『ハリー・ポッター』『スター・ウォーズ』……名曲を惜しみなく披露 ジョン・ウィリアムズ、30年ぶり来日公演は新たな伝説に
続いて、『ハリー・ポッター』より「ヘドウィグのテーマ」「不死鳥フォークス」、そして「ハリーの不思議な世界」の3曲。世界中の誰しもが耳にしたことがあるであろう、有名なワルツがチェレスタで静かに鳴らされ、一気に我々をホグワーツの世界へと導く。現実の世界から、ファンタジーの世界へ。ジョン・ウィリアムズの指揮棒は、まるでハリー・ポッターの杖のように魔法をかけてしまう。気がつけば演奏者たちの動きと同期するかのごとく、筆者の体もスウィングしていた。
そして、哀切に満ちたバイオリンの音色が胸を打つ「シンドラーのリストのテーマ」が演奏されたあとは、怒涛の『スター・ウォーズ』祭り。『最後のジェダイ』で印象的に使われていた「レベリオン・イズ・リボーン」、ただただ圧倒的に美しい「王女レイアのテーマ」、そして「王座の間とエンドタイトル」というつるべ打ち。ジャーン! と金管が一斉に鳴り響くファンファーレがホールを埋め尽くした瞬間、稲妻に打たれたかのような衝撃が走った。そして、ジョン・ウィリアムズが自曲を指揮する瞬間を、この眼で目撃できた喜びに身を浸らせた。
アンコールでは、「ヨーダのテーマ」「レイダース・マーチ」、そして「帝国のマーチ」を披露。ジョン・ウィリアムズがマイクも使わずに、「(次は)インディ・ジョーンズだよ」「ダース・ベイダーだよ」と次の曲目を聴衆に語りかけていたのが印象的だった。なんて気取らない人柄なのだろう。鳴り止まない拍手に何度も応え、最後は両手を合わせて“お休み”のポーズをとり、観客に手を振って舞台を去っていった。「もうお爺ちゃんだし、眠いので拍手に応えるのはこれが最後だよ」という意味なのだろう。何ともはや、チャーミングである。
筆者は少年時代に『未知との遭遇』(原題『Close Encounters of the Third Kind』=“第三種接近遭遇”)という作品に出会ったことで、映画という魔物に取り憑かれてしまった人間である。そして遂に、その音楽を手がけたジョン・ウィリアムズと第三種接近遭遇を果たしてしまった。このコンサートは自分にとって、マザーシップがデビルズタワーの上で一回転するくらいの衝撃。映画の神様、本当にありがとうございました。
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を手がけたあと、実は引退するという噂も流れていた。だが、スピルバーグとの対談で、「(スピルバーグの)父親は、102歳になっても働いていた(実際は99歳か100歳だという)。それは、スティーヴンが僕に期待していることなんだ」(※1)と、現役続行を明言。100歳になるまでは仕事をする気満々のようである。願わくは、近い将来ジョン・ウィリアムズが再び日本の地を訪れんことを。
May the force be with you, John Williams !
※1:https://www.cinematoday.jp/news/N0134719
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