矢吹奈子、指原莉乃のスカウトからHKT48の大黒柱に至るまで IZ*ONEでの経験を経た卒業の決断
HKT48の矢吹奈子が10月16日、幕張メッセでの公演でグループからの卒業を発表した。HKT48は2022年に入って15人が卒業、もしくは卒業発表をおこなった。ただエースである矢吹がグループから離れることは、ファンのあいだにも特に大きな動揺と衝撃が走った。
宮脇咲良を戸惑わせるほどのインパクト
矢吹といえば、元HKT48メンバーで劇場支配人もつとめた指原莉乃に“スカウト”されてグループに入ったエピソードがよく知られている。小学生のとき、AKB48在籍時の指原の握手会へ行った際「AKB48に入ってよ、絶対に入れるから」と声をかけられ、さらにHKT48移籍後の握手会でも再び「入ってよ」と言われた。それをきっかけにオーディションに応募。2013年の『HKT48 第3期生オーディション』に合格し、同年11月にHKT48ひまわり組『パジャマドライブ』初日公演のバックダンサーでお披露目された。
矢吹は、同期で同じく当時12歳だった田中美久とともに「天才小学生」と言われ、一躍注目の的に。そしてお披露目からわずか1カ月後。AKB48の34thシングル『鈴懸の木の道で『君の微笑みを夢に見る』と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの』のType H収録曲「ウインクは3回」で、なんとセンターに抜擢された。
さらにHKT48が初めて単独で『ミュージックステーション』(2014年2月14日放送回/テレビ朝日系)に出演したときも、「小学6年生コンビ」としてクローズアップされ、座り位置も司会者・タモリから数えて指原の隣に田中、矢吹が続いた。いきなり1列目、しかも指原の隣というそのポジションからも期待の大きさがうかがえた。
書籍『HKT48成長記 腐ったら、負け』(2015年/角川春樹事務所)のなかでも、当時メンバーだった宮脇咲良に「世間的に“なこみく”(矢吹と田中のコンビの愛称)に引きがあるのはわかっていました。だから敵視するとか、そういうのはまったくなかったんです。でも、どうしたらいいのか、わかんなくなっちゃってました」と言わせるほどの存在感をグループ内で放っていた。
指原チルドレンからの脱皮「頼ってばかりではダメ」
「指原チルドレン」として華々しくデビューを飾り、2015年9月にはAKB48チームBを兼任。翌年『AKB48 45thシングル選抜総選挙』で初めてランクイン(28位)を果たし、兼任解除後の2018年6月に行われた『AKB48 53thシングル 世界選抜総選挙』では9位に入るなど、着実にステップアップを遂げていった。
そんな矢吹の運命を変えたのが2018年、オーディション番組『PRODUCE 48』への参加だろう。実力ごとにクラス分けされ、矢吹は当初、最低評価「F」だったが、成長力が認められて「A」へ。さらにグループバトルでGFRIENDの「LOVE WHISPER」の歌唱に臨んだとき、美しい高音を披露して周囲を驚かせた。矢吹が桁違いの得点を叩き出したことでチームも勝利。評価をさらに高めた。彼女の圧倒的な歌唱力が知れ渡った瞬間は、『PRODUCE 48』のハイライトのひとつとなった。
そしてIZ*ONEとしての活動を掴み取った矢吹。そういった数々の経験が、彼女を徐々に「指原チルドレン」から脱皮させていった。
書籍『日経エンタテインメント! HKT48Special 2019』(2019年/日経BP)のなかで指原は、活動の幅を広げていく矢吹について「奈子も、大人になって相談をしてくることも少なくなったので、(IZ*ONEでの活動について)まだ話していないです」と答えていた。それは決して不義理ではなく、矢吹がひとりのアーティストとして独り立ちしたことをあらわしたコメントだった。