lecca×TSUGUMI×Alenoise、コライトで目指した本場のレゲトン 挑戦する仲間からの刺激も

 leccaが7年ぶりとなるニューアルバム『LIBERTY ERA』をリリース。その収録曲「SIGN」をコライトしたSOULHEADのTSUGUMIとAlenoise、leccaによる鼎談が実現した。leccaとTSUGUMIは過去に楽曲で共演している仲。leccaは「Home party feat. TSUGUMI from SOULHEAD」(2007年)、「Love Majic feat.LUNA,TSUGUMI from SOULHEAD & JAMOSA」(2010年)を発表。一方、SOULHEADは「WORLD GO ROUND featuring lecca」(2011年)をリリースしている。Alenoiseはコロンビア出身のプロデューサーで、これまで主にラテン音楽向けの楽曲を手掛けている。出自の異なる3人は「SIGN」でどんなケミストリーを起こしたのか。leccaが自身以外の手がけたメロディを歌うのは初めてという事実が明かされた楽曲誕生の裏話や、深い悲しみの底にあったleccaの心境の変化など、アルバム制作のバックストーリーをたっぷり語ってもらった。(猪又孝)

「想像してたレゲトンとは違うけど、ぜひこれで書いてみたいと思った」(lecca)

――「SIGN」は、いつ頃制作に着手したんですか?

lecca:Alenoiseがこの曲のトラックを最初に聴かせてくれたのが2023年の春でした。良いトラックができたら聴かせてくれることが何回かあった中にこのトラックがあって、「すごくいいじゃん。これで書いてみよう」って。Alenoiseもトップラインを作れるので、TSUGUMIと一緒に3人で作ろうよって。

――そもそも、この曲はアルバムを制作する過程で作られたんですか?

lecca:いえ、独立して作っていた曲です。3人で何曲かチャレンジをしている中での1曲で、結果それがアルバムに入ることになりました。

――3人の接点はどのように生まれたんですか?

TSUGUMI:「SIGN」を作る前に私とAlenoiseは出会っていて、一緒に曲をいろいろ作っていたんです。彼がすごく積極的に行動する人で、いろんな人に「セッションしようよ」とDMを送っていて、そのなかでleccaともInstagramですでに繋がっていたんです。で、Alenoiseから「leccaって知ってる?」って聞かれて「じゃあ3人で作ろうよ」って。

lecca

――TSUGUMIさんとAlenoiseさんはどのように繋がったんですか?

TSUGUMI:当時、私がレゲトンにすごくハマっていて、「レゲトンをやりたい」とソニーのプロデューサーの方に話していたんです。そしたらAlenoiseが来日するから一緒にセッションしてみれば? って紹介されて作り始めたのが最初です。

――Alenoiseさんの出身は?

Alenoise:コロンビアのブカラマンガという街です。首都のボゴタから車で9時間くらいかかる場所。

――どこを拠点にして、どのような作家活動をしているんですか?

Alenoise:いろんな場所を転々としながら活動しています。たとえば去年は、日本に半年いて、ヨーロッパに2カ月いて、次にコロンビアに戻るという生活をしていました。とにかく移動が多いから、どこを拠点にするかは難しいけど、日本とコロンビアには部屋を借りているから、主にボゴタと東京で仕事をしています。プロデュースは主にラテンマーケット向けですが、去年あたりから日本での仕事も増えてきているから、今は国境を越えた仕事を積極的にやっていこうと考えてます。たとえば去年はTSUGUMIと一緒に韓国のソングライティングキャンプに参加しました。

lecca:あと、Alenoiseは空手やってたんだよね? だから日本に馴染みがあって。

TSUGUMI:首に「格闘技」っていうタトゥーが入ってるの。

Alenoise:コロンビアにいるときからマーシャルアーツが好きで、4歳から空手を習っていたから人生の早いうちから日本の文化に影響を受けていました。空手の先生が日本からいらっしゃったりもしたので、日本人の人となりをものすごく尊敬してたんです。

ーーleccaさんが「SIGN」のレゲトンビートを聴いたときの第一印象は?

lecca:私はレゲトンが大好きで。最初、南米の人が作るレゲトンってもっと攻撃的な感じかなと思っていたんです。でも、Alenoiseはすごくメロウな切ない感じのトラックが得意だということがわかって、そこが私の大好物だったんです。だから、想像していたレゲトンとは違うんだけど、ぜひこれで書いてみたいと思いました。

Alenoise

――最近のアフロビーツ系のレゲトンではなく、2000年代前半くらいのレゲトンを感じました。南米のオーソドックスなレゲトンというか。

lecca:ミックスでものすごくトラックの表情が変わったんです。当初、ミックスエンジニアのD.O.I.さんが作ったミックスがあって「レゲトンってこういうもんだよね」って思ってたんだけど、Alenoiseが「全然違う」って言いだして、低音域をめちゃくちゃ膨らませたんです。

Alenoise:これが100%コロンビアのレゲトン。最初のミックスはJ-POP特有の中音域を出したミックスで、低音やクリスピーな部分が抑えられてたんです。だからD.O.I.さんにドラムやベースをもっと大きくしてもらって、ボーカルも出してもらって、他は抑えるミックスにしてもらいました。

lecca:その大きくするレベルが見たことないレベルだったんです。「もうちょっと大きく。プラス1で」どころじゃなく、プラス100くらいにしてたからびっくりして(笑)。

Alenoise:僕がD.O.I.さんに何回も「More! More!」と言うもんだからD.O.I.さんも最初は信じられなかったみたいで。じゃあ、参考までにって感じで僕が試しに作ったものを再生してもらったんです。で、「これくらい低音を出していいんです」って伝えて。

lecca:「本場はこうなんだ。私たちに馴染みのあるレゲトンと違った!」と思って。結果、仕上がった今回のレゲトンは大好きです。目指すべきサウンドは作ったAlenoise本人が一番わかっているし、このノリを最大限に出すにはどうすべきかっていうのはAlenoiseしかわかっていなかったので。最初はD.O.I.さんも探り探りだったんだけど、Alenoiseが「ここまで出していいんです」ってはっきり伝えてくれたから最後は気持ちよかったです。

SIGN

「イケイケなだけじゃない、leccaの包容力も大切にして作った」(TSUGUMI)

――メロディは3人でどのように作ったんですか?

lecca:トラックに合わせて3人ともそれぞれにメロディを考えて、そこからいいとこ取りをしました。なので、Alenoiseが作ってくれたラインもあるし、TSUGUMIが考えたラインも残っているし、私のラインも残ってる。

Alenoise:ラテンマーケットとアジアのマーケットでは曲作りの過程が違うんです。ラテンマーケットだとメロディと歌詞を同時に作っていくことが多いけど、今回はメロディだけを作ることになったから、まずはキャッチーにすること。メロディはユニバーサルな言語だと思っているから、1回聴いただけで頭に入るようなものを念頭に置いて作りました。

――TSUGUMIさんはどんなことを意識してメロディを作りましたか?

TSUGUMI:私が思うleccaを出し過ぎると、leccaとちょっとズレが生じるかもしれないと思って、最初はちょっと迷ってたんです。そう思いながらも作ってみたらleccaの声と私の声が合うことがわかって、すごく作りやすかった。とはいえ、メロディを作ったあとにleccaが歌詞を書くから、切ない曲なのかアゲアゲの曲なのか、そこだけ決め込んで作りました。

――結局、切なさとイケイケの割合はどのように?

TSUGUMI:すごく切なげなメロディにしました。グッとくる感じ。かっこつけるでもなく、ノリノリでもなく、歌詞がちゃんと乗るものになればいいなと思ってたんです。

――それが、“私の思うlecca”とは違う方向ということ?

TSUGUMI:そうです。私が思うleccaを表現してしまうとすごく強くなっちゃう。私はやんちゃなleccaを求めてしまうから。leccaは性格も絶対Mじゃないじゃん(笑)。

lecca:ん? Sだって言わせたいの(笑)?

TSUGUMI:絶対Sじゃん。

lecca:おい(笑)!

TSUGUMI:leccaは友達でもあるけど、お姉ちゃん気質があるというか。お互い、子どもを持つ母親同士だけど、私より早く母親になっているから先輩みたいなところもあるし。そういう部分を出したくなっちゃうんだけど、でももっと他の要素もあるから。ファンの方からしたら包容力があるだろうし、イケイケなだけじゃないから、そこを大切にしなきゃと思って作ったんです。

lecca:そんなこと思ってくれてたの?

TSUGUMI:うん、思ってた(笑)。

lecca:深いな。

TSUGUMI

――leccaさんはTSUGUMIさんとの久々のコラボはどうでしたか?

lecca:久しぶりどころか、人が作ったメロディラインを歌うのは初めてなんですよ。

TSUGUMI:あ、そうなの?

――作曲のクレジット欄に別の方の名前があっても……。

lecca:それはトラックを作ってくれた方のお名前。私以外の人間がメロディラインを作ったことが過去に一回もないんですよ。それをやりたいとも思ってなかったし。

――なぜ今回、自分以外のメロディを?

lecca:昔からTSUGUMIが大好きで、ぶっちゃけ、TSUGUMIじゃなかったら、やりたいと言ってないと思います。

――過去にコラボ曲を作ったときから、そう思っていた?

lecca:TSUGUMIは天才だと思っていて。こんなフロウは日本人から出てこないよっていうのがパッと出てくるんです。私からは出てこないなっていうフロウを今回の「SIGN」のヴァースでも使わせてもらったんですけど、めちゃかっこいい。

TSUGUMI:でも、それでよく歌詞を当ててくれたなって思う。すごくクセのある部分が今回採用されたから。

lecca:TSUGUMIが作るラインはひと味違うんですよ。私には絶対出せないフロウなので憧れがあるんでしょうね。

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