Devil ANTHEM.、メジャーデビュー以降の進化 上田剛士提供曲で呼び起こされた“泥臭さ”とは

 今年5月にシングル『ar』でメジャーデビューし、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2023』ではメインステージに出演し好評を得たDevil ANTHEM.。早くも10月10日にリリースとなった2ndシングル『GOD BLESS YOU!!』の表題曲は、上田剛士(AA=)をプロデューサーに迎え、高速ビートが駆け回り、ノイジーでアグレッシブなハードコアサウンドとポップなメロディとのコントラストが、5人の新しい魅力を引き出す1曲となっている。まさにグループのキャッチコピーである“Make Some Noise”をフルボリュームで伝える曲であり、また正統派アイドルというだけではない遊び心で、これまでのイメージも打ち壊す一撃になっていると思う。

 もう1曲の「モンブラン TO GO」は、ハイブリッドな“デビアンサウンド”をノリよくアップデートした曲で、こちらもライブで大合唱の曲になりそうだ。今年12月にはTOKYO DOME CITY HALLで、結成9周年記念ライブ『Devil ANTHEM. 9th Anniversary ONE MAN LIVE』が開催となるが、今回のシングルで新たなファンの広がりも期待できる。デビューからの時間を振り返りながら、最新作『GOD BLESS YOU!!』の制作について、そして今のDevil ANTHEM.が見据えることについて5人に話を聞いた。(吉羽さおり)

「アイドル界を盛り上げていけるようにっていう意識は高くなった」

――メジャーデビューから(取材時点で)約3カ月ほど経ちましたが、Devil ANTHEM.にとってどんな時間でしたか。

竹本あいり(以下、竹本):あっという間でした。

竹越くるみ(以下、竹越):5月31日にメジャーデビューして、デビューシングル『ar』のプロモーションやリリースイベントがあって、すぐに夏がスタートして。アイドルにとっての夏って本当に大切なんです。夏フェスがあったりとか、夏にどれだけ成長した姿を見せられるかで、その後のグループの人生が決まるので。怒涛の夏を過ごして、やっと9月に入ったという感じでした。本当にあっという間だったんですけど、濃密な3カ月間という感じでした。

――メジャーデビューをして初めての『TIF』もありましたね。

竹本:今回はメインステージに出させていただいたんです。1時間の尺をもらって、そこで私たちの主催対バンイベント『でびぱっぱ夏祭』をTIFバージョンとして持ってくることができて。いつも対バンしてもらっているアイドルさんやお世話になっているアイドルさんに出てもらって、私たち今、こういう感じでアイドル界を盛り上げられるように頑張ってるよっていうステージにすることができました。他のアイドルさんにも「メジャーデビューしてすごいね」って言ってもらえて、メジャーデビューしたからこそのプレッシャーも感じましたけど(笑)。アイドル界をしっかり盛り上げていけるように、貢献していかなきゃいけないなっていう意識はすごく高くなりました。

安藤楓(以下、安藤):ここ数年の『TIF』のメインステージは屋外ではできなかったんです。外のメインステージにはずっと憧れがあって、それがやっと実現できて。私自身、昔お客さんとして『TIF』を観に行って初めてメインステージで好きなアイドルさんを観た時から、このステージに立ちたい! ってずっと思っていたんです。そこにDevil ANTHEM.が立てて本当に嬉しかったんです。

――その憧れのステージに自分で立ってみて、見える景色は違いましたか。

安藤:違いましたね。でも、自分が思っているよりもなぜか狭く感じたというか。自信を持って立てたからこそ、今まですごく広く感じていたものがちょっと狭く感じられたのかなって思います。

――デビューをして何かグループ内での変化はありますか。

橋本侑芽(以下、橋本):『Devil ANTHEM. SPRING TOUR 2023 FINAL 東京公演「晩春到夏~春終わり夏来たる日~」』のファイナルのZepp Shinjuku公演で、12月29日に行われる結成9周年のワンマンの会場(TOKYO DOME CITY HALL)が発表されたんです。今までで一番大きな会場になるので、さらに気を引き締めていかなきゃなって思いましたし、もっともっとワンマンに向けてパフォーマンスも成長させたいっていう意識が高まったなと感じます。

水野瞳(以下、水野):今までもそうだったんですけど、メジャーデビューしてファンの人たちと一緒にいる時間をさらに大切にするようになりました。よく「一体感を大事にしてます」と言うんですけど、この夏を駆け抜けて、さらにその一体感を大切にしようとしていたなって気づいたというか。デビューしてからは、口にしたことをちゃんと実現させようっていう意思が強くなりました。

――そうしたいい状況の中で、2ndシングルがリリースとなります。今回の「GOD BLESS YOU!!」は上田剛士さんが作曲・プロデュースを手掛けた曲となります。今までのDevil ANTHEM.にはないヘヴィでアグレッシブなサウンドでインパクトが抜群ですが、曲が届いた時はどんな印象でしたか。

竹越:まず「すごい方に曲を作ってもらったぞ!」ってプロデューサーがかなり意気込んでいたので(笑)。レコーディング前からプレッシャーはありましたね。今回レコーディング前に初めて、どのくらいのキーで歌ったらいいかっていうキーチェックをしたんです。まだ歌詞も入っていない、「ラララ~」で歌う感じだったんですけど。その時に〈神さま〉っていう単語だけが入っていたんです。まだデモも届いていなかった段階でしたけど、直感的に尖ってる曲だなって思って。デモが送られてきた時に改めて歌詞を見て、やっぱり尖ってるなって思いました。「ar」がすごく素直な曲だったからこそ、私的には「GOD BLESS YOU!!」は反抗期な感じがあって。

――反抗期ですか。

竹越:私たちは10代をDevil ANTHEM.に捧げてきたんですけど。10代ってちょっと自分を守るために尖ってみたり、だけどすごく弱い部分もあって親に頼ったり、大人の言葉を信用したりする感じがあって。この曲は、サビで〈神さま、お願い〉ってすがっている部分があるんですけど、逆に〈偉ぶんな!〉とか反抗的な言葉も入っていて。これまでは、私たちの素直な部分やかわいい部分を出した曲が多かったので、今回は2ndシングルとして出すには尖っていますけど、等身大で若い私たちの曲だなっていう印象がありました。

竹本:個人的に、上田さんが作ったBABYMETAL「ギミチョコ!!」の映像とかをよく観ていたんです。さっきプロデューサーさんが意気込んでいたっていう話があったんですけど、曲を聴いた時にプロデューサーさんに、「この曲の感じって『ギミチョコ!!』に似てないですか?」って言ったら、「そうだ言うの忘れてた。この曲は上田さんが作ってくれたんだよ」って後から言われたんですよね(笑)。興奮して伝えるの忘れてたみたいで。やっぱりそうなんだと思って、嬉しかったですね。そこからは、上田さんがこの曲で表現したい世界観を汲み取れるように、頑張ってレコーディングに挑みました。

Devil ANTHEM./ 「GOD BLESS YOU!!」 MV

「今までのDevil ANTHEM.だったら出ない歌い方」

――こういうヘヴィなサウンドは普段聴いたりするんですか。

竹本:私は結構聴いてます。大好きな特定のアーティストをずっと聴くというよりは、いろんなタイプの曲を聴くので。海外のアーティストやフェスの映像をYouTubeで観たりもするんですけど、最初にこの「GOD BLESS YOU!!」を聴いた時に思ったのが、海外のフェスでいろんな国の方が頭を振ってノってるイメージで。今までのDevil ANTHEM.にない感じだし、みんなついてこれるかなって思ったんですけど(笑)。新たな風としてフロアの反応が楽しみです。

安藤:私は普段聴くタイプの音楽ではなかったので、これをどう歌えばいいのかなって悩みました。レコーディングの時に上田さんからは、「自分の思うように、自由に歌っていいよ」って言われることが多かったんですけど。なかなか自分の正解が見つからなくて、苦労しました。でも完成した音源を聴いた時に、私たちの声が入るとデモとはまた違った雰囲気になるんだなと思って。これからも研究を重ねて、もっと完成に近づけられたらなって思いました。

水野:「GOD BLESS YOU!!」を聴いた時、なんでこんなに神秘的なんだろうと思って。今までのDevil ANTHEM.の曲にも鍵盤が入っていて、鍵盤といえばピアノ的な音色が多かったんですけど、「GOD BLESS YOU!!」は途中でオルガンっぽいすごく神聖な音色が入っていて。それがサウンドの特徴になっているんだなって気づきました。レコーディングの時点では、この神秘的な曲に自分の声を当てた時にどうなるんだろうって怯えながらやっていたんです。上田さんも「自由に歌ってみて」という感じでもあったので、自分が思う「これかな?」っていう歌い方をいろいろやってみた中で、「いいんじゃない?」って褒めてくださったり、「じゃあ次はこういうのもやってみない?」って自分の中にはなかった歌い方を提案してくださって。今までのDevil ANTHEM.の曲だったら出なかった歌い方でもあるなって思います。

――レコーディングでは自由に歌う反面、細やかにボーカルのディレクションが入ることもあったんですね。

竹越:サビ以外がラップっぽい雰囲気なんですけど、そこはちょっと「アイドルっぽく」みたいな感じで言われた気がします。

安藤:「かわいくやってみて?」とかね。

竹越:かっこいい曲なので、みんなかっこよく歌う準備をしてレコーディングに臨んだんですけど、結構「かわいく」「アイドルっぽく」「テンション高めに」っていう感じだったのが意外でしたね。

橋本:私は「ここはかわいく歌ってほしい」とか要望があってやりやすかったです。〈偉ぶんな!〉という歌詞のところで反抗的に歌ってみたら、「いいね」って言ってもらえて。いいところはちゃんといいねと言ってくださったり、「ここはこういうふうに歌ってみたら?」とかアドバイスもしてくださって。最初はもしかしたら怖い方なのかなって思っていたんですけど、全然そんなことなくて優しい方で安心しました(笑)。

――先ほど、反抗期的な歌詞の雰囲気もあるという話がありましたが、歌詞を作る時はメンバーと作詞家の方とやりとりはあるんですか。

竹本:一切ないんです。

竹越:自己紹介ソングの時だけ、初めてアンケートみたいなものがあったんですけど、曲作りや、衣装、振り付け、ステージの演出や照明に関しても、私たちがイチから関わることはないんです。でもたぶん、不満があればすぐに言っちゃうと思うので、そこはすごく安心してスタッフの方にお任せしてる部分でもありますね。

――それでいて、これまでの曲もそうですがDevil ANTHEM.の歴史を刻んでいく歌になっていますよね。これが今の5人の心境なんだろうなとか、見えている景色が今変わってきてるんだろうなとか、そういったことが歌詞に織り込まれていて。

竹越:そうなんです。なんでこんなにわかるんだろうって思うことが多くて。デビューシングルの「ar」も、なんで今の私たちの心境がわかるんだろうって驚きがありましたし、すごいなって。

関連記事