現在またひとつジャンルが過渡期を迎える中、シーンの興隆を後押しする様々なメディアミックスや、大規模なイベントに華を添える複数のクリエイターによるコラボ曲の存在についても、最後に触れておこう。シーンとは切っても切り離せない存在であるアプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク』では既存曲収録のみならず、多くの有名ボカロPが定期的に書き下ろし曲を提供している。直近ではゲーム内ユニットに、まらしぃ×堀江晶太(kemu)「88☆彡」（2022年）や、キタニタツヤ×はるまきごはん「月光」（2022年）といった楽曲提供が行われ、コラボした面々とも併せて注目を浴びた。

　また2020年の開催スタート時から話題を集めるイベント『The VOCALOID Collection』でも、複数のボカロPによる共作が度々イベントを盛り上げる役目を果たしている。2022年春には、同イベントのメディアパートナーである『バズリズム02』（日本テレビ系）主催の歌い手オーディションにバルーン×ぬゆり「ミザン」が課題曲として使用される他、同年秋開催時には総合ランキングにてぬゆり×栗山夕璃「シルバーツインズ」が健闘。このように多種多様な形で注目を浴びるコラボ曲が登場している。

　活動を注視するボカロPによる新曲が発表されるということに加え、リスナーにとっては豪華クリエイターによる夢の共演が叶う瞬間でもある。複数のボカロPによる共同作投稿が支持される大きなポイントは、このようにVOCALOIDシーンを真っ只中で楽しむ人々の「喜び」に二重でアクセスできる点だろう。リスナーにとってはいつだって、ある種のサプライズ的衝撃をもたらしてくれるコラボレーション。今後、VOCALOIDというカルチャーが存続、拡大する中で、これまで以上の大きなインパクトを残す共作曲が生まれる瞬間に、現リスナーが立ちあえる日も訪れることだろう。