中嶋ユキノ、浜田省吾との共作曲も披露した『アコ旅』ファイナル バンドメンバーの演奏とともに伝えたピュアな歌の魅力
3月15日にリリースしたミニアルバム『新しい空の下で』を携えての全国ツアー『中嶋ユキノ アコ旅2023 〜新しい空の下で〜』のファイナルを、4月27日に東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで迎えた中嶋ユキノ。開演時間の19時ぴったりにミニアルバムの1曲目「はじまりの鐘」のイントロが流れると、客席からは自然と曲に合わせたハンドクラップが起こった。同じようにハンドクラップをしながら3人のバンドメンバーと中嶋がステージに登場し、楽器の用意ができるとそのまま曲が始まった。ツアーで移動する日々から生まれたこの曲は、ツアーファイナルのオープニングにふさわしい。全国8カ所を回って来た軽やかな足取りを感じさせるような明るくパワフルな曲になっていた。
「平日にも関わらず、お集まりいただきありがとうございます。今日は先日発売になったミニアルバムの曲はもちろん、今までの曲もリアレンジしながらお届けしようと思います、どうぞよろしく!」
中嶋がピアノを弾きながら「2ndアルバムから」と紹介した「伝わんないと意味がない」は、息の合ったバンドの演奏と歌が一つになった。続く「All or Nothing」もドラムのビートに乗って、「先日発売になったミニアルバムの中から」とテンポよく紹介してから曲へ。オーディエンスをリラックスさせ自然に曲に引き込んでいく小気味いいMCは、ラジオ番組のDJのようにすんなり曲をつないでいく。ソロ活動を始めて間もない頃に京都のα-STATIONでDJを務めたり、Ustreamで弾き語りの配信番組をやった経験が今も生きているのだろう。新曲も、ツアーで歌ってきたことでバンドとも馴染み、中嶋の歌が表情豊かだ。
一息入れてツアーメンバーの紹介コーナーに続いたが、このツアーでは会場となった地方の方言で紹介してきたそうで、その総集編として各地の方言を交えての紹介に。まずはパーカッション・若森さちこを仙台弁で「2016年からサポートしてくれるっちゃ」。広島弁で2021年から参加していると紹介したのはベースの小川悠斗。そしてギターの門馬由哉は2019年からの参加で33歳1児の父、と富山弁で紹介。慣れない方言でたどたどしい部分はあったものの、それも含めて各地を和ませてきたのだろう。そんな空気をちょっとシリアスに変えたのは「虹」だった。
「虹」は中嶋の作品をプロデュースしている浜田省吾が水谷公生・春嵐と組んでいるユニット・Fairlifeの初作『Have a nice life』収録曲で、ボーカルに岸谷香がフィーチャリングされたナンバーだが、浜田から提案されて今回のミニアルバムでカバーした。浜田はライブで映える曲になるのではと言ったそうで、実際シンプルなアレンジが歌を引き立て、じっくりと耳を傾けさせる曲になっていた。新曲「誰かにそっと」は、浜田の提案でこのアレンジになったという初期ニール・ヤング風のギターと若森のコーラスとともに、澄んだ高音で聴き手に寄り添うように歌いかけた。
若森のパーカッションと門馬のアコースティックギターでラテン風に仕立てた「好きで好きで」でしっとりした雰囲気を一転させた後は、このツアーの思い出話。ホテルで加湿器やバスルームの湯気が上がりすぎて火災報知器が鳴ったとフロントに2度も注意されたそうで、喉を大切にするボーカリストならではのエピソードだろう(3度目の電話かと思ったら携帯のアラームだった……というオチも)。そんなMCから「時計の針」はメジャー初作『N.Y.』で浜田省吾とデュエットした曲だが「今日はひとりで」とじっくり歌う中嶋の声に、小川のアップライトベースと門馬のアコギがそっと寄り添った。