King & Prince、サブスク解禁でバイラルチャートイン 全く異なる2曲を自分のものにする実力

Viral Chart Focus

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの6月5日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:King & Prince「halfmoon」
2位:KOMOREBI「Giri Giri」
3位:JO1「Love seeker」
4位:King & Prince「moooove!!」
5位:Ghostface Killah & Kanye West「No Face」
6位:初星学園, Giga,花海咲季「Fighting My Way」
7位:ロクデナシ宇宙「High School Monster」
8位:SEO EVE「Malatanghulu」
9位:初星学園,美波,月村手毬「Luna say maybe」
10位:サツキ「メズマライザー (feat. 初音ミク&重音テト)」

 今週は、5月23日にデビュー6周年を迎えたKing & Princeについて取り上げる。同日、一部の楽曲が音楽配信サブスクリプションサービスで解禁された。解禁されたのはベスト盤『Mr.5』(2023年発売)収録曲を含む合計63曲。5月20日より先行配信されたダブルAサイドとなるニューシングル『halfmoon / moooove!!』が、バイラルチャート上位にランクインしてきた。6月3日付のデイリーバイラルチャートで1位に「halfmoon」、3位に「moooove!!」が初登場して以降、2曲とも5位圏内をキープしている。加えて、ベスト盤収録のデビューシングル曲「シンデレラガール」なども、TikTokやInstagramのリール動画のおすすめ曲として急上昇している。ファンだけでなく、ただSNSを見ているだけでも、King & Princeの楽曲がサブスク解禁されたのがわかるほどだ。これらの楽曲をとりまくアクションは、このグループの認知度の高さ、そしてティアラ(King & Princeファンの呼称)との関係性を表わしているように思う。ロマンチックなバラードの「halfmoon」、ヒップホップ色の強い「moooove!!」と、まったく異なる曲調ながら、2曲とも上位をキープしているのは、ティアラがKing & Princeというグループの存在をプッシュしているのと同時に、永瀬廉と髙橋海人が、自分達の個性をしっかり意識し、きちんとKing & Princeさしさ(自分達らしさ)に繋がる表現をしていることの証拠だろう。

 シングル曲についてそれぞれ触れていこう。

King & Prince - halfmoon (15th Single) Music Video

 どうしようもできない苦しくも切ない恋愛感情を綴ったバラード「halfmoon」は小林武史が全面プロデュース。詞・曲・編曲を小林が手掛けている。小林はこれまで数々のヒット曲を世に送り出している、日本屈指のプロデューサーだ。彼が作るメロディラインは上品で優美。そしてエバーグリーン。ボーカリストを活かす緻密なサウンド構築美を築きながらも、ポップスのど真ん中をいくバランス感には“ポップス”に対する美学すら感じる。ボーカリストを際立たせ、その魅力を引き出すのも非常にうまい。シンプルな譜割りと抒情的なメロディを永瀬と髙橋は、ひとことずつ、丁寧に歌い紡いでいく。2人とも、母音の終わりまで意識した丁寧な歌い方だ。また両者の声質に、共通項とまったく違った一面が同居しているのが歌い紡ぐバラードだからこそよくわかる。声質は、2人とも中高音の通る甘さをもった声。そこを一定してクリアに響かせるのが永瀬、喉を少し鳴らすように低音も一緒に響かせるのが髙橋だ。音域や歌に対するアプローチは似ていると思うが、一聴しただけで、ボーカルが切り替わったのがわかるのも特筆すべき点だろう。

 この共通項と違いの両方で聴かせるのが、サビのユニゾンである。母音の抜き方など同じアプローチを使い、お互いに寄り添いながらも、混ざり合うことのない歌声は、今のKing & Princeの大きな武器と言える。そんなユニゾンの中でも他と違うのが〈あなたに届くといいな〉というワンフレーズ。ここでは混ざり合う綺麗なユニゾンを聴かせている。ユニゾンだけでも多彩なアプローチがある1曲だ。

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