BREIMEN×HALLEY、セッション出身バンド対談 国内に広がるシーンを形成したプレイヤー同士のつながり

Suchmosらが国内に築いた土壌 セッションから派生したバンドのシーン

――King GnuやBREIMENのように、セッションシーンからポップミュージックへ躍り出た人たちがここ数年でグッと増えた気がします。それってどんな背景があるんでしょうね。

いけだ:確かに。セッションをやっていたらスタジオミュージシャンになるのが一般的だったと思う。バンドはバンドで育っていくというか。

高木:おそらくもっと上の世代は、そもそもファンクのセッションがなかったと思うんですよ。俺、研究したいと思っているのが、「ファンクセッションを日本でいちばん最初にやったのは誰なのか?」ということで。

西山:めっちゃ気になりますねそれ。

高木:ジャズセッションは脈々と続けられているじゃないですか。ジャズのセッションをやっていたような人たちは、大抵ジャズミュージシャンになる。もとを辿れば渡辺貞夫さんも渡辺香津美さんもそう。で、いつどこで誰が始めたのか分からない、ジャズファンクやR&B……そういうセッションがちょっと盛り上がってきて。俺が認知できるのって、師匠の代からちょい上くらいまでなんだよな。だんだん思い出してきたけど、俺が認知している中では元SOIL&"PIMP"SESSIONSの元晴さんや、俺の師匠である後藤克臣さんや日野JINO賢二さん、さかいゆうさんとかもかな?

いけだ:バークリー(音楽大学)帰りの人たちが「日本でもやってみよう」みたいな流れもあったと思う。

高木:そういう、渡米してた辺りの人たちがファンクセッションの「走り」だったと俺は思うんだよな。ただ、その世代はそもそもまだそういうシーンが発展途上だったから、そんなに母数もいなくて。バンドを組めるメンツがそこまで揃っていなかっただろうし、「バンドで食っていこう」みたいなムードがおそらくなくて。で、俺らとかはその反動というか、「先輩と同じ道は歩みたくない」っていう気持ちが少なからずあるじゃないですか。しかも、同じようなことをやっている面々の母数も増えて、ちょっとバンドが流行った気がするんですよ。

テヒョン:セッション曲を辿っていくと、結構ソロアーティスト志向の強い曲が多い気がする。だから「バンドを組もう」という発想に直結しなかったんじゃないかなと。おそらく先輩方の時代は、ミュージシャンでセッションをやっているならスタジオミュージシャン、というのが進路としては考えやすいというか。それが、少しずつセッションされる音楽が変わっていくうちに、バンドという新しい単位が身近になってきたタイミングがどこかであったんでしょうね。

高木:海外でもそうじゃん。たとえばサンダーキャットみたいな人って今までいなかった。めちゃくちゃプレイヤーで、誰かのサポートもできるけど表舞台にも立てるという。あとディアンジェロ周辺が音楽をやっている人たちのリファレンスというか指標になっているのも大きいのかなと。ピノ・パラディーノとかクリス・デイヴとか。 いろんなサポートをやっていたクリス・デイヴがソロデビューして「Chris Dave And The Drumhedz」を始めた、みたいな(笑)。結局自分たちも、好きでセッションをやっているような人たちが現在どういうことをしているのかには、何かしら影響を受けている気がしますね。

西山:それと僕らの代からすると、まずSuchmosがいたじゃないですか。その後King Gnuが出てきて、BREIMENが続いて……。

高木:いやいや、まだ俺たちが今そこに並べられるのはちょっと怖いね(笑)。

西山:でも僕にはそう見えています。そうやって国内の土台ができていったと。

高木:確かにSuchmosは外せないね。俺らが無礼メン(旧体制)を始めたばかりの頃って、まだあそこまでの存在にはなっていなくて。でも「STAY TUNE」であれよあれよという間に……っていう。Suchmosと、あとSANABAGUN.は、日本の今のシーンの土壌を作ってくれたバンドだよね。

BREIMENとHALLEY、セッションから学んだこと

――セッションシーンにいたことは、今の自分たちの音楽性にどう活かされていますか?

テヒョン:いちばん感じるのは、ライブを重ねるごとにどんどん変わっていく、同じライブをしないという姿勢ですかね。僕自身、それまではカバーしたり、教会育ちということもあってそこでゴスペルを歌ってきたりした素地はあるけど、HALLEYとして活動していく中で、決まったことをあまりしないようになったのは、セッションから学んだこと。時間とともに自分の像というか、アウトプットするものが違ってくるのもそうかなと。 曲作りもそうですね。セッションみたいに、どんどんアイデアを出しながら繋げていくという、その根本の部分も残っています。いくらDAWで作っていても、実際に演奏してみてどんどん変わっていくところもあるし、それがなかったらHALLEYの音楽にはなっていない。「偶発性」が担保される環境で音楽が生まれているという意味においては、セッションとビートミュージックのフォーマットの間を行き来しながら作っている感覚があります。

西山:セッションをやるためにはまずスタンダード曲を聴かなきゃいけないので、そもそもナレオに入った時点でソウル、ジャズ、ファンクを強制インプットされるんですよ(笑)。それで組んでいるバンドなので、HALLEYをやる土台にセッションがあるのは間違いないですね。

テヒョン:僕たちの「Set Free」という楽曲は、ライブで演奏するときにモノネオンの「Hot Cheetos」をそのまま組み込んでいて(笑)。そういうセッション小僧っぽさはメンバー全員にありますね。先日リリースしたアルバムのタイトル曲「From Dusk Till Dawn」には、本当は「Montara」(ボビー・ハッチャーソン)のフレーズを入れたかったんですよ。でも入れると権利問題が発生するので……(笑)。

[Music Video] HALLEY - Sugary
HALLEY & Friends - Set Free (Live Movie, 2023.11.26)

高木:セッションもいわばサンプリング文化だからね。BREIMENはどうだろう? そもそもセッションが血肉になっているのは間違いないけど、さっき言ってた「偶発性」というのがいちばんわかりやすいかも。ライブとか俺の中ではめちゃくちゃセッションなんですよ。尺も変えるしアレンジも変えるので。既存の曲をぶっ込むこともある。この間は初めて、ざっくり同じセットリストで8公演やったんですけど、4公演目くらいで同じように演奏するのに飽きすぎちゃって(笑)、5公演目くらいから「赤裸々」をブルースで演奏したんですよ。

(一同笑)

高木:「ブルース進行でも『赤裸々』やれる!」ってなって(笑)。

いけだ:あれはお客さんも盛り上がってくれたよね。

テヒョン:僕らもその未来が見えますね……(笑)。

高木:ライブで飽きたくないじゃん。もちろん、セットリストをかっちり決めて、最初から最後まできっちり決めてやるライブもあると思う。オーケストラもそうだしね。でも俺らは偶発性中毒というか、常に求めているところがあるんじゃないかな。「ん? 何かがおかしい」とか「なんでコード進行が突然変わっちゃうの?」みたいなことに、ときめいてしまう(笑)。ただ、作品として残す場合は「ちゃんと構築しよう」とより思うというか。偶発性に頼りすぎない意識はあるかもしれないです。

BREIMEN「ブレイクスルー」Official Music Video
BREIMEN「T・P・P feat.Pecori」(OFFICIAL LIVE MOVIE) COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR @Spotify O-EAST

テヒョン:確かに。僕らもセッションの時はライブの感覚でうまく出せるから、だったら作品として説得力を持たせなきゃ意味がないという思考が働く。

西山:それはDAWやDTM志向につながっているかも。

テヒョン:ここでドラムがどう入って、どう盛り上げるか? みたいな。キーボードを何台入れて、音色はどうするのか? をめちゃ緻密に考えますね。瞬間芸術と、作品志向が共存している感じはあると思います。

いけだ:俯瞰しながら、即興的にやるというかね。

テヒョン:まさにそうです。さっきも言ったように、ライブで同じことをやりたくないのは、演目を忠実に再現するのが「自分」とは思えないのと、どんどん変わっていくし、その日はその日の気分で歌っちゃうのが「自分」だと思うからなので。だから、今後BREIMENみたいにツアーを回るようになったら、きっと自分たちもそうなるだろうなって。

高木:ライブに関わる周りの人たちは大変だけどね(笑)。

特集:バンドからバンドへと受け継がれるもの

主にライブハウスで活動するバンドたちには、そのシーンにおいて脈々と受け継がれる音楽性やマインドが存在する。同世代と切磋琢磨し…

◾️BREIMENリリース情報
メジャー1stアルバム『AVEANTIN』
2024年4月3日(水)発売
・通常盤(CD only):¥2,980(tax in)
・初回生産限定盤(CD+Blu-ray):¥5,980(tax in)
配信:https://VA.lnk.to/9yYbfc

<収録曲>
M1. a veantin
M2. ブレイクスルー
M3. 乱痴気
M4. ラブコメディ
M5. 眼差し
M6. LUCKY STRIKE
M7. T・P・P feat.Pecori
M8. 寿限無
M9. 魔法がとけるまで
M10. yonaki
M11. L・G・O
<Blu-ray収録内容>
・LA滞在ドキュメンタリー
・『BREIMEN ONEMAN TOUR「COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023」』東京公演ライブ映像

アルバム『AVEANTIN』特設サイト

■BREIMENライブ情報
『BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」』
4月19日(金)東京 人見記念講堂
4月26日(金)札幌 sound lab mole
5月10日(金)仙台 Rensa
5月18日(土)大阪 なんばHatch
5月24日(金)金沢 AZ
5月31日(金)福岡 BEAT STATION
6月1日(土)広島 LIVE VANQUISH
6月7日(金)名古屋 ボトムライン
6月28日(金)KT Zepp Yokohama ※追加公演決定

<追加公演オフィシャル先行>
https://w.pia.jp/t/breimen2024/
受付期間:4月19日(金)20:30~5月6日(月)23:59

<チケット>
一般:¥5,000(税込)
学割:¥3,500(税込)
※ドリンク代別途
ライブ詳細:https://www.brei.men/live/detail/?id=51656

BREIMEN 公式HP

『From Dusk Till Dawn』

■HALLEYリリース情報
1stアルバム『From Dusk Till Dawn』
2024年3月8日(金)発売
CD:¥2,750税込/YLLH-1001(PPTF-8160)
CD取扱店舗:TOWER RECORDS 渋谷/新宿/梅田 NU 茶屋町/なんばパークス/名古屋パルコ/名古屋近鉄パッセ/オンライン

【収録曲順】
1. Daydream
2. Breeze
3. 'Cause It's Too Cold To Walk Alone
4. Comfy
5. Sugary
6. Who Is He? (Interlude)
7. Whim
8. Set Free
9. Clear Mind
10. Lemonade
11. From Dusk Till Dawn
12. Write Me a Love Song

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