Dannie May「実体の見えない音楽はもうやりたくない」 ファンとの繋がりがバンドにもたらした変化

 Dannie Mayの2024年第一弾リリースとなる新曲「カオカオ」。『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』の主題歌として書き下ろされた同曲は、エレクトロスウィングを全面的に導入したサウンドも、映画のテーマとマサ(Vo/Gt)自身の本音の重なり合う地点で書かれたエモーショナルな歌詞も、Dannie Mayの新章を告げるのにふさわしい力強さを感じさせる。

 昨年を振り返るところから始めた今回のインタビュー。意外と3人の中には反省というか、今一度Dannie Mayというバンドのありかたを問い直す視点があることがわかった。その冷静な視点で自分たちを見つめ直して生まれた昨年末のEP『青写真』を経て、早くも彼らはDannie Mayなりの「答え」を見つけている。それはきっと今年リリースされていく楽曲、そして3人口を揃えて「もっと増やしたい!」というライブの場でも証明されていくだろう。まずは3月18日の5周年ワンマン『Give Me Five』。渋谷 CLUB QUATTROで、アップデートされたDannie Mayのパフォーマンスを体感してほしい。(小川智宏)

どういうエンタメを届けたいのか考え直す必要があった(Yuno)

Dannie May

――2023年のDannie Mayはアルバムに始まり、小林幸子(YouTubeで「ええじゃないか」をカバー)に終わるというすごい1年でしたが、どういう手応えを感じました?

マサ:2023年は様々な曲調にチャレンジした1年だったなというのはあって。その中で今年は、いろいろ試してみて自分たちの中で分かったことを解放する年なのかなと思ってます。でも、「いろんな曲やりすぎたな」と反省する部分もあり……アーティストが纏う空気感が薄れちゃったなと思うことも去年はありました。でも、それも含めてたくさん頑張りましたと、自分たちを褒めてあげたい年でもありましたね。今年の初リリースが「カオカオ」で、それもまた今までの曲とは全然違う曲調なんです。でも、Dannie Mayの筋が一本通ったような曲を中心に、今年は書いていきたいなと思ってます。

田中タリラ(以下、田中):2023年は本当に好き勝手にやったというか、ファンの人と一緒に楽しむ機会があまりなかったかなと思っていたんです。でも今年に入ってワンマンライブを2本行って、ライブ後のInstagramのリールやTikTokとかを含めて、ファンの人との繋がりが強まっていると感じています。そうなると、みんながどういうものを求めているのか、見えてくるものがまた違ったりするので、楽曲やライブにおいても、ファンの人の顔を思い浮かべながら制作できてるなって。

――二人からは反省点が出てきていますが、Yunoさんはどうですか?

Yuno:去年は初アルバムを出したし、アニメのタイアップもあったり、それこそ小林幸子さんに歌っていただいたりとか、いろいろありつつも反省する1年だったなと僕も思っていて。実験の年だったと言えばそうですけど、その反面、ちょっと散らかしすぎたなとも思ったんです。それは出した曲が悪いという意味ではなくて、自分たちが音楽というツールを使ってどういうエンタメを人に届けたいのか、みたいなことをもう一度考え直す必要があるんじゃないかって。

――なるほど。

Yuno:でも昨年末にリリースしたEP『青写真』が、僕らの“これまで”と“これから”を組み合わせた、Dannie Mayの原点のバージョンアップみたいな作品になったので、そこで一つ精算できた感覚もありました。僕らは3月で結成5周年を迎えるのですが、今まで自分たちがいろいろやってきた中での設計図の答えが出たと思っていて。前回のツアーは、今までのライブの中で一番良かったと言ってくれるお客さんもいて、僕自身「そういうことなんだな」と分かった部分がありました。それは様々なことに挑戦したからこそ実現できたものでもあるので、今年はそのつながりが増えるような、実体が見えるものをちゃんと作りたいと思っています。やっぱり人の匂いがするものがいいと思うので。

田中:ファンとバンドの繋がりが濃いと、お互いの熱量が高まっていくと思うんです。去年は自分達だけでやろうとしていたんですけど、ファンと一丸となって広がっていくようなやり方が見えてきたなと思います。

Yuno:語弊を恐れずに言うと、もちろん手を貸してくれるスタッフさん、協力してくださる方はいるんですけど、やっぱり3人対80億人みたいな気持ちになってくるんです。実体の見えないことをしていると。でも実際に応援してくれてる、聴いてくれてるみんなに会える機会があると、「3対80億じゃないよな」というのを再確認できる。僕らが続けていくためにも必要なことだと思っています。

Yuno

――80億人相手になると想像もできないけど、「ここにいるこの人たちが味方なんだ」という実感がほしいってことですよね。

Yuno:そうなんですよ。それが見えた、メモリアルなツアーになったと思います。

マサ:今回のツアーでは音もすごく変わりました。全員が初めてイヤモニにしたんです。ライブ感がなくなるんじゃないかなと不安に思っていたんですけど、大阪でも東京でも、3人ともすごく集中してやれていたので、そこはよかったなと。イヤモニがあった方が絶対にやりやすい曲調ではあるので、バンド自体とライブの拡張性も上がったなと。

――逆に、よく今まで同期バチバチの音楽をイヤモニなしでやっていましたね。

Yuno:おかしいと言ったらアレですけど、本来はイヤモニがあった方がいいものではあると思う。

マサ:だから楽になりましたね。もともと持っている曲のよさも伝わるし、僕らも曲繋ぎとかでナーバスになったりしなくていいんで、お客さんに集中できました。

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