今年も残り約3カ月。年末までの総仕舞をそろそろ意識する頃だが、来年3月の年度末を大きな区切りと見るとちょうど折り返し地点ともなる。そんな節目でもある故か音楽シーン、中でもややローカルなVOCALOID界隈でも様々な動きの多いこの時期。今回はジャンル内に留まらず、多彩なジャンルに跨って大きな動きを見せるボカロP提供の近作をピックアップ。VOCALOIDの音楽がいかに現在の日本のカルチャーで、大きな存在感を放つものかを感じさせる作品群となっている。

DECO*27「ボルテッカー feat. 初音ミク」

　直近でもっともVOCALOIDの躍進を感じた企画といえば、やはり「Project VOLTAGE」だろう。“ポケモン feat. 初音ミク”と冠に銘打たれたとおり、今や世界に愛されるコンテンツであるポケットモンスターと初音ミクのコラボは、両者のブーム期を通過してきた人々にとってはこれ以上ない“神企画”に違いない。ポケモン18タイプになぞらえた初音ミクビジュアルの解禁と同様に、18人のクリエイターによるVOCALOID楽曲の制作も今回明らかに。シーンでも初音ミク愛に定評のあるDECO*27による、細部に渡るまでツウなポケモン愛が詰まった本作は、まさに本企画に相応しいトップバッター楽曲ともいえる。

そらるとりぶ「ユウマガドキ」（煮ル果実 楽曲提供）

　10月初旬はアニメ・ドラマ等のクール入れ替え時期にもあたる。2023年秋クールからも様々な注目作アニメの放映が始まるが、そのラインナップの中でも一際異彩を放つのが漫画家・佐野菜見原作による『ミギとダリ』だ。麗しい双子の青年が素性を隠し、一人の青年として復讐を企む本作。ミステリーをベースとしつつもどこかシュールなムードを孕む今作の主題歌として、シーンでも独自の世界観を展開する煮ル果実の起用はこれ以上ない適任といって差し支えないだろう。歌唱は共に歌い手出身、10年来の盟友ともなるそらるとりぶ。現在はシンガーとしても確かな実績を積み上げている両者のハーモニーも必聴だ。