「蜘蛛の糸」「吾輩は猫である」……文学の名作を言葉・メロディ・映像で描く 音楽ユニット Lazuli Codeが創造するもの
昨年始動したユニット“Lazuli Code(ラズリーコード)”。“Lazuli”は、古代より直観力と創造力を高める力がある「聖なる色」として崇められ、純文学の世界では思春期の物語を描く際のコンセプトカラーとしての意味も持つ。そして“Code”は、情報に対して割り振られた数字や文字を意味する。つまり“Lazuli Code”とは、思春期の心情が綴られてきた文学の名作を題材に、言葉とメロディと映像という形で描く、非常に現代的な表現手段を用いて展開する新たなユニットだ。
公式YouTubeチャンネルでは「蜘蛛の糸」「吾輩は猫である」「クローディアの秘密」の3曲のMVが公開されている。「蜘蛛の糸」は、アップテンポのサウンドに息つく暇も無いほど早口で畳みかけるメロディが乗せられた、ボーカロイド楽曲のような印象。ファルセットを用いた高音に展開するサビは実にキャッチーで耳に残る。楽曲の題材となったのは、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』だ。
いじめ・受験戦争・裏垢・スクールカーストなどが蔓延する学校を地獄と例え、その中から一刻も早く抜け出すために蜘蛛の糸を垂らしてほしいと歌う。サビの〈スパイダー〉にかけて〈失敗だ〉〈限界だ〉と歌う韻が実に心地良い。しかし内容はなかなかショッキングなもので、蜘蛛の糸に捕まるのではなく……主人公が蜘蛛の糸でどうしたかは、実際に楽曲を聴いて確かめてほしい。
一方「吾輩は猫である」は、シティポップ~渋谷系の流れを汲んだ、ゆったりとしたジャズ調のおしゃれなサウンドが印象的。ピアノやベースが心地よく響き、猫の鳴き声がSEとして使われているのも一興。夏目漱石の『吾輩は猫である』を題材に、歌詞は猫と自分が入れ替わってしまうというファンタジックなもので、サビには小説の書き出しである〈吾輩は猫である名前はまだない〉という有名な一説も登場する。
そしてE・L・カニグズバーグの同名小説を題材にした「クローディアの秘密」は、エレキギターがかき鳴らされるエモーショナルなロックチューン。同じワードの連呼やブレイクが効果的に使われ、思わず楽曲の物語に引き込まれる。歌詞は、日常に転がっているちょっとした冒険やミステリーを解き明かしていくような、好奇心とドキドキに溢れたもの。スマホに目を落としてばかりではなく、たまには顔を上げていろいろなものを見てみようというメッセージが感じられる。