『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』オープニングアクトで注目 Drive Boyが目指す、“気持ちよさ”を追求した音楽体験

バンドの中にある“泥臭くやる”という共通認識

ーーDrive Boyを始めるまではメロディックパンクやエモといったジャンルの音楽をやっていたわけですよね。そこからどういうふうに変化して今の音楽性になったんですか?

Otake:そのときからドラム(Syun Mori)もずっと一緒で、3人で西海岸寄りのパンクだったり、日本だったらELLEGARDENとか、そういう音楽をやっていたんです。でも俺はそれと並行してThe Chemical Brothers、Underworld、Aphex Twin、Squarepusherなども聴いていたんですよね。で、あるときふと、ライブハウスで対バンしていても全部一緒でつまらないなと思って。みんなそれぞれオリジナルのかっこいいものをやりたくてライブハウスに出てるわけなのに、全員同じようなことをして、なんか全然面白くないなって。だったらもう思いっきり自分が本当に好きなものを曲にしてみようっていうのが始まりでした。それでバンドを新しくして始めようと思って組んだのがDriver Boyだったんです。

ーーなるほど。でも、バンド名も「Born Slippy」の歌詞から取っているし、そういうのが好きなんだなっていうのはわかるんですけど、過去の楽曲を聴いていくと、Driver Boyってどういうバンドなのかなっていうのがどんどんわからなくなるなって(笑)。

Otake:(笑)。

ーーテクノな曲もあればサーフっぽい曲もあったり、曲によって全然色が違う。それはあえてやることを絞らずに、好きなものを取り込んでいろんな表現をしていこうっていうスタンスだっていうことなんですか?

Otake:そうですね。Drive Boyとつけたのも、Underworldの真似事をするためにつけたバンド名というよりは、単純に名前をつけるときに、ちゃんと意味があって、自分たちに落とし込めるものにしたいと思って。それで「今まで見た中で一番やばかったライブってなんだろう」と考えたんです。そこで浮かんできたのが『SUMMER SONIC 2016』のUnderworldで。ライブを観ていたときは鳥肌が立って涙が勝手に出ちゃうというか、魂が抜けるような感覚だったんですよね。それでUnderwoldからバンド名を取ろうと思って、一番カッコいい曲の頭の歌詞から〈Drive Boy〉を選んだんです。だからUnderworldみたいな音楽をやりたいというよりは、その感覚からつけたバンド名なんですよね。

ーーUnderworldのライブのようなエネルギーやパワー、心を揺さぶるものというのが根っこにあったわけですね。それを生み出すためにいろいろな音楽をやっていくっていう。

Otake:はい、そうですね。

ーーでもあれだけ幅広い音楽をやるというのは、イメージはつながっているにしても技術的には大変じゃないですか?

Otake:それは大変でしたね。それこそサーフ系の曲は、今までBPM180〜200ぐらいでやっていたのを、いきなりBPM100ぐらいでうねりのある8ビートを叩いてくれといっても、全然しっくりこなくて。だからその時はずっとスタジオに入って、「いや、そうじゃない」みたいなトライ&エラーを繰り返しながら、ちょっとずつ馴染ませていきました。

Ogawa:ベースも最初始めたときは指で弾いていたんですけど、その後はずっとピックだったので。逆に「指でどう弾いてたっけ?」とYouTubeで動画を調べたりして(笑)。エレクトロはビタビタに合わせていくところがメロディックパンクに近いと思うんですけど、そうじゃない曲は難しかったですね。

ーーデモもちゃんと作り込んで持っていくんですか?

Otake:いや、作り込まないです。なんなら曲は完成までメンバー誰も知らないんです。よく言われるんですけど、曲の作り方が異質なんです。ドラムもベースも最初はパーツで録っていってそれを組み合わせて作っていくので、たぶんドラムは「どこがサビなの?」っていう感じだと思います。それで最後に歌を考えるんですけど、そこも何パターンか作って。そこも完成するまでどういうメロなのかわからない。

Ishibashi:僕らとしては完成を「楽しみに待ってる」みたいな感じ(笑)。

ーー今回の「Time Flies」もまた新鮮な色を取り入れた曲だと思うんですけど。エレクトロの要素もありながら、オーガニックなファンクやディスコのグルーヴもあって。

Otake:6月に出した「Bittersweet」がどちらかというとネオソウルチックな、ゆったりとノる感じの曲だったんです。それこそトム・ミッシュやHONNEが流行っていた時期だったのもあって、俺らもそういう曲ができると思って作ったんですけど、自分は80'sのディスコミュージックも大好きなので。ナイル・ロジャースみたいなギターのカッティングに、今のエッセンスや自分たちの色を加えてみたらもっと気持ちよくなるのかなって。サウンドの説明が難しいんですけど、点を集合させていくような作り方をしていきました。ギターも2つでパンを振って立体的にしていたり、ドラムも数種類、あとパーカッションも入れたりして、空間的な音で作れるようにミックスも考えましたね。そういうところで「踊れて楽しいけど、Drive Boyっぽさもあるよね」となったらいいなって。

ーーそういう音響的なところも毎回かなり緻密にやるんですか?

Otake:めちゃくちゃやりますね。高校生の頃から自分達のレコーディングをしてくれている方にミックスはお願いしたのですが、業務メールみたいな細かいやりとりをして。周りの話を聞いていると大体みんな5〜6回のやりとりで終わるみたいなんですけど、俺は長いときで半年ぐらいやりとりするんですよ。今回も4カ月ぐらいかかりましたね。ミックスが上がってきても、1回なじませたり、1週間まったく聴かない時期を作ったり、時間帯変えて聴いてみるとか、試せることは全部試して、納得した上で出したいんですよ。なんでこんなドMなことやってるんだろうってたまに思いますけど(笑)。

Ogawa:そういう性格なんですよ。

Ishibashi:ゲームでも、おまけのミニゲームまで全部やってるもんな。

Otake:そうだね。ゲームもトロフィーを100%取るまで絶対やるんです。それはあるかもしれない。どうせやるならサブミッションまで全部終わらせないとダメ。どうでもいいミニゲームもSランクになるまで全部やる。あと、メンバーみんなにも言うんですけど、自分達は天才じゃないんで。凡人の集まりだからこそ、そういう1個1個の小さな穴をいかに細かく埋めていくかっていうところじゃないと勝てないんですよ。そういう感覚は少しあるかもしれないですね。

ーー「自分は天才じゃない」っていう自覚、認識があるんですね。

Otake:YouTubeでも何でも、いろんなところに手を出せる時代ですけど、「なんだこの人すげえな」と思わされる人がいるじゃないですか。感覚でこれやっちゃうんだ、みたいな。音楽に限らず、ここには絶対に手が届かないと思うこともあって。そういう人たちに対抗しなきゃいけないとなると、どこまで細かく穴を埋めていくか、例え穴が開いていなくても「いや、ここ薄いからもっと補強しておこう」とか、完璧な状態にしないといけないのかなって。

Ishibashi:そうやって泥臭くやろうっていう共通認識はバンド全体にありますね。みんなスポーツ経験者なので、泥臭く、しっかりやろうみたいな。あと、Otakeが引っ張っていってくれるんで「監督が言ってるから俺も頑張ろう」みたいな感じはあるかもしれないです。

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