月詠み、アニメやゲームと結びつきながら支持を広げる理由 1st EP前に知っておきたい“ストーリーを紡ぐ音楽表現”
月詠みが9月20日に1st EP『アナザームーン』をリリースする。本作には、TVアニメ『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する~レベルアップは人生を変えた~』(TOKYO MXほか)のオープニング主題歌「逆転劇」をはじめ、7月に発表された新曲「救世主」や、すでにライブでも披露されている「花と散る」など計7曲が収録される。発売を機に、月詠みにさらに大きな注目が集まりそうだ。
そもそも月詠み(読み:つくよみ)とは、ボカロPとしても活動するユリイ・カノンがメインコンポーザーを務める音楽プロジェクト。作品によって様々なクリエイターと共に物語や音楽を発信し、これまでに2つのミニアルバム『欠けた心象、世のよすが』(2021年)、『月が満ちる』(2022年)をリリースしてきた。唯一の固定メンバーであるユリイ・カノンはボカロシーンで絶大な人気を誇るプロデューサーで、2017年にYouTubeの公式チャンネルに投稿された「スーサイドパレヱド」の再生回数は770万回以上(2023年8月上旬現在)。また、2018年に発表された「だれかの心臓になれたなら」の再生回数は現在5,000万回(2023年8月上旬現在)を突破するなど、圧倒的な支持を集めている。緻密かつ激しいバンドサウンドと、退廃的でありながらも繊細さを併せ持った文学的な歌詞が特徴で、その唯一無二の音楽性が月詠みの世界観を支えている。
月詠みは、アニメやゲームなどのカルチャーと相性が良い。先述した「逆転劇」のほか、「救世主」はTVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』(TOKYO MX、MBS、BS11ほか)のオープニング主題歌で、「夢と知りせば」はスマホゲーム『ドラゴンネスト2:エボリューション』のテーマソングに起用されており、また本作以外にもアニメ作品やゲームなどとタイアップを実現させている。こうした他作品との親和性を生んでいる理由の一つが、ストーリー性を持った楽曲のスタイルにある。
物語を音楽にするYOASOBIやヨルシカのように、月詠みもまた音楽と物語が相互に関係し合った表現を特徴としている。とりわけ月詠みは、楽曲から物語を紡ぎ出す特有の表現方法を特徴としており、2ndミニアルバム『月が満ちる』で完結した“1stストーリー”をライブで表現した『Story Live「だれかの心臓になれたなら」』(2022年10月)を開催したこともあった。このライブでは、ボーカルを担当したYueとSERRAがそれぞれ作中に登場する人物のユマとリノを演じ、ステージ上でそのストーリーを展開。こうした音楽と物語が密接に結びついた活動を行っているため、月詠みの作品はアニメやゲームといった映像的なカルチャーからも熱い視線を浴びているのだろう。