METAFIVE、進化するフィジカルな強靱さと有機的な一体感 ラストアルバムに残された「希望」

METAFIVE、ラストアルバムに残された「希望」

 去る9月14日、METAFIVEの2ndアルバムとなる『METAATEM』がリリースされた。

 本作は昨年8月11日に発売を予定していたものの、直前の7月28日に発売中止となっていたものだ。同作は同年11月20日に配信された無観客ライブ(7月26日に開催予定だった公演が中止となり、同日にライブの模様を収録したもの。ドラムは高橋幸宏に代わりGREAT3の白根賢一)のチケットの特典としてCDまたはアナログレコードが配布されているので、熱心なファンの多くは既に入手しているかもしれない。そのため、今回の正式リリースにあたっては2016年12月3日に開催された東京・Zepp DiverCity公演を収録したBlu-rayを同梱した「デラックス・エディション」として発売された。

 これらの一連の過程について、発売中止の理由はほとんどの人が想像・推測する通りであろう。発売延期ではなく中止という決定が出た時点ではそのままお蔵入りする可能性もあったわけだが、こうして正式に発売されたのは喜ばしい。だが手放しで喜んでばかりもいられないのは、正式リリースの報と共に、今作がMETAFIVEのラストアルバムとなるとアナウンスされたからだ。なぜ最後のアルバムなのか、という理由も明かされてはいないが、これまた多くのファンにとっては半ば予期されたことだろう。

 いつごろ「ラストアルバム」とされたのかは定かでないが、昨年8月20日の『FUJI ROCK FESTIVAL(フジロック)』でステージに立ったMETAFIVEの特別編成バンド(砂原良徳、LEO今井に加え白根、相対性理論の永井聖一(Gt)が参加)が、今年3月になって「TESTSET」として正式にスタートを切り、既に数度のライブを重ね、この8月12日には1st EP『EP1 TSTST』をリリースしていることを考えても、昨日今日決まったことではないのかもしれない。小山田圭吾によるソロユニット Corneliusも今年の夏フェス出演を機に活動を再開しており、既に各々の動きは顕在化しているのだ。

METAFIVE - “METAATEM (Deluxe Edition)” TRAILER 4

 それだけに、こうして正式リリースされた『METAATEM』は、タイミング的になんとも微妙な立ち位置に感じられてしまうかもしれない。だが、肝心の音楽の中身はどうなのかと言えば、これが凄まじくキレキレの内容なのだ。言われなければこれがラストアルバムとは到底思えない新鮮なアイデアと沸き立つようなエネルギーが溢れている。総体としては前作のファンク成分をさらに強化したようなサウンドだが、よりフィジカルな強靱さを増したグルーヴ、バンドとして緊密かつ有機的な一体感を増した演奏は圧巻と言うしかない。なんとしても前作よりも進化した姿を見せるという意思が漲っている。豊富なキャリアを持ったベテランたちが集ったバンドなのに、まだまだ伸びしろを残しているような気配すら漂っているのだ。

METAFIVE - 環境と心理 -

 アルバムの制作は2019年から始まり、コロナ禍で作業は遅れたものの秋ごろから本格化、2020年7月にシングル『環境と心理』をリリースするも、翌月に高橋の手術があり中断。退院を待って制作を再開し、2021年になって完成した。制作プロセスは前作同様、各自が作ったデモ音源をメンバー全員が共有し、それぞれ音を加えたり加工したりして完成させていくという形で行われたが、前作よりも高橋の叩く生ドラムの比重が高くなり、それがアルバム全体のバンド感、躍動感の強化に繋がっている。最近はバンドであっても全パートをバラバラで録音する例も増えているが、録音技術の進化はそれでも完璧なバンドサウンドを可能としたのだ。

 もっとも顕著なのはTOWA TEIとLEO今井の共作「Ain't No Fun」で、Talking Headsを思わせるダイナミックなアフロエレクトロファンクビートは圧巻の一言。当初打ち込みで考えていたものの、高橋自らが生ドラムを叩きたいと申し出て、全編生ドラム演奏となったという。ゴンドウトモヒコとLEO今井が共作したカッティング・エッジなエレクトロファンク「In Sorrow」での高橋のプレイも圧巻。小山田のエイドリアン・ブリューのようなトリッキーなギタープレイも尖りまくりだ。高橋と今井の共作「May Day」はもう少しテンポが緩やかなアフロビートだが、やはり小山田のギターワークがピリリと効いている。また全編にわたって今井の存在感が強く出ており、ボーカルのみならずソングライティングでも才能を発揮しているのは本作の大きな収穫と言えるだろう。彼の肉感的で荒々しいボーカルもまた、本作の肝となっている。上モノの細かいアレンジやエフェクトなど全体のトリートメントは砂原の力も大きいようで、もちろんマスタリングは砂原である。

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