乃木坂46 山下美月の卒業シングルが『チャンスは平等』である意味 深川麻衣、橋本奈々未ら歴代を振り返る
2022年12月7日リリースの31stシングル『ここにはないもの』で表題センターを務めたのが、同作が卒業前最後のシングルとなった齋藤飛鳥。2022年に乃木坂46はデビュー10周年を迎えるとともに、1期生の卒業ラッシュを迎え、残る1期生は当時キャプテンの秋元真夏と齋藤のふたりだけだった。オリジナルメンバーとして、そして白石卒業後の乃木坂46の象徴としてグループを守り、もはやリビングレジェンドとも言える存在でもあった齋藤。そのため、彼女の卒業は“齋藤飛鳥のグループからの卒業”だけにとどまらず、“世代交代”を意味するものでもあり、表題曲「ここにはないもの」はグループの原点回帰の一曲でもあったと思う。「サヨナラの意味」にも象徴されるような乃木坂46らしい、エモーショナルなサウンドと歌詞は、メンバーに対しても、ファンに対しても「次のステージへ向かえ」と言っているようにも聴こえる。齋藤が初めてセンターを務めた2016年の15thシングル「裸足でSummer」は、先述した深川の卒業シングルの次の作品。当時、『乃木坂工事中』(テレビ東京系)での選抜発表時に涙を流しながら「私のせいで売れなくなっちゃう」と言っていた齋藤が、自身の卒業シングルで堂々とセンターに立つという成長ぶりを見せた。
振り返ってみても、これまでの卒業ソングは卒業していくメンバーの功績とグループの現在地が色濃く反映されてきたものでもあった。一概に比較できるものではないが、これまでの卒業シングルはすべて1期生メンバーによるものでもあり、0からグループを創造してきた彼女たちの門出を祝う曲だったことは間違いないだろう。しかし、今年5月に卒業を控えている3期生・山下美月がセンターの「チャンスは平等」は、『サタデー・ナイト・フィーバー』やKool & The Gangを彷彿とさせる70年代ディスコミュージックのようなダンスミュージック。これまでの卒業シングル表題曲におけるセレモニー的なサウンドとは異なるものとなった。
ただ、あらためて山下のキャラクターを考えると、3期生として7年半ものあいだグループに在籍し、乃木坂46を支えてきたひとりではありながら、ソロでドラマへの出演やモデルとしての活躍も多く、自身も言っていたように“一匹狼タイプ”の自由な人という印象もある。これまで山下がセンターを務めた26thシングル表題曲「僕は僕を好きになる」や32ndシングル表題曲「人は夢を二度見る」は、いわゆるグループらしさとも言える清涼感のある楽曲だっただけに、白石の卒業シングルが「しあわせの保護色」だったように、山下も最後はウェットなものではなく楽しい終わり方にしたい、いい意味でファンの期待を透かしたいと思ったのかもしれない。
一方で、当初から山下を送り出す卒業ソングという意味合いではなく、山下の空いた席を各メンバーに「チャンスは平等」と示すような一曲で、それを山下から後輩へ宛てたメッセージとして書かれたものとも感じられる。もちろん、3期生全員選抜というのは山下を見送る楽曲としての意味合いは大きいだろう。しかし、山下は乃木坂46のメンバーとなるまでにさまざまなオーディションを受け、多くの落選を経験した過去もある。いまだ見ぬ6期生も含め、メンバーに対してのメッセージだと思うと、自らチャンスを掴み取った彼女にとって乃木坂46としての最後のセンター楽曲「チャンスは平等」は、やはりかっこいい曲に聴こえてくる。ソロ曲「夏桜」がどのような楽曲なのかも、楽しみだ。
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