SPRINGMANが新たな仲間に SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、WON集結のレーベルイベント『TALTOナイト 2023』

 4番手はマカロニえんぴつ。はっとり(Vo/Gt)が「東京ー!」と叫ぶと、それに応えるように大きな歓声があがったことは、今のマカロニえんぴつの勢いの凄さを物語っているように思う。「レモンパイ」「洗濯機と君とラヂオ」とライブ定番曲が投下されると、会場は高い熱気に包まれた。

マカロニえんぴつ

 中盤では、最新EP『wheel of life』収録曲である「PRAY.」や「リンジュー・ラヴ」といった新曲も披露。新旧織り交ぜたセットリストは、レーベルとともに歩んできた日々が凝縮されているようにも思える。昨年はバンド結成10周年を迎え、はっとりはMCでロックバンドについて話す機会が増えたと語った。

「何でロックバンドやっているんですか? ってよく聞かれました。答えは、面倒くさいからです。ロックバンドって面倒くさいんですよ。制限があるのに、色々やろうとするから負荷がかかる。でも、掘って掘って掘っていくと、自分たちの“個性”ってものにぶつかるんです。僕らは10年やって辿り着きました」

 マカロニえんぴつはきっと、あえてその面倒くさいことを選び、自分たちのやりたいことにこだわり続けてきたバンドだ。その中で生まれた“個性”がバンドの魅力として放たれ、今こうして多くの人を惹きつけているのだろう。

 トリを務めたのは、TALTO最年長バンドであるSAKANAMON。なお、この日のSAKANAMONのSEは、かつてTALTOに所属していた東京カランコロン(2020年解散)の「トーキョーダイブ」だった。この選曲からも、SAKANAMONのレーベルへの強い想いが感じられる。

SAKANAMON

 序盤は「クダラナインサイド」「幼気な少女」と疾走感のあるナンバーが続き、3人の縦の線がしっかりとそろったアンサンブルで観客を魅了する。終始安定感のあるパフォーマンスは、間違いなくこの日のトリに相応しい。なかでも印象的だったのは、MVで使われた水槽の映像を背後のスクリーンに映して届けられた「1988」。浮遊感のあるサウンドも相まって、ステージは水の中にいるような幻想的な雰囲気に満ちていた。

 「SAKANAMONは結成15周年になりました。ここまで続けてこられたのはみんなのおかげです」。そんな言葉の後、ラストに届けられた「ふれあい」は、藤森の真っ直ぐな歌声が会場に響きわたっていた。

 その後、観客のアンコールに応えて再度ステージに登場したSAKANAMONは、結成10周年のタイミングで発表された楽曲「ロックバンド」を披露。バンドが大きな節目を迎えたこともあり、レーベルへの愛と感謝、そして「これからも音楽を続けていく」という意思の込められたステージだったように思う。

 振り返ってみると、各アーティストの個性を存分に堪能できたイベントだった。2016年に発足し、6周年を迎えたTALTOは、彼ら自身が公演中に語っていた通り「クラスの隅にいるような人たちが集まっている」レーベルなのかもしれない。ただし、客席から見えたステージ上の彼らは、総じて輝きを放っていた。そんな彼らの姿は、私たちが何か不安を抱えたときや生きづらさを覚えたときに、自分もこのままでいいのだと思わせてくれる。個性派揃いのレーベル・TALTOが多くの人を魅了する理由は、そんなところにあるのかもしれない。

<TALTO>江森弘和氏が語る、マカロニえんぴつ躍進の鍵と多様性の大切さ「それぞれの人生のストーリーを感じられるのが面白い」

バンドシーンを引っ張り、ライブハウスの“今”を担う気鋭のレーベルを取材する連載「次世代レーベルマップ」。第6回は、<murffi…

<[NOiD]>永井優馬氏が語る、SUPER BEAVERとの出会いやレーベル運営の意義「人生背負ってるつもりで一緒に歩んでいきたい」

バンドシーンを引っ張り、ライブハウスの“今”を担う気鋭のレーベルを取材する連載「次世代レーベルマップ」。第4回は、<murffi…

関連記事