女性アイドル自己紹介ソングの魅力とは? メンバーとプロデューサーの目線が合わさって見えるキャラクター像

 7月19日に=LOVEが14thシングル『ナツパトペ』をリリース。その中でもType Bに収録されているカップリング曲で、=LOVEにとって初の「自己紹介ソング」である「ヒロインズ」が話題になっている。歌詞のなかにはメンバーの名前が登場。佐々木舞香は〈歌・面・色・愛 パーフェクト〉、音嶋莉沙は〈イコラブの公式彼女〉、大場花菜は〈ハイトーン飾る 溢れる スマイル〉、野口衣織は〈努力型天才パフォーマー〉、瀧脇笙古は〈何でもチャレンジ アクティブGirl〉、髙松瞳は〈笑顔イチコロ 僕らの太陽〉、齋藤樹愛羅は〈甘美なエンジェル デビルの誘惑〉、山本杏奈は〈Here we are! うちらのリーダー〉、諸橋沙夏は〈魅惑のボイスに誰もがトリコ〉、大谷映美里は〈メイクにファッション 華がある〉という風に、それぞれの特徴や役割なども添えられている。作詞を担当したのは、グループのプロデューサーである指原莉乃とメンバーたち。同曲は、そんな両者の視点が混じり合っていることが大きなポイントとなっている。

 指原のアイドルプロデュース術の肝は「ファンがなにを見たいのか」。主観的ではなく「外側からどのように映っているか」を重要とした他者の視点がある。一方、メンバーたちは、指原ら“オトナ”がいない場面で見せるそれぞれの素を知っているはず。「内側から見ると自分たちはどうなのか」など誰よりも主観的になることができる。

=LOVE(イコールラブ)/ 14th Single c/w『ヒロインズ』【MV full】

 同曲の歌詞の魅力は、偏ることなく両側の視点から各メンバーについて語られている部分だろう。しかも自己紹介ソングではあるが、「私はこういう人間です」と自己申告しているのではなく、指原、ほかのメンバー、ファンなどから見た「自分像」が描かれている。つまり「このメンバーって、こういう人だよね」と、みんなでそれぞれの「良いところ」をピックアップして作ったように聞こえるのだ。もしかすると曲を作っているなかで、それぞれが「新しい自分」に気づくこともできたのではないだろうか。

 女性アイドルの自己紹介ソングはファンの人気も高い。ライブ時は自分の推しのパートで盛り上がるのが定番だ。また、初見であっても自己紹介ソングでグループやメンバーについて把握することができる。

 一方で運営側としては、自己紹介ソングの制作はリスキーな部分もある。多くの女性アイドルは卒業、脱退、加入などメンバーの入れ替えがきわめて目まぐるしく起きるからだ。そのときに在籍しているメンバーに合わせて自己紹介ソングを作っても、メンバー数が増減したらその曲は使えなくなる場合がある。もちろんアレンジを効かせて歌い続けることはできるが、それでもやはり、自己紹介ソングの制作に踏み出すには決断力が必要となる。

【ももクロMV】Z伝説~終わりなき革命~ / ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z/Z DENSETSU -OWARINAKI KAKUMEI-)

 その点では、ももいろクローバーZはかなり異例だ。5人体制時には「Z伝説 ~終わりなき革命~」(2011年)があったが、有安杏果卒業後は「Z伝説 ~ファンファーレは止まらない~」(2018年)へとアレンジが施され、さらに「あんた飛ばしすぎ!!」(2019年)、「ダンシングタンク♡」(2022年)と自己紹介ソングを量産してきた。

 ももクロの自己紹介曲の作詞はそれぞれ前山田健一、オークラ、只野菜摘、二牟礼卓巳といった作家が手がけているが、=LOVEの「ヒロインズ」同様、プロデューサー&マネージャーの川上アキラ、そしてメンバーの意向も大なり小なり入っているはず。特に「Z伝説 ~終わりなき革命~」では各メンバーのビジュアル面や雰囲気などパッと見で分かりやすい特徴を歌っていたが、このあたりは川上や楽曲制作者・前山田のメンバーの捉え方がかなり反映されているように思える。「Z伝説 ~ファンファーレは止まらない~」は当時のグループが置かれていた状況とメンバーのメンタリティがあらわれていたが、ここでも“オトナ”側のカラーが強く感じられた。ただ「~終わりなき革命~」からの成長や変化が綴られた「あんた飛ばしすぎ!!」、メンバーの“今”が投影された「ダンシングタンク♡」は、川上や楽曲制作者の視点もありながら、メンバー直々から吸い上げられた要素が濃く感じられる。4曲はそれぞれ、“オトナ”側の目線、メンバー側の目線などいろいろな角度から「自己紹介」を楽しむことができる。

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