YOASOBI、Adoらアジア圏での公演が続々 コロナ禍を経たJ-POPアーティストへの飢餓感の高まり
2023年1月8日に中国のゼロコロナ体制が解除になると、それを待っていたかのように、中国をはじめとするアジアのプロモーターから関係各所に日本のアーティストの公演企画書が次々に投げ込まれる。
そしてこれまでX(旧Twitter)などSNSでのフォロワー数を重視して海外の人気を判断していた日本のレーベルやマネジメントは、コロナ禍にサービスが開始されたSpotify for ArtistsやApple Music for Artistsなどのダッシュボードで楽曲再生数・DL数を分析できるようになり、アジア市場でのJ-POP熱がコロナ禍を挟んで一層高まっていくのを感じ取っていった。機は熟したと察知したのか、2023年5月8日に新型コロナウイルスがインフルエンザと同様の5類感染症に移行、海外から日本に入国する際の予防接種証明書の提示が不要となったタイミングを見計らって、海外、特にアジア地域への興行開催へ大きく舵を切ったのだ。
2023年にアジア/ワールドツアーや単独公演を行ったアーティストはRADWIMPS、MAN WITH A MISSION、藤井 風、ONE OK ROCK、BABYMETAL、coldrain、10-FEET、miletなど枚挙にいとまがない。さらに昨年末から今年1月にかけてYOASOBI、2月にAdo、4月にKing Gnuと、これまで海外進出を果たしていなかったトップアーティストたちが立て続けにアジア/ワールドツアーを発表。特にYOASOBIに対する現地の渇望感がピークだったようで、チケット販売開始1分で全会場ソールドアウトという事態となった。
中国のプロモーター・海日娯楽傳媒(香港)有限公司は、昨年8月にマカオで二人組ユニット・GARNiDELiAのソロ公演を主催、チケットはソールドアウトとなった。11月にラウドロックバンド・coldrainの上海公演を4年ぶりに主催、リハーサル立ち合い、サイン入りポスタープレゼント、握手会という特典付きVIPチケットは980人民元(≒2万円)という高価格帯にもかかわらず売り切れた。12月にはバンダイナムコ上海文化センター夢想劇場(バンダイナムコ上海ドリームホール)でシンガーソングライター・家入レオの初海外公演を主催したが、1200名収容の会場はチケットが早々にソールドアウトとなった。アジア地域における家入レオのブッキングエージェントとして、この余勢を駆って、今年は家入の海外での公演数を増やしていきたい考えだ。
このように、デジタルによる楽曲のグローバル流通が海外との距離感を縮め、DSPのデータにより数値分析が可能となり、コロナ禍による人々の閉塞感が、アナログな有観客公演に対する飢餓感をかえって高めることとなった。
今年も日本のアーティストのアジアツアーや公演数は一層増加していくと予測される。世界の中でデジタル化の波に乗り遅れたとされる日本の音楽業界だが、今後ストリーミング配信が一層の伸長をみせていけば、アジアの片隅でJ-POPがリピート再生されている状況が起きているだろう。いや、起きているに違いない。
※1:https://globalmusicreport.ifpi.org/、https://www.ifpi.org/our-industry/industry-data/
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