XGのラップ動画はなぜ世界規模でバズった？　COCONA、MAYA、HARVEY、JURINのスキルを検証

　COCONAはお手本のようなうまいラップをしている。リリックは1小節目が英語。2小節目に日本語を混ぜて、3小節目では韓国語になる。言語によってスキルの構造は違うので、これだけでもシンプルにすごい。内容はアレサのサンプリングに沿って書かれている。特に韓国語のラインはめちゃくちゃかっこいいことを言ってるので、興味のある人は自力で翻訳するか、調べてみてほしい。

　2番手・MAYAのビート「Down Bad」は＜Dreamville＞のポッセカット。スキルの高さには定評がある＜Dreamville＞のリーダー・J.コールらが参加している。つまりめちゃくちゃ難しいラップということ。うまいラッパーは発音と滑舌が良い。もごもごしているとグルーヴの切れ味が悪くなる。もちろんあえて崩す場合もある。MAYAのパートを聴く時は、発音と滑舌、さらに発声にも意識を向けてほしい。すると明確に彼女のスキルを感じられるはずだ。また「私、歌もめっちゃ上手いんで」とわかるフロウを曲頭でかましてからガツガツとラップしていく構成も面白い。リリックでXGのデビュー曲「Tippy Toes」を引用しつつ、ソウルと東京を行き来する自分たちを歌っているのも胸熱だ。

　『ワイルドスピード』のサントラでおなじみTy Dolla $ign、Jack Harlow、24kGoldn「I Won」でラップしたHARVEYはMAYAよりも歌に振ったフロウ。ここまでくると「まあもうそりゃ歌も超うまいし、安定したラップも当たり前にできますよね」という気持ちになる。ただ、彼女もまだ2002年生まれの二十歳。才能があって、さらに当たり前に努力もする。そこがK-POPイズム。というか、むしろグローバルな常識なのかもしれない。個人的に「I Won」に掛けた〈Dollars Yens n Wons（ドルに円にウォン）〉というラインがおしゃれで好き。気の利いた面白い言い回しをすることもラップでは超大事。

　トリを飾るオンニ・JURINがラップするビートはROSALÍA「SAOKO」。ジャズとレゲトンがクロスオーバーしたこのビートを選ぶセンスがやばい。しかもベースラインはおそらくCypress Hill「I Ain't Goin' Out Like That」のオマージュ。ばちばちにヒップホップ。JURINはリリックが特にしゃれていた。〈X marks the spot for the Girls 그건 줄인말〉はざっくり翻訳すると「Xは女の子（Girls）のための場所／それは略語（＝XG）」。また「줄인말」（“じゅりんまる”と発音する）はたぶんJURIN（じゅりん）にかかっている。「ちょっと」「もっと」「手裏剣」など日本語を印象的にかっこよく聴かせるテクニックもある。

　と、ここまで割と真面目に音楽面を解説してきたが、最後に「XTRA XG #8 ([XG TAPE #2] GALZ XYPHER)」を紹介したい。サイファー動画のビハインド。ここに映し出されているのは、18～20歳の女の子だった。同一人物とは思えないほどのギャップに正直食らって「XG、推そう」となった。CHISA、HINATA、JURIAの動画も見なければ。やはりアイドルを見ることは人間を見ることなのだ。

■リリース情報
『XG 2023 SEASON'S GREETINGS』
価格：4,900円（税込）
品番：XGLX-0011
サイズ：255×192×50mm（PACKAGE BOX）
販売開始日：2023年1月16日（月）

詳細：https://xgalx.com/xg/news/detail.php?id=1104800

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