ao、深みのある歌唱で築く“普遍的な居場所” RADWIMPS新曲へのフィーチャリング、サマソニ出演……2023年は飛躍の年に

 また、「you too」が象徴的なように、それぞれの楽曲では、ao自身の等身大な想いを重ね合わせた言葉が綴られているが、その一方で、具体的なワードに寄せすぎず、リスナーへの解釈の余地を広くとった言葉遣いがなされている点もポイントだ。「RADAR: Early Noise 2022」のスペシャル映像のインタビューの中で、aoは、曲作りで心がけていることについて次のように語っている(※2)。

「あんまり自分の思っていることを書きすぎないこと」

「自分が本当に思っていることと、こうでありたいみたいな理想のバランスを気をつけてます」

「誰かの居場所になったりとか、疑問とかを投げかけられる場所になりたい」

「私の曲は私が考えていることだから、きっと誰かが考えていることとは違うし、それを指摘してもらいたいというか、コメント欄とかに『いや、私はこう思います』とか、いろんな人が話せる場所になりたいなって思います」

 こうした発言からは、aoの音楽観がすでに明確になっていることが分かる。彼女にとっての音楽は、自己表現の手段というだけではなく、リスナーにとっての「居場所」でもある。おそらくは、上述した作詞における言葉遣いも、そうした彼女自身の音楽観に基づいているものなのだろう。「いろんな人が話せる場所になりたい」というaoの深い想いが、それぞれの楽曲に豊かな普遍性を与え、そして実際に今、彼女の楽曲は10代、20代のリスナーを中心に支持を拡大しつつある。

ao - 幻想 (Official Video)

 2022年3月の1st EP『LOOK』のリリース以降も、Yaffleがサウンドプロデュースを手掛けた快活なロックチューン「チェンジ」や、「リップル」の続編として制作した「幻想」など、様々な楽曲を発表することで、自身の音楽世界を拡張し続けているao。そのタイミングで実現したのが、冒頭でも挙げたRADWIMPSの新曲「KANASHIBARI feat.ao」へのフィーチャリングゲストとしての参加だ。新進気鋭のアーティストを大胆にフックアップする野田洋次郎の先見の明には改めて驚かされるが、同曲において、中盤のパートを堂々と担うaoの存在感も凄い。何より、「絶望的なラブソング」として制作されたこの曲の中で、凛と澄み渡った響きを高らかに届ける彼女の歌声に強く心を動かされる。

RADWIMPS - KANASHIBARI feat.ao [Official Music Video]

 4月から放送されている東京・大阪・名古屋国際工科専門職大学のCMでは、未発表の新曲「ENCORE」がCMソングとして起用されており、また、同タイミングで放送が始まったハーゲンダッツのCMで、aoはクラシックの名曲「月の光」(クロード・ドビュッシー)にオリジナルの歌詞を乗せたカバー曲を歌っている。このように今、彼女の歌声は、これまでの活動とは異なるスケール感をもって多くの人の耳に届き始めていて、また先日には、8月の『SUMMER SONIC 2023』の『Spotify RADAR: Early Noise Stage』に出演することもアナウンスされた。2023年が、aoにとって大きな飛躍の年になることは間違いないだろう。テレビCMやフェスをはじめとした様々な場所で彼女と出会った時は、ぜひその新たな才能に注目してみてほしい。

ハーゲンダッツTVCM「本日、とろけ曜日。」篇30秒

※1:https://realsound.jp/2022/04/post-1004800.html
※2:https://youtu.be/HzrPCI9ezRc

ao 公式サイト

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