YONA YONA WEEKENDERSが掲げるカウンター精神 今こそ届けたい“自由”の肯定、原田郁子とのコラボ秘話まで語る
最近、いろいろな場でYONA YONA WEEKENDERSの名前を目にする機会が増えたという人はきっと多いのではないかと思う。年明けの『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)では、いしわたり淳治が「考え中」を「2022年の年間マイベスト10曲」に選出したことが大きな話題となった。また、先日には『GREENROOM FESTIVAL’23』への出演を果たし、今月には『FUJI ROCK FESTIVAL’23』のWHITE STAGEへの出演も決まっている。そんな今まさに時代の追い風を受けながら走り続ける4人から、新しいEP『into the wind』が届けられた。今まで以上に自由な作風であり、かつ、彼らなりの“カウンター精神”が詰まった楽曲が並んだ今作は、今後の4人の躍進をさらに加速させていくような重要な1枚になるはずだ。YONA YONA WEEKENDERSの現在のモードを色濃く反映した今作について、メンバー全員に話を聞いた。(松本侃士)
「絶対に肯定して終わらせたい想いが常にある」(磯野くん)
――まずはじめに、今のバンドの状況を皆さん自身がどう捉えているのかについて聞きたいなと思ってます。
磯野くん(以下、磯野):まだまだ道半ばとは思いつつも、ただやっぱり去年のツアーの時から、チーム全体の一致団結感をすごく感じているので、この状態をキープして、どんどん次に進めたらいいなっていう気持ちでやっています。
キイチ:メディアに取り上げていただいたり、この後にフジロックも控えていたりするのは、感覚としてはちょっと不思議な部分もあって。ただ僕たちの場合、「なんかやれちゃってるね」ぐらいの感じでいいんじゃないかなとも思っていて。そのぐらいのテンションで、気張らず、とりあえず一つひとつ楽しんでいきましょうみたいな空気感があるので、磯野も言ってるんですけど、今のチーム全体の空気はすごくいいなと思います。
――なるほど。そして今回の5枚目のEP『into the wind』には、5月に配信されたシングル「into the wind」の曲名がそのまま作品名として冠されていますが、この言葉が今作のメインテーマになるという思いは当初からあったんですか?
磯野: 最初は「旅」っていうテーマだったんです。そこから、さっきも言ったみたいに今バンドのフェーズがどんどん変わっていて、いい風が吹いてるっていうところもあって。もちろん僕たちは働きながら音楽をやってるのでバランスを取っていかなきゃいけない難しさもあったりするんですけど、やっぱり「今吹いてるこの風に乗っていこう」「次のステージに行こう」っていう想いだったり、その風に僕たちのファンの方も乗ってもらって、「一緒に大きいステージに行こうぜ」っていう広い意味を込めて、『into the wind』という言葉を今作のタイトルにしました。
――『Into the Wild』という映画はありますが、『into the wind』ってなかなか聞き馴染みがないにもかかわらず、すごく今のYONA YONA WEEKENDERSに合うワードだと思いました。
磯野:ありがとうございます。もともと映画『Into the Wild』をビーソル(小原“Beatsoldier”壮史)が挙げてくれて、そこから着想を得ました。
――既発のシングルがリリースされた順でいうと、昨年12月の「SUI SUI」が最初ですよね。この曲を作る時点では、すでに「旅」「風」といったイメージはあったのでしょうか?
磯野:「SUI SUI」の曲のテーマとしては、コロナ禍によって今までの当たり前が変わっていく中で、例えば、東京一極型じゃなくなったりとか、新しい視点で世の中の価値観がアップデートされていく感覚もあって、僕はそういう変化はコロナ禍における唯一ポジティブな部分かなと思っていて。そこから発展させていきながら、「自由な生き方をしようぜ」みたいなメッセージを込めていった感じですね。
――最後に〈そこに愛があれば/All right!〉という歌詞がありますが、この一言でいろいろな生き方や考え方、価値観を高らかに祝福している、肯定しているなと感じて、すごくグッとくるパンチラインだと思いました。
磯野:自分の中では、絶対に肯定して終わらせたいなっていう想いが常にあって。映画とかも、ハッピーエンドで終わる映画が好きなんですよ。だから、この曲をEPの最後の曲にしようっていうのは、当初から思っていたことですね。
乾杯が定番な4人にとっての1曲目「シラフ」
――それぞれの曲の歌詞については、メンバー間で話し合うことは多いですか?
磯野:どうなんだろう……一応「歌詞できたよ」ってLINEのグループで共有するようにはしてるんですけど。今回、レコーディングの前に滑り込みで歌詞が完成していたのは、「シラフ」「眠らないでよ feat. 原田郁子(クラムボン)」の2曲だったと思います。
キイチ:感覚的な話なんですけど、「あ、これはもう磯野が歌いたい曲だな」って感じた時は、僕はもう味つけはしないようにしてます。フレーズもデモ段階のものをそのまま弾いたり。
――スズキさん、いかがですか?
スズキシンゴ(以下、スズキ):えーっと……。
磯野:こいつはたぶん歌詞見てないと思います。
全員:(笑)。
スズキ:やっぱり、できるだけ彼の気持ちを出してあげたいので。あんまり僕の味つけは――。
小原“Beatsoldier”壮史(以下、小原):嘘だ、嘘だ、嘘だ、一番味つけてるじゃん。
――(笑)。「シラフ」の話が出たので、その流れでこの曲について聞かせてください。ライブ中の乾杯が恒例になっていることが一つ象徴的ですが、YONA YONA WEEKENDERSといえば、お酒というイメージを持つリスナーは多いと思うんです。なので、今回「シラフ」というタイトルを冠した曲が1曲目に入ると知った時は驚きました。
磯野:僕ら去年のツアーからステージに冷蔵庫を置いてライブしたりとか、あとはおっしゃってくれたようにライブ中の乾杯が定番になったりしていて、お酒のイメージがだいぶ強いと思うんですけど、もちろん、お客さんの中にはお酒を飲まない人もいて、今までは、そういう人たちを置いていってしまっているんじゃないかなっていう負い目がずっとあったんです。なので、一度そうした人たちを含めて、みんなのことを肯定する、置いていかないような曲を一発いっときたいなって。
小原:僕たちは、「ツマミになるグッドミュージック」って自分らで言ってますけど、それが浸透してくると、ちょっといい意味で裏切ってみたいなって思うんですよね。そういうカウンター精神はみんな持ってると思うので、1曲目が「シラフ」っていうのはすごい面白いですよね。
キイチ:もしかしたら僕たちの音楽を、いわゆる“ザ・シティポップ”として聴き始めてくれた人も多いと思うんですけど、やっぱりもともとシティポップとは縁遠かった4人なんで。これまで、徐々に窮屈さというか、無理にシティポップにはめにいってた部分も少なからずあったと思うんです。ただ、前作の『嗜好性』でちょっとはみ出すことができて、今作ではより自由になれたような気がするんですよね。やっぱり、カウンター的な反骨心は常に忘れちゃいけないというか、この4人が共通して持ってる気持ちではあるんで。とはいえ、この「シラフ」は高揚感がある曲なので、それがまたいいなあって。
――この曲がセットリストに加わることで、お酒を飲める/飲めないにかかわらず、あらゆる観客を包み込むようなライブになっていくのではないかと想像しましたね。
磯野:僕らのチーム、みんな酒飲むんですけど、唯一、PAさんだけマジで酒飲めなくて。なので、その方も置いて行かないように(笑)。