NMB48 塩月希依音&泉綾乃&剱持嘉一&Carlos K.座談会 『天使のユートピア』から『大阪万博』見据えるグループの現在

 NMB48の劇場公演CD『天使のユートピア』が8月14日にリリースされた。

NMB48「天使のユートピア」公演ダイジェスト映像

 TeamN 3rd Stage『ここにだって天使はいる』公演以来、NMB48にとって約10年半ぶりの新公演となった『天使のユートピア』公演。全15曲がオリジナル曲であることはもちろん、「天使のユートピア」のアンサーソングにあたる表題曲「ここにだって天使はいる」をはじめ、NMB48初期を代表する名曲「友達」をオマージュした「HOME〜ずっと友達〜」、卒業生の山本彩と“ぶっ恋呂百花”こと木下百花が制作に携わった「僕らはまだ」「チュってギュッてグッと♡」、1970年開催の『大阪万博』のテーマソングである三波春夫の「世界の国からこんにちは」をサンプリングした「繋ぎ歌~世界の国からこんにちは~」など、NMB48のこれまでとこれからを繋いだバラエティ豊かな、1枚のアルバムとしても聴き応えのある作品となっている。

 今回、リアルサウンドでは、『天使のユートピア』公演でセンターを務める塩月希依音と公演のキャプテンを担う泉綾乃に加え、NMB48のプロジェクトプロデューサーであり公演プロデュースを担当した剱持嘉一、過去に「Don’t look back!」や「Must be now」といったNMB48の作品を手がけ、本公演のサウンドプロデューサーを務めたCarlos K.による座談会を行った。公演初日からおよそ4カ月が経過しての実感、メンバーも知らない各楽曲の制作秘話を4名に語ってもらった。さらに、剱持からはデビュー14周年の記念日でもある10月9日に通算30枚目シングル『がんばらぬわい』のリリース、さらに2025年にスペシャルサポーターを務める『EXPO 2025 大阪・関西万博』の開催を控える今のグループの現在地も語られた。

 なお、インタビューのラストには、剱持がさらなる新公演について言及しているが、座談会後に行われた写真撮影時にも新公演のアイデアについて冗談混じりにスタッフ陣に提案していた(渡辺彰浩/取材日:9月3日)。

『ここ天』から10年、『天使のユートピア』ができるまで

塩月希依音、泉綾乃

ーー『天使のユートピア』公演の初日が5月だったので、そこから4カ月が経つわけですが、まずお2人にとってはどのような公演になっていますか?

塩月希依音(以下、塩月):『ここにだって天使はいる』公演ができた時はNMB48にはいなかったので、私にとっては初めてのオリジナル公演なんです。何をするにも新鮮で。歌も衣装もパフォーマンスも演出も、全てが自分たちのために作られたものだと思うと、より一層思い入れがあるというか。自分たちのものだという実感も最近は湧いてきていて、やっていても楽しさだけじゃなく、やりがいのある公演だと感じています。

泉綾乃(以下、泉):約10年半ぶりのオリジナル公演にまず携わらせていただいていることが何よりも嬉しいです。この公演を、『ここにだって天使はいる』公演よりも良いと言ってもらえるようにしていきたいという思いもありますし、この公演をきっかけにNMB48が変わっていくことができればいいなと思っています。

ーーこの公演で塩月さんはセンターを務めています。

塩月:オリジナル公演のセンターに立つということで、背中でみんなを引っ張るパフォーマンスとか、その雰囲気を出さないといけないというのは感じています。『天使のユートピア』公演は今のNMB48の選抜メンバーでの唯一の劇場公演でもあるので、NMB48の全てを自分の背中が語っているんだという気持ちで毎回ステージに立っていますね。

ーーシングルのセンターとはまた意味合いは違いますか?

塩月:自分の中でシングルのセンターはハッピーな気持ち、私自身も楽しみたいという気持ちが強いんです。NMB48の未来をみなさんにお届けするような感覚。『天使のユートピア』公演は、よりパフォーマンス重視で、劇場公演として続いていくものですし、自分たちの今の実力を見てもらう場所でもあったりするので、ハッピーで楽しいという部分もあるんですけど、メラメラした感じ、やってやるぜという気持ちを『天使のユートピア』公演の方で出しています。

ーー泉さんはキャプテンを務めています。

泉:今でも正直キャプテンをやっていて、しっかりとできているのかが分からなくて。こうしてオリジナル公演でキャプテンをやらせていただけるのは嬉しいことなんですけど、不安もありつつ、葛藤しながらやっています。

ーー以前の取材で塩月さんが、泉さんがドラマ『アイドル失格』(BS松竹東急)内のユニット・テトラのリーダーを経て、「NMB48として場をまとめていたりと本当にリーダーっぽい姿を見せるようになってきた」と話していましたよね。

塩月:もうまさにその通りで。『天使のユートピア』公演自体も、キャプテンをやりながら、どんどんあーのん(泉綾乃)の良さが出てきています。自分では自信ないとか、キャプテンできてるのか分からないということをよく言ってるんですけど、メンバーからすると、あーのんが公演のために、メンバーのためにたくさん考えて行動をしてくれています。もっと自信持ったらいいのにと思うキャプテンぶりなので、あーのんがキャプテンをやってくれていてよかったなと思います。

剱持嘉一

ーー剱持さんは、塩月さんと泉さんをどのように見ていますか?

剱持嘉一(以下、剱持):センターもキャプテンもハマリ役だったと思っています。確かにセンターはプロデュースサイドが決めたかもしれないですけど、キャプテンの泉は現場の空気感的に決まったと聞いてるけど?

塩月:キャプテンのあーのんと、副キャプテンの瓶野神音ちゃんを選んだのは、NMB48キャプテンの小嶋花梨さんなんです。リハーサルを見ながら、この2人なら公演をまとめてくれるんじゃないかということで選んでくださって。

ーー剱持さんは、この4カ月でのお2人の成長というのは感じますか?

剱持:塩月が言っていた、自分たちのためのポジション、自分たちのために作られた歌というところを自分なりに解釈して、自分の役割、歌い方、踊り方、表現の仕方を、2人とも、というかメンバー全員なんでしょうけど、自発的にやっているというのは観ていて思います。

泉:今回の公演曲は、アーティスティックな曲調が多いと思っていて。曲によってはアーティスト寄りの見せ方がこの公演には合うというのを感じているので、新しい見せ方を今見つけながらやっています。

剱持:アイドル曲じゃないんですよ。1公演15曲の中で感情の浮き沈みを持ってきて、1枚のアルバム、一つの公演を作ることを目指したんです。アイドルソングを集めるのではなくて、人の琴線に触れるようなストーリーを考えて曲を作っていったので、それを自分たちなりに解釈していくのは難しかったと思います。

Carlos K.

ーー「曲調がアーティスティック」という話題がありましたが、これに対してCarlosさんはいかがですか?

Carlos K.(以下、Carlos):確かに楽曲の作り方もアーティスティックな感じでした。最初の会議の時点からコンセプトとかのアイデアを話し合って、僕自身も含めですけど作家さんにお願いして1から全部を作り上げていったので。

ーーその最初にあった核となるコンセプトというのはなんだったんですか?

剱持:最初は「大阪ユートピア」だったよね。

Carlos:そうですね。『大阪・関西万博』(以下、『万博』)もありますし。

剱持:大阪を一つの理想郷=ユートピアとして、そこに行きつくーー『ここ天』から10年半の間にメンバーも全員変わって、この間に何が起きて、どういった気持ちで未来へ進んでいくのか。大阪を理想郷としてやりたいということを話しました。

Carlos:みんながそれぞれ世界に向かって飛び出していって、そこでいろんなものを獲得して、また理想郷に戻ってくるというストーリーでした。

剱持:そこからちょっと変わっちゃったね(笑)。

Carlos:『万博』とかもあったから、海外の人たちをNMB48のメンバーが連れて戻ってくるというような。

剱持:最初は公演名も『大阪ユートピア』だったんです。2回目の打ち合わせの時点でリファレンスに対してCarlosさんが1曲目はこういう曲、2曲目はこういう曲……というのを全部持ってきてくれて。

Carlos:2、3回目の打ち合わせの時には、ラフのデモを持っていっていましたね。その中で話し合っていたのが、例えば『ここ天』に対するアンサーソングの「天使のユートピア」だったり、「OUR STORY」も最初は幕開けの曲ということでタイトルが「幕開けOUR STORY」だったんです。

塩月:私たちが最初に歌詞を見せていただいた時のタイトルはそうでした。

Carlos:幕が開けてここから始まりますみたいな感じで。剱持さんからは、青春感を求められていたから、最初の4曲ぐらいはその感じがあります。完全に作り直した曲もあったんですけど、最初の「OUR STORY」と2曲目の「青い春」は、心の中の葛藤を描いた作品になっていて、青春感溢れる中での大人への反発、社会を駆け抜けていくんだという強い意志を、疾走感溢れるバンドサウンドで飛ばしていく。「愛デンティティ」「ROUTE 48」までの最初の4曲はアップテンポなんですけど、特に頭の2曲は単純に明るい青春ソングというよりかは、エモーショナルな楽曲というのが、この公演の特徴かなと思っています。

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