女性ファンの獲得なくしてブレイクはない アイドル現場の変化とシーンの未来
TikTok対応の強さがブレイクのキーワードに
5位 いぎなり東北産「わざとあざとエキスパート」
宗像:TikTokでバズれるかという観点で言うと、サビ前にあるセリフとか楽曲自体の構造が重要なんですよね。そういったところも含めて、楽曲がデザインされている印象を受けました。
ガリバー:TikTokであれだけの広がりを見せた、超ときめき宣伝部「すきっ!」を追随したような動きにどうしても見えてしまいますよね。今までは地元の宮城をベースに東北らしさを出した曲がランクインしていましたが、今回は全くそういった文脈ではない。その両方で攻める事ができる力があるという風にも言えます。
岡島:新しい学校のリーダーズやFRUITS ZIPPERが、TikTokでしっかり当てていたことを考えると、TikTok対応に強いかどうかというのも、アイドルのブレイクにとってとても重要になってますよね。
6位 ばってん少女隊「あんたがたどこさ ~甘口しょうゆ仕立て~」
ピロスエ:「肥後手まり唄×ダンスミュージックの融合」という曲のコンセプト自体が面白いのでもっと上位に行くかなと思っていました。
岡島:作詞をchelmicoのRachelさん、作曲をPARKGOLFさんが手がけています。
宗像:ビートが最先端で、トラッドっぽいメロディというところも含めて、意外性を繰り出してきていて新鮮でした。
ピロスエ:メンバーが巨大化して歌うのが特撮オマージュっぽくも見えたり、あとはテイ・トウワ「火星」のMVにもイメージが近いなと思いました。
ーーNewJeans「Zero」のサビに出てくる〈コカコーラマシッタ〉のフレーズは、日本で言う〈どれ(どちら)にしようかな〉で、韓国の人なら誰もが知っているわらべうたなんですよね。「あんたがたどこさ」もそれに近い耳心地の良さや懐かしさを感じさせます。
宗像:そういった伝統的な要素を使うのはある種の鉄板ですから。世界に羽ばたいてほしいなと思いますね。
岡島:BABYMETALとか新しい学校のリーダーズがそうですけど、日本独自のものを変にアレンジせずに海外へそのまま見せていくというやり方が浸透しているのを実感しています。
宗像:海外に向けては、YOASOBI「アイドル」然り、もう日本語でOKなんです。日本のポップミュージックが広まらなかったのは、単なる流通の問題だということがサブスク時代になってはっきりした。BABYMETALはヘヴィメタルの文脈に乗って、新しい学校のリーダーズは何に乗ったかというと88risingなんですね。2022年の『Coachella』で、88risingのステージに招かれたのは宇多田ヒカルだった。88risingという流れのフォーマットに乗ることが重要になっていて、そこを見据えたアイドルが出てくると面白いなと思います。
岡島:あとは曲だけじゃなくて、衣裳やパフォーマンスも含めたビジュアル感ですよね。ばってん少女隊もやっていることはほかとは変わっていて、面白いなと思っています。
7位 Task have Fun「Vibes」
ガリバー:タスクは2023年の『TIF』で満を持して初日のHOT STAGEのトリを飾っているんです。モチベーションの持っていき方が素晴らしかったと思いますし、そこに至るまでの曲が必要だったんだと「Vibes」を聴くと感じます。2023年は活動の仕方も変わっていたんですよね。リリイベで撮影可能にしたりとか、夏に向けてのグループ自体の雰囲気が良かったと思います。
ーー12月に渋谷のタワーレコードに行ったら、地下のCUTUP STUDIOでちょうどタスクがフリーライブをやっていて、その時も撮影可能でしたね。SNSでの反響があったって、MCで話していましたよ。
宗像:そういうところなのかも。撮影許可をどんどんしていかないと。最近はついにWACKもスマホの写真・動画撮影が可能になったので。
ガリバー:WACKって元々静止画がOKなのに、それもそんなに回ってこないというか。
宗像:WACKの子たちも時代の流れに乗っていこうとしているのが大事ですよね。
ピロスエ:ハロプロも一時期撮影可能だったんですけど、コロナになって有耶無耶になり、コロナが明けた今になっても、結局そのままで、あれはなんだったんだろうっていう感じです(笑)。
8位 Merry BAD TUNE.「真夏のユーレイ!!」
宗像:2022年4月に解散したワールズエンド。のメンバーを一部残しつつ、新たなメンバーを加えたのがMerry BAD TUNE.です。東京インディーズシーンではyosugalaとかINUWASIが人気でしたけど、そういった脈々たるロックな路線としての一曲ですよね。26時のマスカレイドの立ち上げプロデューサーでもあったワタル。くんが関わってきたアイドルの流れを受け継いだグループであるとも言えるかなと思います。
10位 jubilee jubilee「Flyways」
ピロスエ:こんな上位に入ってきたのは初めてですよね。
ガリバー:山陰地方のアイドルでベースは米子と松江なんですけど、地方アイドル好き、西日本のアイドルファンからするとjubilee jubileeは活動初期から人気が高かったです。メンバーが抜けていき、なかなか活動が安定しない中で、最後に残った2人が卒業発表した後に出した曲が「Flyways」で、彼女たち2人はもちろん、これまでグループに関わったメンバーへのエールの曲になっています。グループ自体は残って、現体制終了という形になるんですけど、fishbowl、タイトル未定のような決して力のある事務所ではないロコドルが、このタイミングでベスト10に入ってきてくれたのは嬉しいです。
岡島:2017年結成なので、活動自体はもう7年ぐらいなんですよね。ライブハウスの米子AZTiC laughs、松江AZTiC canovaを運営しているAZTiCがプロデュースしているグループで、サウンドプロデュースをしているのがsiraphの蓮尾理之さん。siraphは、sora tob sakanaのサウンドプロデュースやアニメ『呪術廻戦』の劇伴を手掛けている照井順政さんがメンバーのバンドです。