石井竜也が『ISHYST』ツアーで響かせたかった思いとは? 逼迫した時代に伝えたいメッセージ
石井竜也と米米CLUB、それぞれで思い描く今後のビジョン
ーーセットリストは全体に、ゆったりとした音の響きを楽しみながら聴ける曲調が多いです。そもそも石井さんのソロは、そういう曲が多いですけど。
石井:米米CLUBとの棲み分けということもあって、米米CLUBは音で遊ぶバンドなので、ソロは音で感動してもらいたいと思って、歌詞も深みのあるものを書いていることが多いです。ソロ活動を始めた当初は、どうしても米米CLUBを意識したものを求められて。米米CLUBでは意外とディスコをやっていなかったので、ソロではディスコを取り入れた『DEEP』というアルバムを作ったんですけど、今はまた若い子の間でディスコが見直されていると聞いて、面白いものだなと思ったりしました。あと、あいみょんの曲を聴いたりすると、50代や60代が聴いてもキュンとくるようなメロディがあって、すごく頭のいい子だなと思ったり。それは、今また日本人の根底にあるメロディが求められるようになってきている、ということなのかなと思っています。
ーー今回のコンサートの選曲は、すごくメロディ感が感じられる曲ばかりでグッときました。
石井:でも4オクターブくらい音域が出せないと歌えないような曲ばかりなんです。低いところから高いところまで、一気に上がったり下がったりする曲が多くて正直大変でした(笑)。サウンドに関しては、ふくよかな音をみんなに聴いてほしくて、弦を2人入れたりもしています。
ーー2011年にリリースした『MOON & EARTH』や、2012年の『HEARTS VOICES』、2007年の『ACRISM』の曲が中心ですが。
石井:その時期に、こういうことを考えていたんでしょうね。当時のことをはっきりと覚えているわけではありませんが、米米CLUBが活動を終了する頃から、シルクロードとか地球を蒼い船に例えた「蒼い惑星」という曲を作ったりしていて。やっぱりそういう世界観が好きなんです。考古学者や科学者が、大きな視点で一つのことを掘り下げて考えていくのは、すごいことだなと思っていて。長年可愛がってくださっているエジプト考古学者の吉村作治さんなど知識人の方とお話をすると、自分が考えもしなかったことをたくさん教えてもらえた。そういう方にインタビューをさせていただくことが米米CLUB時代から多かったので、その経験も大きく影響しているでしょうね。
ーー地球や海といった神秘的で壮大なテーマを持った曲が多く、このコンサートはそういう悠久のロマンを感じさせますね。
石井:毎回映画を一本観るような雰囲気にできたらいいなと思っていて、以前は60歳になった時に、『007』をイメージして『006』というコンサートをやったこともあるんです。だから、セットも映画のように立体的に作って。僕が歌う場所はステージの真ん中で少し高さを出しているんですけど、後ろの方から観るとどうしてもモニターなどで足下が隠れてしまうし、座って歌うこともあるし。僕のコンサートでは、僕が歌う場所のことを「お立ち台」って呼んでいるんですけど、お立ち台の前面にコンサートの題名が入った枠組みを作っています。その間にモニターを入れています。全方向から歌っている人が丸ごと全部観える形に作っているので、立体ということはすごく意識しています。ステージに飾ってあるオブジェも、全て裏側までしっかり作ってあるんです。
ーー後ろに大きな羽根のオブジェがあって、正面から観た時に石井さんの背中に羽根が生えているように観える趣向で、羽根は米米CLUBの時代からグッズやセットのモチーフにしていましたね。
石井:エンジェルが好きなんです。そういったモチーフも織り交ぜつつ、全体的には「音の神格化」みたいなことができないかと思って作っています。
ーー石井さんのコンサートはMCも魅力です。先ほど話されていたような、コンサートのテーマにまつわるお話をMCでもされていて。コロナ禍におけること、ジェンダー問題に触れた話、NASAが撮った地球の写真の話などもあったり。今の時代へのメッセージが詰まっているなと思いました。
石井:面白いと思ったでしょ(笑)? 「今そんなことを考えている余裕はないよ」と思うことを話すことで、みんなに気づいてもらえることがあるんじゃないかと思うんです。仕事でいっぱいいっぱいな時にコンサートにきて、「石井が何か面白いことを言ってるな!」と思って、「じゃあそのことをググってみようかな」ってなってもらえたらうれしいですね。そういう興味を引く話も、コンサートの一部として楽しんでもらえたらなと思っています。コンサートにきてくれた一人ひとりが何かに気づいてくれることで、またどこかで「石井さんがこう言っていたよ」と話ができる。「地球はこれからどうなってしまうのか」なんて、家族で話す機会は滅多にないけど、コンサートで石井がこう言っていたと話すだけで、中学生くらいの男の子だったらいろんなものに興味を持つ年代だから、すごく興味を持ってくれるかもしれないし。
ーー石井さんのコンサートをきっかけに、考古学者を目指す子が出てくる可能性もあるという。
石井:そこまでは望んでませんけど(笑)。歌の深みみたいな部分では、「歌をやってみたい」という子供たちに対して、ただ好き嫌いを歌うだけではない、人生観だったりもうちょっと大きな歌にも興味を持ってもらうきっかけになればいいなと思うんです。海外にはそういう歌がたくさんあるから、日本にもそういう歌が増えていってもいいんじゃないかと。
ーーWOWOWプラスでの放送は、ぜひ家族みんなで観てほしいですね。
石井:そうですね。歌はもちろん、MCも堅苦しくなく、下世話なオブラートに包みながら話しているので、そこも含めて楽しんでもらえたらと思います(笑)。面白さ半分、最後にちょっとだけ「そんな見方もあるんだ!」と、気づきがあればいいなと。
ーー名古屋公演では、歌の入り方に失敗して歌い直すという場面もあり、実にライブらしい側面も感じられました。
石井:サポートしてくれているミュージシャンがみんなすごく上手いこともあって、アレンジも少し難しいものが多いんですよ。一拍空いていたり、1番は空いていないのに2番は空くとか、変則的なアレンジが結構あって。4小節で入るだろうと思ったら、5小節になっていたり。そういう“罠”が結構あって、しゃべりに夢中になっていると、曲に入った時にパッと出てこなかったり……(笑)。
ーーWOWOWプラスでは、『2番組一挙放送!石井竜也スペシャル』と題し、『石井竜也 TATUYA ISHII CONCERT TOUR 2022「ISHYST」』に続けて、昨年開催された『米米CLUB a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2021 ~大芸術祭~』も放送されるということで、“石井竜也”と“カールスモーキー石井”を連続で楽しめますね。
石井:二重人格と言われそうですけど(笑)。米米CLUBは、どんなにふざけていても音楽的に深いところまで追求してきたメンバーなので、ふざけて見える曲のほうが実は音楽的にはすごく面白いことをやっているんです。「FUNK FUJIYAMA」はその代表で、イントロのギターカッティングや歌がすぐ頭に入ってくるのも計算の上です。ただその表現方法が、際の際まで行こうぜと決めてやってきたので、ああいう形になった。ただ僕のソロでは、自分の身体の奥から出てくる素直な音楽を、ちゃんと人に向けて伝えようという思いでやっています。メロディの美しさとか、あくまでも僕が思う美しさではあるけど、たぶんみんなも美しいと思ってくれるんじゃないかなと思う、そういう曲を選んで歌っています。
ーーソロはしっとりと楽しみ、米米CLUBではウキウキして。
石井:僕は米米CLUBでも、ウキウキできないんですけどね。やることが多すぎて(笑)。
ーー最後に、石井竜也としても今年ソロデビュー25周年、米米CLUBは結成40周年という節目ですが、今後のビジョンは何かありますか?
石井:米米CLUBはこのままは面白いことをやって笑いをみんなで共有していく、お客さんも演奏する側もないと言うか、そういうバンドで居続けたいと思っています。石井竜也の場合は、ショーとして魅せていきたいですね。米米CLUBよりもシリアスなものをやっていきたい。その上で、歌という部分ではもう一度勉強して追求していきたいと考えています。そういう思いがずっとあるんです。できるだけ自分の中から出てくる、素直なメロディを大切に歌っていきたいと思っています。今作っている曲もメロディアスなものが多いですし、今後の作品も楽しみにしていてほしいですね。
■放送情報
『石井竜也 TATUYA ISHII CONCERT TOUR 2022「ISHYST」』
WOWOWプラスでテレビ初独占放送
<放送日時>
2022年7月31日(日)19:00〜21:30
収録日:2022年6月26日/収録場所:大阪 Zepp Namba
番組詳細:https://www.wowowplus.jp/feature/Ishii-special/
■関連リンク
「T-STONE」TATUYA ISHII OFFICIAL WEBSITE:https://www.t-stone.com/
石井竜也 公式Twitter:https://twitter.com/tatuyaishii0922