あいみょん、中村佳穂、幾田りら、アイナ・ジ・エンド……声優としても活躍を広げる女性シンガーたち

 現在、大ヒットを記録中の映画『君たちはどう生きるか』。宮﨑駿監督による10年ぶりの新作である今作は、公開前のプロモーションが一切行われず、さらに、あらすじやキャストさえも公開日を迎えるまで伏せられていた。そして公開日当日、米津玄師が主題歌「地球儀」を手掛けたことが明かされ、同時に、木村拓哉、木村佳乃、菅田将暉、柴咲コウをはじめとした俳優陣が声優として参加していることも明らかになった。

 そうしたキャストの中に名を連ねているのが、シンガーソングライターのあいみょんだ。彼女は2019年、自身が主題歌を提供した『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』に本人役で出演したことはあったが、本格的な声優デビューは今回が初めてとなる。あいみょんの起用は大きなサプライズの一つではあったが、この数年、アニメ映画にミュージシャンが声優として参加するケースは増えていると言えるだろう。

 最も象徴的な例が、2021年に公開された細田守監督の映画『竜とそばかすの姫』だ。今作において、主人公・すず(内藤鈴)/ベル役に大抜擢されたのが、シンガーソングライターの中村佳穂だった。彼女は劇中歌の歌唱、および作詞などの制作にも携わっている。この映画においては、歌が物語の核心を担う大切な要素となっているため、彼女が果たした役割は大きく、初めて挑戦した声優としての演技も素晴らしいものだった。

millennium parade - U

 細田監督は、中村がオーディションに来た時のことを、次のように振り返っている。

「歌が上手いのはわかっていたけど、芝居をやってもらったらものすごい表現力があってみんなびっくりしちゃったっていう(笑)。芝居をやっている人ではないから、芝居の訓練でそのスキルを上げた、みたいなものではないわけです。もともと持っている表現力、歌を表現する力を芝居にもあてはめてみた、という時の表現の生々しさみたいなものがあって、これはもう中村さんしかいない、ということになったんです」(※1)

 ただ、中村は、初めてのアフレコの現場に戸惑うこともあったそう。はじめは、他の共演者に気を遣い、相手が喋る時は息を止めていたが、そうすると会話の間が分からなくなってしまったという。

 彼女は、そうしたアフレコの体験について次のように振り返っていた。

「だから途中からは相手の邪魔になることやミスを恐れることなく、相手の台詞が始まって自分の番になる少し前から呼吸を始めて自然に台詞を言うようにしました。音楽と同じで、ジャズのようにその場にいる人たちでセッションするように台詞の掛け合いをしていくほうが結果的に上手くいくんだなというコツを掴むことができた気がします」(※2)

 この「ジャズのように」という方法論は、まさに彼女のミュージシャンとしてのプレイスタイルに通じるもので、アフレコにおいても彼女の真価が発揮されていたことがよく伝わってくるエピソードだと思う。

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