Doubleから宇多田ヒカルまで、海外で再発見され続けるJ-R&B 現行シーンに溶け合う豊かな音楽性
さて、そういった空気は、もちろん国内の現行シーンとも共振している。これまでも『WOOFIN'girl』周りのスタイリングをいち早く取り入れていたXGに加え、Crystal Kayの代表曲「恋におちたら」を☆Taku Takahashi (m-flo)と空音を迎えてカバーした鈴木愛理、9月6日に「THE FIRST TAKE」に出演し「SOULS」を披露したbirdなど、“あの頃”のムードを現代に甦らせていく動きが盛んだ。それに呼応するように、若い世代を中心としたR&B/SOUL/POPのコミュニティも活況を呈しており、このシーン全体がブレイク一歩手前のような熱気に満ちている。
Spotifyプレイリスト「Soul Music Japan」などでキュレーションされているその潮流は、STYRISMやorigami PRODUCTIONS、HIP LAND MUSIC 、AOTLといったレーベル/プロダクション、Soulflexやw.a.u、Re.といったコレクティブ、Spincoasterといったメディアが相互に影響を与え合いながら徐々に勢いを増している。そこには2000’sを含む様々な時代のJ-R&Bのルーツが垣間見え、豊かな歴史の循環を感じざるを得ない。今年だけでもreina『A Million More』、HALLEY『From Dusk Till Dawn』、Ovall『Still Water』、showmore『liquid city』、Emerald『Neo Oriented』といった佳作が多く生まれているのが、その証拠。中でも、先日リリースされたさらさ『Golden Child』は、昨今の2000’s J-R&Bの再解釈という点においては突出したビビッドな感性に満ちていた。ここから、大きくトレンドの舵が切られる予兆すら感じてしまう。
さらに、そういった歴史的なコンテクストを意識せずとも、よりナチュラルに2000’s J-R&Bを消化しているような動きも生まれつつある。にしなや十明、Sala、Furui Riho、7co、Sincere、MoMoといった世代は、ルーツの1つにJ-R&Bが垣間見えるものの、もう少し自然で無邪気なタッチによってその解釈を推し進めているように聴こえるのだ。これだけ豊富なタレントが揃っているのが現在のR&B/SOUL/POPシーンであり、層の厚さと音楽性の多彩さは特筆に値するだろう。なお、今回は2000’s J-R&Bの音楽性が強い文脈を中心に述べてきたが、USのR&Bとリンクしている面々であればVivaOlaやaimi、Nao Yoshiokaらがいるし、さらに最近はTokyo GalやLil’Leise But Gold、yura、Starceed、MEZZ、妖艶金魚といったアーティストによってもう少しラップ寄りのベクトルからJ-R&Bを解釈するような動きも盛んになっており、ますます目が離せなくなっている。海外からの視点と国内で隆盛している動き、それらが複雑に絡み合いながら、J-R&Bは今大きな変化の時を迎えている。
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