ちゃんみな「私のテーマは人生を歌うこと」 新作『Naked』でルーツと向き合い、眼差しはグローバルへ

私はすべてにおいてグラデーションができない

ーーそのなかで「I’m Not OK」という曲では、ギターサウンドで「大丈夫じゃないけど、それでいいんだ」と歌われています。

ちゃんみな:なんでここにこの曲が来たかというと、「Wake up call」で「私はいま海外を飛び回ってるぜ」というフレックス的なバイブスがあったり、「サンフラワー」で恋愛してみたけど何か違ったり、「Mirror」とか「FUCK LOVE」、「B級」でふざけていたり、「美人 (Remix) feat. Awich」ではちゃんとルッキズムについて言及したり、いろいろなことがあるけれど、結局、私は大丈夫じゃないよね、という状況だからで。精神的に「別に大丈夫じゃなかった」という意味で「I’m Not OK」なんですけど、それが私にとっての正常だし、そういう状態が音楽を書く上でエキサイティングなんですよ。「大丈夫じゃない」状況の方が、今の私には似合っている。だから、最後にこの曲を持ってきて、1曲目には「Good」を収録したんです。「私は大丈夫」で始まったのに、最後には「別に私は大丈夫じゃない」という。

ーーライブ中のMCで、ここ数年間は色々な意味で大変だった、普通じゃなかったとおっしゃっていましたね。

ちゃんみな:大変は大変だったし、そうじゃないと「I’m Not OK」という言葉は出ないじゃないですか。だけど、私はそれを愛している、ということですね。

ーーそれが「メッセージ」だというと、ちょっと言い過ぎですか?

ちゃんみな:難しいな。大前提として、私が楽曲を書いているのは自分のためだし、自分の話なんですよ。だから、メッセージとして伝えるという気持ちは正直なくて。私はこういう人生です、みんながそれに興味を持ってくれるんだったら、見に来たら? というイメージなんです。見せに行くというより、見に来ていただくという感覚。私がそれをエンタメとして伝えられるとしたら、どういうふうにパフォーマンスしていくか、どういう発言をするか、ということだし、私は「I’m Not OK」だから、みんなも「大丈夫じゃない」と言ってもいいんじゃない? って。曲を書くのと伝えるのは全く別の作業で、曲が聖書で、私は牧師のイメージなんです。

ちゃんみな - I'm Not OK ( AREA OF DIAMOND @ 横浜アリーナ ) -

ーー作品があって、ステージにいるちゃんみなさんはそれを伝えにきた、ということですね。曲を作るときにはリスナーにどう伝えるかというより、自身の体験や経験を作品化することに専念している。そうしたパーソナルな世界が、今作では日本語と英語、韓国語で表現されています。

ちゃんみな:昨年、韓国でデビューしたのが大きかったですね。自分の作品で韓国語を使ったのは意外と「I'm a Pop」(2019年)くらいで、自分のルーツとしていつかやりたかったんです。『Naked』というタイトルでもあるし、今は自信を持っていられるので、私しかできない、すごく自分勝手でわがままな作品だと思っています。

ーーSpotifyなどを通じて、ちゃんみなさんの曲が日本や韓国はもちろん、世界中のリスナーに聴かれる未来はそう遠くないと思います。レーベル「NO LABEL MUSIC」の設立もありましたが、世界展開についてはどう考えていますか。

ちゃんみな:デビュー当時からグローバルに活動できる、という思いはずっとあって、着々と進めていっている、という感覚です。例えば「ハレンチ」はJ-POPがコンセプトだったんですけど、これはコロナ禍になって日本から出なくなったからできた曲で。デビューしてから2年間くらい、1年の3分の1は海外にいたから、逆に、ずっと日本にいることがすごく新鮮だったんですよ。日本にいることで、日本の文化や都会の景色だったり、ディープに感じることがあって、J-POPに興味を持つようになって。だから、どちらかというと「ハレンチ」がイレギュラーだという。

ーーJ-POPには、グローバルの視点で見たら新鮮だったり普遍性がある要素もあって、実は世界に向けた作品でも生きてくるように感じます。

ちゃんみな:そうなんですよ。J-POPとちゃんと向き合ってみて面白かったのは、いろいろなジャンルをやってきた中で、唯一クラシックのルールをずっと守っているジャンルだなと。それが面白くて。

ーー明治や大正時代に入ってきた西洋音楽のマナーが、日本のポピュラー音楽で脈々と受け継がれていますよね。一方、世界的なヒット曲を多く生み出している韓国の音楽についてはどう捉えていますか。

ちゃんみな:アメリカとあんまり変わらないと思います。世界基準をちゃんと守って、それがヒットするというイメージですね。例えば歌詞を見ても、J-POPと海外の音楽はかなり違っていて、海外では同じフレーズをずっと繰り返していても「逆にそっちのほうがいい」というイメージがあるけれど、日本の場合は独特で、どういうことが書かれているかが大事になっている。歌詞がすごく好きな私にはそれが刺さるんです。

 だから、このアルバムを作る上でも「日本人が聴けるのかな?」ということはすごく考えたし、レーベルとも事務所とも、友達とも話し合いました。でも、私はすべてにおいてグラデーションができないというか、浮気もできないタイプだし、「韓国を狙いながら日本も押さえて、アメリカの人たちにも聴いてもらいたい」なんて絶対に無理で。なので、結局は「自分ウケ」を狙ったというか、すごく自分勝手でわがままなアルバムになりました。どこにも届かない可能性もある(笑)。

ーーリスナーを置いていく覚悟……みたいなものもあるということでしょうか。

ちゃんみな:というより、今いるリスナーの人たちを信用しているんです。せっかく好きになってくれた人がいなくなってもいいかといえば、絶対イヤ。私はそんなにクールじゃなくて、「今まで好きだったのに嫌いになりました」なんて言われたら、フラれた気持ちになって一番傷つきます(笑)。みんなを信用して、自分が好きなものを好きなように作ったーーそんなアルバムですね。

■リリース情報
4thフルアルバム『Naked』
4月26日(水)リリース
配信リンク:https://chanmina.lnk.to/naked

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