リアルサウンド連載「From Editors」第73回：解散後にファンになってしまった時のライフハック　GARNET CROWとの出会い

　「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

　第73回は、「抜刀」という言葉が漢字2文字で一番カッコいいことに気づいた厨二病が治らない伊藤が担当します。

運命の出会いは突然に

　2021年6月30日（水）、最寄りのスーパーから自宅へと向かう帰り道でGARNET CROWのファンになってしまったんです。

　なぜ日付まで覚えているのかというと、その日はGARNET CROWのサブスク解禁日だったからです。

　もちろん、以前から存在は知っていました。おそらく30歳前後の方には、アニメ『名探偵コナン』（読売テレビ／日本テレビ系）の曲のバンドとして有名でしょう。私も小学生の頃は夢中で観ていましたし、コナン君の真似をして、ポケットに両手を突っ込んで歩く時期があったくらいには大好きだったので、当然何曲かは知っていました。

　しかし、なにせ小学生なのでちゃんと“音楽”として意識して聴いてはおらず、その後も、この“運命の日”を迎えるまで特別気になるような存在ではありませんでした。サブスク解禁の情報は耳にしていたので、懐かしさから何の気なしに再生したのがデビュー曲「Mysterious Eyes」。

　え、良すぎるだろ。圧倒的な個性を持つ歌声、繊細さと力強さを両立する絶妙なアレンジ、“切なさ”という一言では片付けられない味わい深い歌詞。そして2番Bメロで1番にはなかったメロディが突如現れる〈true heart for mystery eyes〉！

　いやいや待て。1曲で判断するのはさすがに早い。まだ知っている曲はあるぞ。これもコナンの曲「夏の幻」だ！

　なんですか、この転調は！　小学生の時はわからなかったけど、今なら転調もわかりますよ！　こんなに良かったのか、GARNET CROW……。ということで、そこから他の知っている曲を聴いたり、一旦ベストアルバムを聴いてみたりと過ごすうちに完全にファンになってしまいました。

　しかし、すぐに絶望が襲ってくるんです。「そうか、俺はGARNET CROWのライブを観ることができないんだ」と。

　そうなんです。GARNET CROWは2013年に解散しているのです。音楽活動を続けているメンバーもいますが、唯一無二の歌声を持つボーカルの中村由利さんは、解散以降、表立った活動をしていません。

　さぁどうしようかと考えました。なんとかして、この状況を覆すことができないかと。しばらく考えて、あることを思いつきました。ーーそうだ、自分を“ライブに行った”と錯覚させようと。

　方法はこうです。まず自分を「GARNET CROWデビュー時からのファン」だと思い込ませるために、1stミニアルバム『first kaleidscope ～君の家に着くまでずっと走ってゆく～』を聴きます。しばらく聴いて、しっかりと自分の体に馴染んでいくまで絶対に次のアルバムを聴いてはいけません。なぜなら、まだ次のアルバムなんて“発売されていない”のだから。お前はデビューの時点でGARNET CROWに出会ったのだと、自分を洗脳していくのです。

　聴き込んだら、いよいよライブに行きましょう。ありがたいことに、GARNET CROWはアルバムごとのライブ映像がDVDやBlu-rayとして発売されています。そこで、ライブに行く日（ライブ映像を観る日）を決めてください。なんとなく時間があるタイミングに観るのではなく、事前に1カ月後や2カ月後など具体的な日付を設定するのです。ライブの日まで指折り数えて学校や仕事を頑張る“あの感覚”を自ら作り出しましょう。

　そしてライブ当日。そのライブ映像が収録された会場に向かうことを想定して、早起きしたっていいんです。実際にライブが開始された時間に合わせて、再生ボタンを押してもいいでしょう。本来会場には持ち込めませんが、自宅の特権でお酒なんか飲んじゃってもいいじゃないですか。存分に楽しみましょう。

　十分にアルバムを堪能し、ライブに行った段階で初めて次のアルバムを聴くことが認められます。また新たな“ライブに行く日”を設定し、新アルバムを楽しんでください。

　なかなか良いライフハックだと思っているのですが、いかがでしょうか。こんなことをしていたら、サブスク解禁から約3年ほど経っていますが、まだ5thアルバム『THE TWILIGHT VALLEY』までしか聴けていません。あと5枚もオリジナルアルバムが残っています。なんて楽しみなんでしょう。

　でもやっぱり生でライブを観たいので、なんとか再結成をお願いできませんでしょうか？