CYNHN、女子流、フィロのス、リリスク、STU48……『アイドル楽曲大賞2022』体制変更や時流を追い風にできたグループが上位に

4位 lyrical school「LAST SCENE」

lyrical school / LAST SCENE (Full Length Music Video)

ガリバー:正直な気持ちを言うと、この楽曲が特筆していい曲かというと僕はそう思わないし、リリスクにはほかにもいい曲がいっぱいある。MVはヘッズ(lyrical schoolファンの呼称)がメンバーと撮ったチェキを集めてそれを繋げた、構成はシンプルなんだけど素晴らしくよくできた内容で、それもあってのランクインという感じもしています。ヘッズにとっては以前の体制でのラストライブとなった日比谷(公園大音楽堂)が大きかったわけだし、そこに向けてというところが大きいですよね。

岡島:作詞はヘッズにはお馴染みの大久保潤也(アナ)さん、作曲・編曲が上田修平さんのコンビです。リリスクは知名度を上げていくのと同時に有名なラッパーやビートメイカーに曲を依頼することが増えていきましたよね。

ピロスエ:リリスクは2016年の「RUN and RUN」のMVが当時としては斬新だったスマホで観る前提の縦型MVで、それがちょうどメジャーデビュー曲でしたよね。今回の体制ラスト曲が凝ったMVというのも1周回った感じがありました。

5位 STU48「花は誰のもの?」

STU48「花は誰のもの?」ダンスリリックビデオ【4K】

宗像:これを反戦歌と見なして反応する人と作曲の鶴久政治に反応する人の2つに分かれますよね。その両方に反応する人の多さがランキングの上位にきた要因なんじゃないかなと思います。そういう時代性みたいなものを汲む上手さをこの曲には感じますよね。

ーー2022年はYouTubeでの再生回数が話題になっていた印象でしたけど、この取材前にダンスリリックビデオを確認したら正直500万回か、とも思ってしまったんですよね。

宗像:STU48の中だと再生回数は一桁多いんですよね。これをどう捉えるかは難しいですけど。

ガリバー:AKB48グループ全体のリリースとしては、2022年に一番世間に広まった曲だと思うんです。実際、メディア露出が全国レベルではほとんどなかったSTU48が、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)や『2022 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)といった音楽番組にも出演していた。一方で、それが曲の評価なのか、メディア的には反戦歌だから今の時流に響く曲というので打ち出しやすかったというのを、ポジティブに捉えるかっていうところがあります。

 2022年にSTU48はCDとしてはこのシングルしかリリースがないんですよね。この曲で1年間やっていくと振り切っていた。僕が言っておきたいのは、「花は誰のもの?」はSTU48の魅力の一面でしかないということで、広島を(活動の)ベースにしているというところでそういった文脈に乗りやすいのはありますけど、ほかにアップテンポな曲もいっぱいあるし、そこをいかに示していけるかがグループの次のステップとしてあると思っています。秋元康プロデュースのグループとしても一番伸びたのはSTU48だったんじゃないかな。

岡島:再生回数500万回って妥当ではないですかね?

ーーでも、次に触れる=LOVEの「あの子コンプレックス」が800万回を超えてますからね。

岡島:STU48のYouTube登録者数が8.14万人、イコラブは23.4万人(2/24時点)。3倍近く違いがあります。「アイドルファンの間で流行った」「テレビで多く歌った」といったことが、YouTubeの再生数に直結するわけではないんですよね。500万回再生はアイドルとしては十分成功じゃないでしょうか。

ガリバー:イコラブの方がSNS上は強い。だから、「花は誰のもの?」は“メディア受けをした”んですよね。言い換えると、テレビ的には便利に使いやすかった。メディアの露出と実人気は必ずしも比例していないし、STU48は年末『NHK紅白歌合戦』に出られるかもみたいな盛り上がりはありましたけど。ポジティブに捉えると、それを言えるぐらいにグループを押し上げる上昇気流があったのは間違いないです。

6位 =LOVE「あの子コンプレックス」

=LOVE(イコールラブ)/ 11th Single『あの子コンプレックス』【MV full】

宗像:マイナー調でフラメンコの要素がある。どこか欅坂46の「サイレントマジョリティー」を彷彿とさせる、日本のリスナーはこういった曲調が好きなんだろうなというのを感じさせますよね。

ガリバー:指原莉乃がプロデュースするアイドルグループとしては≠ME、≒JOYができて、楽曲自体もグループごとにカラーを変えているのが鮮明に出ているなと思っています。初の表題曲センターを務めた佐々木舞香さんをはじめとした大人メンバーの持っているウェットさがマイナーな曲調にも合うし、そこは悲哀が含まれる曲の方がかっこいいんですよね。MVを見ると悲しいだけの曲かとも思うんですけど、ライブで見ると艶やかでかっこよく披露するのでそこに惹かれるし、こういう曲を力強くパフォーマンスできる力がイコラブには備わっている。イコノイジョイ(=LOVE、≠ME、≒JOYの3グループの呼称)の中だと大人の魅力を艶やかに歌い上げられるのがイコラブの特徴ですし、こういった形で評価されるのは嬉しいですね。

ーー2022年のイコラブは「歌えるグループ」というのを強く打ち出していた印象です。「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスもそうですし、コンサート音源を一斉に配信していた。そのボーカルに定評のあるメンバーの一人が佐々木さんでもあります。

ガリバー:ボーカルというところは、ニアジョイにラストアイドルで活躍していた小澤愛実さんが、指原莉乃さんからの熱烈な誘いを受けて、歌唱力をより強化する意味で入ったことからも、歌に力を入れている傾向が分かりやすいですよね。これから触れるエビ中(私立恵比寿中学)もボーカルが強いグループですし、そういったアイドルが上位にくるのは必然性としてあるんじゃないかと感じますね。

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