まらしぃ、「アマツキツネ」10周年記念アルバムをいち早く語る じん&堀江晶太(kemu)と過ごした制作時間の充実

コラボで増えたピアノを弾く際の引き出し

――「アマツキツネ」を作っていた10年前と今回の新曲の間には、多くのオリジナル曲をリリースしています。この10年で作曲や作詞の方法には変化もありましたか?

まらしぃ:変わったというか、引き出しは少し増えたと思います。当時と同じ作り方をすることは今でもありますが、ちょっと迷ったときに回り道をしたり、「KITSUNE Pâtissière」のように歌詞から作ってみたり。いろんな曲を作っているうちにいろんなやり方ができるようになってきたなと思いますね。

――今回のアルバムは全曲鏡音リンが歌唱を担当していますが、ボーカロイドを選ぶ基準やこだわりは?

まらしぃ:今回は「アマツキツネ」のリンちゃんのお祝い的なアルバムなので、ボーカルはリンちゃんにしたいなという思いは元々あって。でも他の曲はミクさんを使うことが多いですね。 

――他に気になっている、使ってみたいボーカロイドはありますか?

まらしぃ:自分は古のボカロオタクなので、クリプトンさんのボーカロイドのキャラが大好きなんですよね。(巡音)ルカさんはこの間初めて使って……。KAITOさんも「88☆彡」で歌ってもらいましたけど、MEIKOさんはソロでは使ったことないのでぜひ使ってみたいです。

――これまで初音ミクや鏡音リンなど女声のボーカロイドを使うことが多かったまらしぃさんですが、KAITOを使ってみた感触はいかがでした?

まらしぃ:「88☆彡」は『プロセカ』の男女混合ユニット・ワンダーランズ×ショウタイムへの書き下ろし楽曲だったのでKAITOさんを使ったんですが、やっぱり新しかったですね。すごくいい声ですし、また機会があれば使ってみたいです。声もかっこいいし、いろんな曲に合うなと。

――『プロセカ』では書き下ろし楽曲の提供のほかにもメドレー演奏を担当されています。反響はいかがですか?

まらしぃ:『プロセカ』は小中学生など若い世代のユーザーも多いゲームだと思うので、新しく知ってもらうきっかけになっているのはすごくありがたいです。「ピアノを弾いているのは知っていたけど曲を作っているのは知らなかった」という方もいらっしゃったりして。昔からボーカロイド界隈を見ていて、いろんな作品やキャラクターのファンだった自分がこういうお話をいただけるのもありがたいですし、新鮮な気持ちでやらせてもらっています。

――今回のアルバムではソロだけでなく、堀江さんやじんさん、まらおバンドや高橋洋子さんなど、様々なコラボレーションも楽しめます。相手や楽器が異なると、演奏するときの感触も変わっていくものですか?

まらしぃ:変わりますね。僕の感覚では、人それぞれ出す音にリズムや呼吸のようなものがあると思っているんです。自分がそれに合わせていくことで一体感が生まれると、すごくいいなと思います。それこそ高橋さんの呼吸は本当にすごくて。高橋さんと一緒にやらせてもらってからは、歌手の方とコラボしてピアノを弾く際の引き出しが確実に増えたと思います。普段1人でやることが多いとはいえ、人と一緒に演奏するのもすごくいいなと改めて思いましたね。

――「弧ギツネの乱」、「天照ラセ」はまらおバンドとしてドラマーの与野裕史さんと演奏しています。

まらしぃ:彼も最近メキメキと頭角を現して、大きい舞台で叩いたり、いろんなレコーディングに参加しているんですよね。まらおバンドを動かし始めたのはコロナ前ですが、当時と比べて与野くんがパワーアップしていて、僕も負けてられないなと。向こうもそう思ってくれてると思いますし、いろいろチャレンジしているのも感じます。

――今回のアルバムは「アマツキツネ」シリーズに改めて向き合った作品だと思いますが、制作を振り返ってみていかがですか?

まらしぃ:「アマツキツネ」が出てから10年とちょっと経って、その間にできるようになったことや新しく知り合った人との関係などが詰め込めたなと思っています。個人的にはCDが完成したら飾っておきたくなるようなものになると思ってますね。当時投稿した「アマツキツネ」から見てくれている方には僕と同じような気持ちになってもらえたら何よりですし、最近知ってくれた方はこういう曲があると知るきっかけの一つになれば嬉しいです。

――昨年12月よりツアー『marasy piano live tour 2022-2023』を回っていますが、12月から1月の公演を終え、手ごたえはいかがですか?

まらしぃ:楽しかったです。ツアーという形でやらせてもらうのはコロナ禍になってから初だったんですが、配信をしていてもコロナ禍に自分を知ってくれた人がいることは把握していたんです。その人たちに直接聴いてもらう機会を作れたのはありがたいことでしたね。後半も初めてお邪魔する場所も久しぶりの場所もあるので、一緒に楽しめるかなと思います。

――残りは8公演。前半と異なる地域があるのはもちろん、関東公演も異なる会場での開催ですね。

まらしぃ:ピアノもそれぞれ違って、当日触ってみて初めて“こんにちは”なのでドキドキするんですけど、いろんなピアノを弾けるのは楽しいです。会場の響き方も現地に行ってみて初めて分かることですし。

――当日出会ったピアノを弾くときのコツや心構えはあるんですか?

まらしぃ:最近は一歩引いて余裕を持つとピアノと仲良くなれるということが分かりまして。問題があるときって、大体原因は自分にあるんですよ。ピアノが鳴ってくれないとか自分の気分がいまいち乗らないとか、なんでだろうと考えてみると自分が半分寝起きだからとか、そういうので全部片付いちゃったりするんですよね(笑)。

――原因は身の回りにあると(笑)。10年程前のインタビューを読み返していたら、今後の目標について「武道館に立ちたいみたいな目標はあまりない」とお話されていましたが、2021年には武道館公演を開催されました。ご自身の歩みを振り返ってみて、どう感じますか?

まらしぃ:やっぱり音楽をやっていると日本武道館でライブができる人ってすごいなと思いますから、その気持ちが全くないと言えば嘘になるんですよね。ただそのために毎日頑張るというよりは、自分はピアノを1回辞めている身なので、またピアノを再開できて曲を作ったり、好きな曲を弾いて楽しく活動できている現状がすごく幸せなことだと思っているんです。なので長く続けたいという気持ちしかないというか。今がすごく幸せなので、これが続くといいなと思っています。

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