布袋寅泰、提供楽曲に表れるギタリストの枠を超えた作家性 井上陽水、藤井フミヤ、亀梨和也ら手がけたコンポーザーとしての歩み

 亀梨和也が8月18日にリリースする2ndシングル表題曲「Cross」は自らの作詞に加え、布袋寅泰作曲ということで大きな話題となっている。

 イントロから咽び泣くギターフレーズと煌びやかなホーンセクションが猛り狂う。一聴してすぐに感じる布袋らしいアレンジメント。ソリッドなバッキングもあでやかなソロも、どこをとってみても布袋ファン歓喜のサウンドプロダクトだ。そんなゴージャスなサウンドに堂々とした大きなメロディが乗るところまでも布袋節。30代後半に差し掛かり大人の色香を纏った亀梨の艶のある歌声が勇ましく響く。亀梨×布袋による奇跡のコラボ、両者がせめぎ合うワイルドかつエレガントなロックナンバーである。

亀梨和也「Cross」

 布袋の長年のメインギターであるZodiac Works TEを抱えたMVも注目だ。布袋も「亀梨和也さん。Cross。カッコいいね!僕のギターも喜んでます。」とX(Twitter)にてコメントしている。

 昨年2022年にはアーティスト活動40周年、そして還暦を迎えた布袋。ソロアーティストであり、ギタリストでもありながらボーカリストでもある。BOØWY、COMPLEXと伝説のバンドでの活動、ソロとしても数多くのヒット曲を産み、シーンを駆け抜けてきた。そして、嵐「心の空」(2015年)、TOKIO「愛の嵐」(1999年)、韓国のアイドルグループINFINITE「Dilemma」(2014年)など、国内外さまざまなアーティストへの楽曲提供でも数多くの楽曲を世に送り出してきた。

 布袋の他アーティストへの楽曲提供のキャリアの原点といえるのは、やはり山下久美子だろう。初めてBOØWY以外で全面プロデュースを行なったアーティストだ。1985年リリースのアルバム『BLONDE』にギタリストとして参加以降、『1986』(1986年)、『POP』(1987年)、『Baby alone』(1988年)と、“ロックンロール3部作”を作り上げ、楽曲制作&プロデュースワークスの手腕を開花させている。

 山下久美子「リリス」(1987年)はアルバム『POP』からの先行シングルであり、布袋の十八番ともいえるハンマリングオン&プリングオフで作られたギターのキャッチーなフレーズといい、異国的かつオリエンタルな雰囲気を持ったアレンジといい、布袋ワークスの代表作としてファンから絶大な人気を誇る曲だ。

 元々布袋はスタジオミュージシャンとしての活動も勢力的に行なっており、BOØWYブレイク前にあたる1985年から86年にかけては数週間に1枚、ギタリスト&プロデューサーとしての何かしら布袋ワークスの作品が世にリリースされていたほどである。

 代表的なところでいえば、泉谷しげるのサポートをはじめ、PINK『PINK』(1985年)、中島みゆき『miss M.』(1985年)、吉川晃司『MODERN TIME』(1986年)、大沢誉志幸シングル『クロール』(1986年)、松岡英明のデビューアルバム『Visions of boys』(1986年11月)はホッピー神山との共同プロデュース……といった、幅広いアーティストの制作に関わっている。シンセサウンドを交えたニューウェイブテイスト溢れるトリッキーなギタープレイから、心地よくハネたファンクのリズム、華やかなホーンアレンジなど、BOØWYでは聴けないような幅の広い音楽性を垣間見る。中でも、ホーンに関してはBOØWYのオリジナルメンバーにサックスが居たほど、布袋の音楽には管楽器の響きが重要だった。また、BOØWYはメロディ楽器、コード楽器が布袋1人であるためにエフェクトを多用するなど、ギタリストとしてのプレイスタイル、表現方法でそのサウンドアレンジの幅を持たせている。

 BOØWYではノントレモロのギターをメインにしていたが、それ以外のワークスでは大きなアーミングプレイを聴けることも大きな特徴であった。その代表的なものは、“王蟲”だろう。布袋がギターで王蟲の鳴き声を担当した、劇場アニメ『風の谷のナウシカ』のサウンドトラック「王蟲の暴走」は1984年の作品である。

 ソロ活動を本格派させた90年代は、ロック色の強いアーティストへの楽曲提供が目立つ。花田裕之『Riff Rough』(1990年)、『OPEN YOUR EYES』(1994年)をプロデュース。藤井フミヤ『R&R』(1995年)に参加、シングル「ハートブレイク」をプロデュースしている。意外なところだと、井上陽水のアルバム『九段』(1998年)収録の「アンチヒロイン」を手がけている。

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