾くときで、楽しさに違いはありますか?

そうちゃん:ある! (ライブハウスのほうが)激しいよ。家でやるときは50ぐらいのパワーしか出ないけど、人前でやると1000になるんだよ。

toru:リハーサルとかはめちゃくちゃテンションが低いんですよ(笑)。ライブを始めたての頃は「今日は大丈夫かな?」って心配になるぐらいだったんですけど、いざ本番になると急に暴れ始めて。その落差にちょっと引いちゃうくらいでしたよ(笑)。

そうちゃん:リハでパワーを貯めてるの。

ーーもはやプロ気質ですね(笑)。そうちゃんは今ギターを弾いていて、どういうところがいちばん楽しかったり魅力を感じたりしますか?

そうちゃん:ギターはね、弾けるようになったら嬉しいし、ライブで弾いてるといちばん楽しい。

toru:なんでライブが楽しいの?

そうちゃん:やっぱり人がいっぱいいたほうがいい。人が10人ぐらいしかいないと、そうちゃんのパワーは1000なの。でも20人くらい来るとパワーは1500になるし、100人来ると1万になる。だから、いつも100人ぐらい呼べるようになりたいの。

ーー頼もしいですね。先ほど、toruさんがメタルを聴くきっかけをそうちゃんからもらったとおっしゃっていましたが、日常生活のなかで音楽を通じてどのようにコミュニケーションを取っていますか?

toru:一緒にCDを買いに行ったりすることが多いですね。今ってあまりCDを買うような時代じゃないじゃないですか。でも、息子にとっては遊戯王カードみたいな感覚なのか、ショップでジャケットを見て「これが聴きたい」とか「これがカッコいい」とか一緒に会話するのが楽しいんですよね。あとは、お互いにギターを手にしてイントロクイズをしたり。

そうちゃん&toru

ーー父親としてどういう形で子供とコミュニケーションを取るかは、時期によってもその都度変わっていくとは思いますが、幼少期から音楽というツールがひとつあるのは大きいですよね。

toru:そうですね。それこそ音楽を語る上で意見が違ったりすることもあるんですけど、それすらも楽しくて。音楽を通じて子供と接する時間が長いぶん、「最近好きな子ができた」とかそういう世間話を合間にすることも増えていますし、一緒に風呂に入っているときにはギターの話以外にも「算数が全然できない」なんて話もするので、音楽を軸にいろんなコミュニケーションが取れているとは思います。

ーーそうちゃんぐらいの年齢だと、学校の先生以外で大人と触れ合う機会って少ないと思うんです。でも、ギターの先生だったりライブハウスだったり、ギターを通していろんな人たちと出会うきっかけも作れていますよね。

toru:実は意外と人見知りなので、初対面の人とは全然喋れなかったりするんですよ(笑)。先生のライブを観に行くとお客さんから「そうちゃんでしょ?」って話しかけられることも少なくないんですけど、すごくテンションが低くて。でも、ライブが終わったあとに先生が隣にいると、楽しそうにお話しているんですよね。

ーーそれこそ、昨年MR.BIGの来日時にポール・ギルバートと対面することができたりと、ギターをきっかけに憧れのアーティストと会う機会も得られています。実際にポールと対面していかがでしたか?

そうちゃん:すっごい嬉しかった! あと、大きかった。

toru:この子、憧れのポール・ギルバートに会ったのに全然緊張しなくてですね、普通に握手してピックをもらってましたよ。逆に僕が緊張しちゃって、サイン色紙からビニールを剥がすときに手が震えましたから(笑)。ボーカルのエリック・マーティンとも一緒に会えて、ポールと握手しているときにエリックが「Rock 'n' Roll! Rock 'n' Roll!」って言いながら飛び跳ねて、手を振ってくれたりしました。

ーーポールからはどんな言葉をかけてもらいましたか?

そうちゃん:(サイン色紙に)「ずっとギターを続けてね。頑張れ!」って書いてあったよ。

ーーそれは嬉しいですね。今年はそうちゃんがテレビ番組などで紹介されたり、このインタビューのようにメディアでピックアップされる機会が増えています。そうちゃん自身は、こうやってお話を聞かれることに対してどう思っていますか?

そうちゃん:嬉しい。

toru:なんで嬉しいの?

そうちゃん:みんなが聴いてくれるし、(メディアに出ることで)ギターの先生が喜んでくれるから。

toru:周りにいる、たとえばメタルとかやっている僕よりも年上の人たちが喜んでくれたりするのも、嬉しいみたいですね。

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ーー現在のような状況を、toruさん自身はどう捉えていますか?

toru:本人が「ギタリストを目指している」って言ったときから「どんどん表に出ていったほうがいいよ」と言っていたので、そんなトントン拍子というわけでもないですけど、ちょっとでもたくさんの人の目に留まってもらえるのは素直に嬉しいですよね。ただ、こうやって質問されてもまだ全然喋れなかったりするんですけど、できるだけ外に出していろんな人と関わらせてあげたいなっていう想いがあります。あとは、今のバンドメンバーに出会えたのもSNSがきっかけだったので、今後も積極的に発信していきたいなとは思っていますね。

ーーそういうそうちゃんがやりたいことを、今後もどんどんサポートしていくわけですね。子育ての観点において、ギターや音楽を通してそうちゃんに教えてあげられたこと、これから教えてあげたいこと、今考えていることってありますか?

toru:うちの息子は結構負けず嫌いなんで、何度練習しても弾けない曲があると「わかんない、わかんない!」って泣くこともあるんですけど、3〜4日すると弾けるようになっているんですよね。とりあえず今頑張ればなんとかなる、乗り越えられるみたいなことはギターだけじゃなくてほかのことにも当てはまるので、とにかく今やりたいことを続けて、壁があっても頑張って乗り越えていけるような人間になってほしいと思っています。本人は練習はあまり好きじゃないみたいで、逆に僕は練習の鬼だったんですよ。だけど、どれだけ努力してもプロのギタリストになれない人のほうが多いんだから、「努力はしないとダメだよ」とは口を酸っぱくして言い続けています。

ーーでは、そうちゃんが好きになったものが音楽やギターだったからこそ、子育ての上でプラスになったことって日常のなかで何かありますか?

toru:うちは家族全員音楽好きなので、一緒に歌ったり、ある曲についてみんなで話し合ったり、「この曲良かったから聴いてみて」って息子からオススメされたりするところかな。あと、学校の保護者会に行くとよく耳にするんですけど、よその家ではタブレットを使ってYouTubeばかり観ている子が多いみたいで。よその家庭ではそれが悩みだそうなんですけど、うちの子もYouTubeは好きだけどギターも弾くからずっと観ているということはないので、そういう意味では多少良かったのかな。

ーー携帯やタブレット以外に夢中になれるものが見つけられたのは、すごく大きいですよね。そうちゃんのその「好き」って気持ちを大切にしてあげるために、toruさんが常日頃から意識していることって何かありますか?

toru:息子が憧れている人が今のギターの先生でもあるので、会わせてあげる機会を多く作ってあげることとか、一緒に楽しくギターを弾いたり練習をできるだけ楽しくやれるようにすることは意識しているのかな。ひとりで練習するのがあまり楽しくないみたいなんで、できるだけ時間を合わせて一緒にギターを弾くようにしています。

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ーーちなみに、そうちゃんは学校の友達と音楽の話はしますか?

そうちゃん:友達ともするし、担任の先生ともするよ。先生といちばん音楽の話をする。だって昔、Deep PurpleとかDioとかいっぱいギターで弾いてたって言ってたし。

toru:学校でも音楽係で、クラスでSlayerを流してきたって話は聞いたことがあります(笑)。

そうちゃん:Slayerがかかると男子は机の上に乗って暴れるし、女子はメロスピ(メロディクスピードメタル)が好きって言ってた。あと、先生のバンド(兀突骨)の曲はみんな好きだって。

toru:今は学校でタブレットを使って授業をしていて。音楽係はYouTubeを使って好きな曲を紹介する時間があるそうなんですよ。

ーーなるほど。お父さんと音楽の話をするのは楽しいですか? たとえば、もっとメタルに詳しくなってほしかったりしますか?

そうちゃん:うん。パパがお手本にならないとダメなんだよ?

toru:そうか(笑)。

ーーでは、toruさんがそうちゃんから何か教わるようなこととかあったりしますか?

toru:以前、電車のなかでおじさん同士がぶつかったぶつかってないで喧嘩をしているところに出くわしたことがあって。そういうときって、周りがシーンと静まり返るじゃないですか。そうしたら息子がいきなりQUEENの「We Will Rock You」を歌い出して、その瞬間周りの人たちが吹き出してしまって、おじさんたちも喧嘩する気が失せてしまったんですよ。自分も若い頃は「音楽で世界を変えたい」とかそんな夢を言ってたんですけど、こいつ真っ先に世界を変えてるじゃないかと(笑)。自分ができなかったことを目の前でポンポンやられると、こちらも刺激になりますよね。

ーー最後に、そうちゃんの将来の夢を聞かせてください。

そうちゃん:ギタリスト。

ーーどんなギタリストになりたい?

そうちゃん:とりあえず速弾きが速ければ速いほどいい。

ーー将来、ここでライブをしてみたいっていう場所はありますか?

そうちゃん:人がいっぱいいるところ。MR.BIGがやってたところ(日本武道館)でやりたい!

ーーあんな大きな場所に立ったら、緊張しない?

そうちゃん:緊張しない。

ーー今までのライブもそんなに緊張しなかった?

そうちゃん:1回目は緊張したんだけど、2回目からは慣れちゃって、いけるようになった。

toru:本人は緊張してないって言うんですけど、多少緊張してる感じはあるんですよね。ライブ前になると急にトイレが近くなったりしますし(笑)。あと、本番が来るとなぜかお腹が痛くなることもあって。あれも緊張してるんだよね。

そうちゃん:絶対してない!

ーー(笑)。では、これから弾けるようになりたい曲、弾いてみたい曲はありますか?

そうちゃん:Impellitteriの「17th Century Chicken Pickin'」はもう弾けるようになったから、次はANGRAの「Spread Your Fire」。あと、たまの曲も!

toru:あとは、オリジナル曲も作っていこうよみたいなことを先生にも言われてるよね。

そうちゃん:うん。いろいろやりたい!

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