ゆいにしお、なぜアラサー女性の“平日”に寄り添う? 社会人4年目、仕事や恋愛への意識の変化
今は逆に早く30歳になりたいと思えている
――これまでだったら歌えなかった楽曲ってありますか。
ゆいにしお:「morning walk」のDメロに〈嫌いなもの嫌いって言えないなんて no way〉という歌詞があるんですけど、これは今の私だから歌えるようになったことで。嫌いなものをちゃんと嫌いって言うって、当たり前のことなんですけど、ついついわきまえちゃって気を遣っちゃって「それもいいよね」みたいに、無理して自分を丸め込んじゃう瞬間が社会の中だとあるじゃないですか。好き嫌いを言ってられない瞬間が。『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)というドラマで、松たか子さん演じる大豆田とわ子の「いいんだよ、はみ出したって。嫌なものは嫌って言っておかないと、好きな人から見つけてもらえなくなるもん」というセリフがあるんですね。その言葉を人生の箴言にしている友達がいて「確かに、当たり前のようで全然自分でできてなかったな」と思ったので、それがそのまま歌詞に反映されていますね。
――でも、創作物って自分が思っていないことも自由に書けるじゃないですか。これまでそれをしなかったのは、どうしてなんでしょう?
ゆいにしお:やっぱり歌詞で嘘を書きたくなくて。ちゃんと自分が思った気持ちを書くことを、一番大事にしているんです。
――心からそう思えるようになったからこそ、歌詞にすることができたと。
ゆいにしお:「嫌いなものを嫌い」って言うと嫌われちゃうだろうな、と今までは思っていたんですよね。みんながいい気持ちになる言葉を言わなきゃ、と思っていたんですけど、でもそれは私じゃなくてもいいなって。まだ嫌われる勇気はあんまりないし、みんなに好かれたい思いはまだあるけど、でも本当に好きな人に見つけてもらうために、ようやく書けました。
――その一歩は相当大きいですよね。
ゆいにしお:めちゃくちゃでかいですね。世界から見たら2ミリぐらいの勇気だったと思うんですけど、自分の中では大きな分岐点だったなと思います。そう考えると、あまりにも今回のアルバムは自分の日記過ぎるな、とは思っていて。1stアルバムの時は「私の素晴らしい女友達を見て!」っていう感じだったんですけど、『weekday』は「私は普段はこういうことを思っていて……」と内側を見せている。だからこそ、よりドキドキが強いんだと思います。
――特に「さくら」は顕著ですけど、今回の楽曲に登場する主人公達は、社会の刷り込みや世間体と対峙している気がしました。
ゆいにしお:やっぱり20代中盤とか後半あたりの女性は、どうしても世間からやんや言われる時期だなっていうのは感じていて。結婚しないでいたら「なんで結婚しないの?」とか、結婚したらしたで「なんで子供はいないの?」とか。キリがないほど、いろいろ言われる。世間はこうだけど、自分はこうありたいよね? っていう戦い続きの日常なので、無意識にそこはぽろっと出ていたんだと思います。
――改めて、ご自身を含めたアラサー女性の世間での立ち位置に対して、どう感じていますか?
ゆいにしお:一昔前よりはだいぶ自由になってきてるのかな、とは思いますね。昔だったら24歳とか25歳になると「クリスマスケーキの売れ残りだ」なんて言われていたって聞くんですけど、今はそんなこともないし。結婚していないことで外から言われることもあるけど「まだ若いから大丈夫だよね」みたいなのはある。とはいえ自由さはありつつも、まだ自由にはなりきれてないので、その転換期でもがいてるのがアラサー女性なのかなと思ってます。
――いろんな悩みが同時に起こるタイミングではありますよね。それはある意味では、一番面白い年代かもしれないですね。
ゆいにしお:うん、そうですね。同じ生き方をしてる人がどんどんいなくなってくっていうか。オプションがどんどんつけられていく感じがするので、みんなにも歌を書いて欲しいですね。アラサー女性の歌詞を読んでみたいです(笑)。
――アルバムを完成させたことで、今後の音楽活動に対しての気づきはありましたか?
ゆいにしお:使命感があるわけではないんですけど、やっぱり女性の気持ちに寄り添ったり日常に寄り添ったりするのが得意だし、やり続けたいなと思います。自分の音楽をもっと多くのみんなに聴いてもらえたら、それが使命感になっていきそうだなって。
――年齢を重ねることでも、ゆいにしおの音楽は変わっていきそうですよね。今後は30代の曲を歌われる可能性もあるでしょうし。
ゆいにしお:この前、メイクさんが「ゆいにしが30代になった時に作る曲が楽しみ」と言ってくださって。私がその時その時で感じたことが受け入れられている感じがして、嬉しかったですね。私も30代の自分が書く曲が楽しみです!
――どうなっていると思います?
ゆいにしお:いやー、どうなんでしょう!? 意外と3年後の話なので、ベースの部分は変わっていないけれど、でも今作で「誰かに嫌われてもいい」とステップを踏めたように今よりも2、3歩先に行ったらいいなと思いますね。それこそ、これまで年齢シリーズみたいな感じで曲を書いてきてたんですよ。24歳の時だと「pool mood」という曲を書いて、25歳の時には「mid-20s」を書いた。今は26歳になって「TWO HANDS」を書いたんですけど、その3曲を比べてるとすごい明るくなっていくんです。アップテンポになっているし、歌詞もどんどん楽しくなってる。24歳の時はコロナ禍の真っ最中でどこにも行けないし、閉塞感があったんです。だけど、26歳の私は両手に持ちきれないぐらいの可能性感じていて。「楽しもうぜ」ってマインドになっている。年は取ってみるもんだなと思いました。
――「TWO HANDS」はキラキラしたパーティー感もありますよね。
ゆいにしお:なんで、こんなに前向きになっているのかは、あんまり分からないんですよね。でも24歳や25歳の時より、今が一番楽しい。数年前は歳をとりたくなくて、20代後半になるのがすごく怖かったんです。今は逆に早く30歳になりたいと思えているので、年齢に対して前向きになれたのは結構でかかったな思いますね。
■リリース情報
Major 2nd Full Album『weekday』
2024年3月6日(水)リリース
価格:¥3,000(税別)
購入:https://lit.link/yuinishio
<収録曲>
01. TWO HANDS
02. yyyymmdd
03. routine life ※TV アニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』第2 期オープニングテーマ
04. さくら
05. アイシャドウ
06. おいしい温度
07. 帰り道ランウェイ
08. me&cat
09. morning walk
10. BFF
11. routine life (English Ver.)
■ツアー情報
『ゆいにしお 2nd Full Album『weekday』 Release Oneman Tour "clap your two hands!"』
2024年4月12日(金)福岡・INZA
2024年4月21日(日)大阪・HOLY MOUNTAIN
2024年4月29日(祝・月)北海道・札幌Bessie Hall
2024年5月2日(木)愛知・名古屋ell FITS ALL
2024年5月12日(日)東京・SPACE ODD
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