I Don't Like Mondays.『ONE PIECE』主題歌とツアーで得た自由 『RUNWAY』新曲群を語るセルフライナーノーツインタビュー

「年齢と共に角が取れたのかもしれない」(YU)

――そのみなさんの新しいモードをすごく表しているのが、今回入っている新曲たちだと思います。新曲は5曲入っていますけど、どれも素直に自分たちがやりたいことや自分たちのなかにあるものを出している曲たちだなと。一曲ごとに伺っていきたいんですが、まず「Summer Ghost」。まさに80'sっぽいニュアンスの曲ですが、これはどんなふうにできていった曲なんですか?

KENJI:これは「Beautiful Chaos」みたいな曲調の曲を作ろうと思って始めたんです。でも全然違う、思わぬ方向のトラックができて。これを進めるか、やっぱりもともと作ろうとしていた方向でやろうかって迷った時に、今までだったらもともと作ろうとしていたものをちゃんと作ろうとしていたと思うんですけど、その時はノリで――別にそんな時間に余裕があるわけでもないのに(笑)、「これいい感じだからやってみよう!」と思って適当にメロをつけて、本当に30分くらいで完成したんです。僕らもあんまり意識した気合いを入れずに作ったのが逆によかったかなと。

KENJI:スッとできて、それでみんなが「いい!」と思うのも珍しいなって。だったら入れようよ、みたいな。

SHUKI:そこからは大変だったんですけど(笑)。

YU:大変さが、今までとは種類の違う大変さだった。

Summer Ghost (Lyric Video)

――すごくいい意味でのバンドの手癖というか、すり込まれてるものでやっている感じがして、それでこれだけ開けた曲になるっていうのがおもしろいなと思いました。歌詞は切ないですよね、夏の終わり感というか。

YU:そうですね、僕らの得意技というか。僕自身も、夏は「ただ楽しい」と単純には思わない人間なので、日本的な夏の儚さみたいなものを入れました。

――この曲だけじゃなくて、今回YUさんが書かれている歌詞ってすごくロマンチックというか、切なさとかセンチメントが全開になっている感じがしたんですけど。

YU:ドロドロしたものは前に出し切ったのかな(笑)。ディスク2に入っている曲たちまでで(ドロドロしたものは)出し切って、そのあとは結構素直に書いていましたね。

――「Umbrella」で〈皮肉で溢れていた世界も/優しさ身に纏っていくんだ〉と歌っていますけど、少なくとも前作くらいまでは〈皮肉〉もYUさんの歌詞の重要な要素だったと思うんですよ。でも、今はそうではなく、〈優しさ〉のほうへ向かうというのは、今作を通じて感じるところだなと。

YU:角が取れたのかもしれない、年齢と共に。

KENJI:それはあるかもね。

YU:歌詞って限られたなかでいかに広げていくかという作業なので、ただ自分が思いついたものだけで何枚もアルバムを作るのには限界があるんです。だから、『Black Humor』の時に日本の音楽から学んだように、歌詞も何か(日本の慣習的なものから)盗めないかなと思っていろいろ聴いたりして。そういう時期を経た自分から出てくるものは何なんだろう?と考えながら作ったので、これまでだったら文字数を埋めるのに精一杯だったところが、そういう意味ではポンポン思いつくというか。得たもののなかから選ぶ作業になったので、それは変わったなと思いました。

――続いて「Beautiful Chaos」。先ほどチラッと話に出ましたが、これも新鮮というか、おもしろい曲ですね。

SHUKI:これは「ライブ最後の曲にしたい」っていう――。

KENJI:そういうタイトルから始まりました(笑)。

YU:しばらくずっとそのタイトルだったよね。

KENJI:でも、結構苦労したよね。というのも、ライブの最後にやる曲がほしいと言って、最終的に完成したのはこの曲なんですけど、2、3曲、別パターンで作ったんです。今の僕らがやるべきで、やったほうがいい「ライブで映える曲」って何なんだろう、その要素は何だろうっていうところから話し合ったりして。当初は曲頭からインパクトを出そうとかいろんなことをやってみたんですけど、そういう目的が最初にあるよりも、感覚でいいと思うものを繋ぎ合わせて曲にしていこうとなって。そうやってできた曲なので、今までの僕らだとやらなかったような感じの曲になったなと思います。

SHUKI:複雑だもんね、この曲の構成。最後はサビが逆になったりとか、同じメロなのに違う進行だったりとか、後半にかけていかにダイナミクスを大きくしていくか、みたいな作業だったんですよ。

YU:これは(アルバムのなかで)最後に作ったんですけど、長く歌える曲にしたいなと思って。でも、去年だったらこういう歌詞には絶対なっていないと思うんですよね。サウンドの影響は歌詞を書くうえではデカくて、最後にバンドが盛り上がるところがデモの段階からあって「これはカオスだな」みたいに思って。「カオス」と言うとちょっとネガティブな印象だけど、「なんかきれいだな」と感じたんですよね。そのカオスな感じを歌にできないかなと思って、「Beautiful Chaos」というタイトルになりました。〈This love is beautiful chaos〉=「このラブは美しいカオスだ」って書いているんですけど、そういうフレーズから書いていきましたね。

――その部分、〈This love is beautiful chaos/Don’t wanna close my eyes/そう何度も僕は歌うよ 君の隣で〉というところはすごくJ-POP的だとも思うし、とくに〈何度も僕は歌うよ〉というフレーズを日本語で歌うのは重要なことだったんじゃないかなと思うんですよね。先ほどおっしゃったように、歌詞の書き方が広がった部分のひとつなのかなと。

YU:その部分はレコーディングの時までは英語だったんですよ。でも、メンバーから「日本語でもいいかもね」って言われて、スタジオでその場で考えて、歌ってみたら意外としっくりくるなと思って。逆に効いている感じがすごくよかった。

――そのメッセージも含めて、まさにライブで盛り上がりそうですよね。

YU:そうですね。「最後の曲」って言いつつ、最後の曲になるかどうかはわからないですけど(笑)。野外とかでもやりたい曲だなと思います。

――そして、今回もゲストプロデューサーが参加しています。「Strawberry Night」はESME MORIさんが参加していて。今のポップシーンを切り開く気鋭のプロデューサーですが。

KENJI:昔「ENTERTAINER」っていう曲で初めてご一緒させてもらって以来なんですけど、僕とYUが(ESMEくんと)同い年で、同世代という意味で感覚も近いんですよね。最初にやった時に個人的に衝撃だったのは、それまでやらせていただいた他のプロデューサーさんのことは「ここがすごい」とか「ここが特徴」というふうにわかりやすく言語化できる方が多かったんですけど、ESMEくんのすごさって僕は全然言語化できなくて。「すごくいいんだけど、何がいいのかよくわからない」みたいな感覚だったんです。

SHUKI:わかる。

KENJI:でも、今のトレンドの音楽シーンのいちばん近いところにいるプロデューサーだと僕は勝手に感じていて、逆に言うと、僕らがあまり持っていない感覚を持っているプロデューサーの方だと思ったんですよね。そういう人とまたやりたいと思って。制作としては、この曲は別にこのアルバムに絶対入れると最初から決めていたわけではなくて、作った数あるなかのひとつだったんですけど、これはESMEくんがすごく合うなと。今の時代感に合った曲をやってみたいという気持ちもあったので、ESMEくんを誘わせてもらって、一緒にやることになりました。

ENTERTAINER (Music Video)

――“I Don't Like Mondays.らしさ”と“ESME MORI”らしさがちょうどよくハイブリッドになった感じの曲ですよね。ドープな感じもするんだけど、でもなんか抜けがいいよね、みたいな。

YU:彼と組まなければそうはならなかったと思います。大好きな曲になりましたね。

――歌詞はどうですか? 女性目線で書いていますが。

YU:そう、ESMEくんとやる曲はなぜか女性目線になるんですよ(笑)。だけど、この歌詞はそんなに悩まなかったですね。「言いたいことは別にないな」というふうに感じて、それをそのまま書いた(笑)。そこから、「なんで言いたいことがないのかな?」と思ったことを広げて書いていきました。

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