SOMETIME'S、ドラマ『全ラ飯』主題歌の制作から得た“栄養” せめぎ合いの中で掴んできた二人が目指すべきもの
楽曲の大胆な展開を生んだ「思いついたらやる」のスタンス
――作曲・編曲面についても聞かせてください。先方が挙げた「Drug cure」が80’sファンクだから、この曲も80年代の方向性になったということでしょうか?
SOTA:そうですね。先方から「Drug cure」の名前が出たので、藤田に「藤田がやりたいことをマジでやっちゃっていいんじゃない?」という話をするところから始まって。
TAKKI:ただ、「『Drug cure』と似たような曲をもう一度作りました」だと僕らの活動にとっては栄養価の低い曲になってしまうので、「Drug cure」の一歩先へということで、“行ききっちゃう”というテーマで制作して。だから80年代“っぽい”ものをやるんじゃなくて、とことん80年代にするっていうイメージです。それに伴い楽曲の展開も行ききって、“面白いことはとりあえず全部ぶち込んでみるか!”と。とにかく納期が迫っていたので、プリプロする時間もなかったんですよ。
――えっ! 時間をかけて綿密に構築していった曲なのかと思ってました。
TAKKI:全部その場その場で考えていきました。「次こうしたら面白くない?」とディスカッションして。
SOTA:TAKKIがギターの音色を決めている時に、僕と藤田でピアノの部屋に入ってメロを作ったりね。納期が迫っている中での制作だったので、火事場の馬鹿力じゃないですけど、そういうエネルギーはすごくあったと思います(笑)。
――リスナーからすると「なぜこうなった?」と思う箇所がたくさんあるんですよ。ギターはTAKKIさんらしくカッティングから始まりますけど、途中でメタルを思わせる単音リフに変わり、間奏では派手なソロが始まる。大胆な展開にびっくりしたんですが、いったいどこから出てきたアイデアだったんでしょうか?
TAKKI:正直何も覚えてないですね(笑)。本当にレコーディングしながら作っていたので。今までの僕のビンテージサウンドでのギターカッティングでは、80年代のサウンドイメージを邪魔してしまうと思ったんですよ。なので、モダンな音がするギターを借りてきて、そのギターを持ってレコーディングに行ったところまでは覚えているんですけど……(笑)。
SOTA:(笑)。今回、ギターのレコーディングはかなり長かったよね。
TAKKI:長かったね。9時間くらい? メタルは自分にとっては不得手中の不得手と言える分野なので、間奏のソロは「歪ませるだけ歪ませよう」という気持ちだけ持ちつつ、修行に入ったような感じでした。スケジュール的にボーカルも同じ日に録るしかなかったから、「俺が頑張って早く終わらせるか」と言っていたんですよ。だけど俺が全然終わらなくて、最終的に押しちゃったから、歌録りが深夜になってしまって……。
――このボーカルも手が込んでいますよね。
SOTA:そうですね、大変でした。今回、コーラスを重ねている箇所が結構たくさんあるんですよ。例えば間奏が終わったあとの“お花畑ゾーン”と呼んでいるところでは右と左で違うメロディを歌いつつ、真ん中にはウーアーコーラスがいて。他にもコーラスを重ねているところはたくさんあるから、メインのメロディを録ってからもずっとコーラスをしてて、「あれ? まだ終わらないな?」って(笑)。
――あのコーラスのところは、SOMETIME'S的には“お花畑ゾーン”というイメージなんですね。とにかく予測不能なことが続く曲だから、“また魔界に来たな”と思いながら聴いてました(笑)。
SOTA:魔界もお花畑も似たようなものなので大丈夫ですよ(笑)。ここは山下達郎さんの「クリスマス・イブ」がイメージとしてあったんですよ。「クリスマス・イブ」のように、ふわふわとしたゾーンが急に始まる感じにしたいなって。
TAKKI:歌メロを考えるなかで、「どっちのメロディがいいかな?」ってなったタイミングがあったんですよ。だけど「どっちのメロディもいいから、どっちも使ったらいいんじゃない?」という話になり、さらに「右と左で違う歌詞を乗せたら面白いんじゃない?」という話になり。この曲のメロディや伴奏、コード進行の感じからして、「クリスマス・イブ」のように綺麗な感じにはならないだろうとそもそも思っていたんですけど(笑)、そうやってどんどんカオスになっていったんですよね。
SOTA:思えば、この曲の制作中はずっと「思いついたらやった方がいいだろう」という方向性で。「思いついたけどやめよう」というマインドは全くありませんでした。
――失礼を承知で言いますが、普通、納期が迫っているなら、ギターを弾きながら修行に入らない方がいいし、コーラスはたくさん重ねない方がいいし、思いついたアイデアは全部実現するのではなく、やることを絞った方が早く終わらせられるんですよ。
TAKKI:確かにそうですね。だから時間かかっちゃったんでしょうね(笑)。
SOTA:あははは!
TAKKI:でも気がついたら、「うーん、まだ違う」と言いながら微調整を繰り返していて。制作をしていると、やっぱりどうしても「まあ、これでいっか」とはならないんですよね。「このアプローチ、この曲の世界観にちゃんと合ってる?」「浮いて聴こえない?」という感じで気になっちゃって。今回はそういう思考回路だけはあったものの、「じゃあどうすればいい?」というアイデアがなかったら、修行になっちゃったという(笑)。
――でもそれによって曲が面白くなっているし、無難な感じで終わらせず、ついついこだわってしまうのがSOMETIME'Sらしさだと思います。そんな曲に「Do what you do ably」というタイトルがついているのも面白い。
SOTA:言われてみれば、確かに!
TAKKI:やれることをやったというよりかは、やれないこともやってますけどね(笑)。
「Do what you do ably」は“2022年度を締め括る曲”に
――2023年初のリリースですが、SOMETIME'Sにとって、どんな立ち位置の曲になったと感じていますか?
TAKKI:ドラマ主題歌の書き下ろしという今までにない経験ができて勉強になりましたし、この曲の制作を経て新しくできるようになったこともたくさんありました。そういう意味で、自分たちにとって栄養価のある楽曲になったと思っています。ただ、“この曲で2023年がスタートする”という感覚ではないのかもしれないです。
SOTA:確かに。2023年の始まりの曲というよりかは、2022年度を締め括る曲という感覚ですね。最初に話したように、いろいろなことを考えながら活動してきた2022年を経て、今後はもっとソリッドに、いちアーティストとしてやりたいこと、エゴに近いようなものをもっと明確に打ち出していこうと思っています。今回の「Do what you do ably」は初の書き下ろしということで、自分たち自身を見つめながら作った曲ではないんですが、この曲の制作を一旦挟んだことで、2023年にSOMETIME'Sがやろうとしていることがより明確に見えてきました。
――つまり、『Hope EP』以降のモードが色濃く反映された曲はまた別に作っているし、今後リリースする予定ということでしょうか?
TAKKI:そうですね。まさに今、2023年をスタートさせるための楽曲を制作している最中なので、リリースを楽しみにしていてほしいです。
※1:https://natalie.mu/music/pp/sometimes03/
■リリース情報
SOMETIME’S 「Do what you do ably」
配信:https://SOMETIMES.lnk.to/dowhatyoudoablyPR
■ドラマ情報
『全ラ飯』
2023年4月13日(木)スタート
毎週木曜深夜0:25~0:55「EDGE」枠(関西ローカル)
※初回は深夜0:40~1:10
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
出演:近藤頌利 ゆうたろう 片山友希 岡宏明 フィガロ・ツェン 山中聡
脚本:大久保ともみ、川崎 僚、児玉頼子
主題歌:SOMETIME'S「Do what you do ably」(PONY CANYON / IRORI Records)
演出:かとうみさと、加藤綾佳、川崎 僚
プロデュース:豊福陽子、中山ケイ子 藤田真一
制作協力:FCC
制作著:カンテレ
ホームページ : https://www.ktv.jp/zenrameshi/
公式Twitter : @lalala_meshi
公式Instagram : @lalala_meshi
About SOMETIME’S
https://lit.link/sometimes