Red Hot Chili Peppers、ジョン・フルシアンテ帰還で轟いた無敵の躍動感 原点と進化を自在に繋ぐ東京ドーム公演に

 ラップ調のボーカルでアジテートしていく「Suck My Kiss」から中盤に突入すると、メロウながらもグッと重心を下げた「Reach Out」「Soul to Squeeze」と続き、ベース&ドラムが牽引していくレッチリの“骨太さ”が顔を出す。フリーが「宇宙一遅く演奏する方法を考えた」と言ってから、嘘みたいな高速スラップベースを弾き始める「Nobody Weird Like Me」の勢いそのままに、「These Are the Ways」「Tippa My Tongue」といった新曲群ではメロウネスと跳ねるような躍動感――いわば静と動が絶妙な塩梅で共存。40年分の熟練の上に、ジョンというダイナミズムを再び獲得したレッチリの現在地が顕著に表れていて、4つのダイナマイトが誘爆し合うようにスリリングなのに、同時に鳴ると心地いいアンサンブルに昇華されていくのは本当に凄い。さらにジョンとフリーが追いかけっこしていくようなギターとベースの掛け合いはバンドの絶好調ぶりを象徴していたし、逆に1弦1弦から鳴る繊細な音の機微を丁寧に掬い取るのもレッチリの持ち味である。それら全てを何食わぬ顔でやってしまう無敵感が、演奏の節々から感じられた。

 本編終盤、ジョンとフリーが向き合い静かにイントロを弾き始めた「Californication」、新たなレッチリの代名詞といえる「Black Summer」にて、現体制レッチリ最大の持ち味と言えるメロディアスなアンセムをここぞとばかりに披露。そこにダメ押しの「By the Way」を叩きつけることで、スピーディなミクスチャーから、鮮やかなバラード、重心を下げたミドルナンバー……といった40年分を凝縮したセットリストを、まるで一筆書きのように綺麗に着地させてみせた。固定概念にとらわれない曲調と演奏とパフォーマンス。4人全員がまさに“なんでもアリ”を志向していて、それを本当に(ほぼ)4人だけの音で成し遂げてしまうのだから、レッチリは他の追随を許さないモンスターバンドだと認めざるを得ない。

 シャツで顔を隠して踊るアンソニーも、ステージの隅々まで躍動するフリーも、己の世界に入って弾きまくるジョンも、そんなフロントメンバーを見つめながらタイトに刻むチャドも、みんなが常軌を逸した、それでいて美しいバランスで成り立っていた。

 アンコール1曲目は、当時メンバーにも言えなかったアンソニーの孤独について歌った30年以上前の名曲「Under the Bridge」。レッチリがターニングポイントを迎えるたびに、メンバー間の団結を強めてきた1曲であり、定番曲だからではなく、このワールドツアーで鳴らされる必然が詰まった選曲だ。そしてラストはもちろん「Give It Away」。政府の規制緩和によりライブ中の声出しが解禁されて以降、東京ドームで行われる初めての海外アーティスト公演ということもあり、オーディエンス一人ひとりの興奮に満ちた声が「Give It Away」が生み出す光景の一部になっていく。それは、ジャンルを越境することで巨大な塊を築いてきたレッチリが、“多様な存在が混ざり合う証=声”によって完成されるライブ本来の在り方を奪還した瞬間でもあった。

 セットリストは全てジョン在籍時の楽曲で構成。こうして、本来の意義を取り戻しつつあるライブ空間に、原点を見つめ直すことで強力かつ自由な進化を遂げたレッチリが帰ってきた。4人が紡ぐストーリーは、まだ始まったばかりだ。

(※)https://open.spotify.com/episode/6WMBtA1O0sN8hGwn9LxsoG

■セットリスト
Can’t Stop
The Zephyr Song
Here Ever After
Snow (Hey Oh)
Eddie
Suck My Kiss
Reach out
Soul to Squeeze
Nobody Weird Like Me
These Are the Ways
Tippa My Tongue
Californication
Carry Me Home
Black Summer
By the Way
【En】
Under the Bridge
Give It Away

Red Hot Chili Peppers WMJ アーティストページ

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