ハナレグミ『THE MOMENT 2024』になぜ感情を揺さぶられたのか すべての必然が伝わるライブに

 言わば、ライブの第一部は、そこで終了。そして、この日初めて長めに尺をとった永積のMCから是枝監督の手紙の朗読、そしてひとりで弾き語りの流れで歌われた「ホームにて」が、第二部のスタートと言えるだろう。

 その第二部は、間に「賑やかな日々」をはさみつつ、KIRINJIや、ビートたけし、オマーのカバーを経て、是枝監督の『海寄りもまだ深く』の主題歌「深呼吸」で、締められる。

 その後に続く「ハンキーパンキー」と「サヨナラCOLOR」と「Music and Me」、つまりソロ初期の曲、ソロ以前の曲、自身の原点である曲が並んだ最後の3曲が、第三部である。つまり、選曲も、曲順も、すべての曲に対するボーカルやアレンジメントのアプローチも、MCを入れる位置とその内容も、照明やステージセットなどの見せ方もすべて含めて、なぜこうなのか、なぜこうでなくてはならないのか、なぜこれが必要なのかが、いちいちわかる。

 言い換えれば、すべての必然が、誰に説明されなくとも、ライブを観て聴いていれば、一瞬一瞬、細部まで、こちらに伝わってくる。そういうライブだったわけだ。

 ただ、本番中、「なるほどなるほど、この曲は4曲目である必然があるのだな」などと考えながら観ていたわけでは、もちろんない。すべてが終わって、なぜ2時間にわたって、こんなにも感情を揺さぶられ放題揺さぶられたのかを考えたところ、自分の場合、そういう結論になったのだった。

 「独自のLIFE」のあとの、この日最初のMCで、「前回は2020年、4年の間で、世の中すっかり変わってしまいましたけど、生きて会えたねえ、俺たち」と、永積は言った。そして、ラストの「Music and Me」の後半で盛り込んだラガマフィンの中で、「4年に一度ぐらいのイベントだと思っていたけど、やっぱり来年もやりたくなったよ」と歌って、拍手喝采を浴びた。

 前者は、コロナ禍をなんとか乗り越えて通常ペースの活動に戻れたことの感慨が、彼にそう言わせたのだと思う。

 後者は、規模も労力もそれ以外も、毎年コンスタントにやれるようなライブではないことはたやすく想像できるが、あの場で、底抜けに幸せそうなオーディエンスひとりひとりの顔を見ていて、ついそう歌ってしまったのだ、と思う。

 10人編成というバンドの規模も、それにまつわるアレンジやリハーサル等の準備も、会場のキャパ等も含めて、確かに、これを毎年定例化するのは、相当大変だと思うが、できれば本当に来年もやってくれるとうれしい。

 もうひとつ、さらに言うと──これは自分の個人的な希望だが──、東京と大阪以外でも、可能ならば、開催してほしい。「これ、こんなにすげえのに、大阪フェスティバルホール満員とLINE CUBE SHIBUYA満員の人数しか、生で体験できてないんだよなあ。もったいない!」と、観ながら何度も思ったので。

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