THE BACK HORN、25年間で培われた柔軟な音楽性 リアレンジアルバムは“バンドの本質”が垣間見える1枚に

 1998年の結成から25周年を迎えたTHE BACK HORNが、アニバーサリー作品として『REARRANGE THE BACK HORN』を6月14日にリリースする。

 これまで発表してきた楽曲の中から厳選した12曲を新たなアレンジで録音し、新曲「Days」を加えた計13曲を収録した。ボサノバやジャズを取り入れた新アレンジはアグレッシブな演奏やライブで支持を得てきたTHE BACK HORNの印象を新たにするのではないだろうか。「これがTHE BACK HORN?」と思う人もいるかもしれないが、聴けば新たなサウンドの中に揺るがぬバンドの信念やスタイルが貫かれ、25年の間に彼らが吸収してきた幅広い音楽のエッセンスが散りばめられている。何よりもそれを楽しんでいる彼ら自身の懐の深さが伝わってくる作品だ。

 発端はファンクラブ「銀河遊牧民」限定イベント『銀河遊牧会』で、何曲かアコースティックバージョンにアレンジして演奏したことだった。聴いたファンの反応も良くメンバー自身が新鮮に感じたことが、この作品へと繋がった。具体的にアルバムにすることを提案したのは、松田晋二(Dr)。これまでもライブでキーボードやストリングスと共演し、自分たちの楽曲に新たな息吹を加えてきた。ゲストを加えることは彼らにとって大きな経験になってきたが、そうした足し算のサウンドとは対照的に『REARRANGE』は引き算を試みることで新しい一面を見出したと言える。重要な持ち味であるラウドで緊張感のあるサウンドと距離を置き、身体ごと音と共にぶつけてくるようなライブパフォーマンスからも離れてみた。そうすることでTHE BACK HORNの本質が、『REARRANGE』から浮き上がってくる。

THE BACK HORN - 「冬のミルク (Rearrange)」MUSIC VIDEO

 最初に着手したのは、インディーズ時代に発表し今も重要な曲の一つ「冬のミルク」。この曲が生まれてTHE BACK HORNは最初の一歩を踏み出した。純粋な恋を冬のミルクと例える痛々しいほどのラブソングをボサノバ風のアレンジにすることで、曲が持つ哀愁を生かしながらも今の彼らならではの包容力を感じさせる曲に生まれ変わっている。また『REARRANGE』から最初にMVが発表された「罠」は、ソリッドでパワフルな演奏でライブの定番となっている曲だが、スウィングするビッグバンドを思わせるホーンの音をシンセサイザーで入れてダンサブルに仕上げた。このリアレンジの発案は山田将司(Vo)で、シンセを加えたのは菅波栄純(Gt)。どっしり跳ねる松田のドラムも小気味いい。この2曲に続きMVが公開されるのが新曲「Days」。この作品に加わることを想定したアコースティックなアレンジで、3連のリズムで穏やかに聴かせる山田の曲に松田が歌詞を書いた。ありふれた日常の積み重ねの大切さを振り返り、4人で歩んできた25年を〈僕らだけの物語〉と高らかに歌う、アニバーサリーイヤーにふさわしい1曲だ。この3曲のMVは4人が円陣を組んでスツールに座り、楽器を手に穏やかな表情で演奏している光景を、クローズアップや引きの映像を交えながら編集している。リハーサルでもこんなにリラックスしていないだろうと思うような彼らの様子は、「Days」で歌っている〈ありふれた日常〉であり〈僕らだけの物語〉そのものだ。

THE BACK HORN 「罠(Rearrange)」MUSIC VIDEO

 この3曲の他に『REARRANGE』に収録された曲で“僕らだけの物語”を辿ってみよう。「幾千光年の孤独 」はメジャー初作『人間プログラム』(2001年)から。熱いロックのソリッドさをジャジーな演奏で受け継ぎ、山田が表情豊かに歌っている。「光の結晶」もバンドが一丸となって向かってくるヒリヒリするような熱量を持った演奏から、シャッフルビートに乗って4人の楽器それぞれが伸びやかに響く開放感のある雰囲気に変わっている。岡峰光舟のベースと菅波のギターの応酬が小気味よく、山田の温かな歌が未来に向かって進ませてくれる曲に生まれ変わった。

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