SUPER BEAVER、Mrs. GREEN APPLE、羊文学、SHE'S……苦悩や葛藤に寄り添う青春／エールソング

　TVアニメ『ONE PIECE』（フジテレビ系）のエンディングテーマに採用されたChilli Beans.の「Raise」は、覚悟を決める瞬間にフォーカスした曲だ。途中で挿入されている鼓動のような音も効果的に作用している。夢や青春をテーマにした曲の場合、現実的な考えを提示する人という意味で“大人”というワードが使われがちだが、この曲は開き直るようなテンションで〈幼い僕らなら自由だな／バカな夢／生きる〉と言っているのが特徴的だ。また、〈たまに疲れる／それもいいよ／全部悪くない／甘い囁きも誘惑だって／必要じゃん？〉と歌うDメロも新鮮。気を張って自分を追い詰めてしまいがちな人へ、軽やかに助け舟を出すようなフレーズだ。

　PEOPLE 1の「GOLD」は、アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』（フジテレビ系）のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。〈ほら ずっと探しているんだ／今ここにいるワケを ここじゃない何処かに／このままじゃ張り裂けそうさ〉というサビのフレーズは、自分が真に何を望んでいるのかを見つめながら、新しい場所へと繰り出していく人の感覚を的確に言い当てている。全体的に曲調は明るいが、歌詞には〈情熱を傾けて夢の続きを描いても／寂しさは拭えない〉、〈重い空の下 平気なフリをして／目を腫らして闇をさらって 街を抜け出した〉など薄暗いトーンのフレーズも多い。夢を描くことの苦しさや孤独も直視しながら、「それでも」と突き進む人を肯定するPEOPLE 1ならではのエールソングだ。

　『めざましどようび』（フジテレビ系）のテーマソングとして全国の朝を爽やかに彩ったwacciの「リバイバル feat. asmi」は、2023年の空気が如実に表れた青春ソングだ。インタビューによると、2022～2023年の学園祭出演を通じて10～20代のリアルな想いを感じ取ったことが、この曲の誕生のきっかけになったのだそう（※1）。様々な物事がコロナ禍以前と同じ形式を取り戻し始めた今年のことを〈世界中の心拍が戻り 街は息を吹き返す〉と表現するサビからは、作詞作曲・橋口洋平（Vo/Gt）の詩的センスが感じられた。asmiの澄んだ歌声や晴れやかな転調も相まって、これまでの悔しい想いが浄化されるようだ。

　「未来は、自分次第で自由に変えていける」という前提の下、自身の心の声に耳を傾けながら、新しい境地へ踏み出す人を美しく輝かしいものとして描いていること。未来＝未知だからこそ拭えない恐怖や不安、孤独の存在を認め、肯定していること。この2点が今回紹介した9曲の共通点だろう。その上で、草木が芽吹き、花を咲かせるイメージに青春性を見出すSUPER BEAVER、SHE'S（SHE'S「Super Bloom」の歌詞に登場するウォールフラワーは、Mrs. GREEN APPLEも過去曲で扱っていたモチーフだ）、真っ白な紙を未来に見立てるBIGMAMA、羊文学、Chilli Beans.、水中に沈むイメージに自己追求のイメージを重ねるOmoinotake……と、バンドごとの違いが出ているのが面白い。各曲の特色に着目しながら、あなたの心に馴染む青春ソング／エールソングを見つけてみてはいかがだろうか。

※1：https://natalie.mu/music/pp/wacci03

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