社会人バンド つづき、類い稀なるボーカルに国内外リスナーが注目 音楽を“仕事”にしないマイペースな活動に迫る

 結成10年、国内外でじわじわと認知を高めているバンド、つづき。活動10年にして3曲目の新曲「(what you've) lost」をリリースしたばかり、メンバーが仕事をする傍ら、ライフワークとして良質な音楽を生み出してきた5人組だ。

つづき / (what you’ve) lost -Prod.JYAGA-

 SEKI-NE(Vo)のボーカルを中心に、温かみのあるメロディと心地よいグルーヴ、都会的であると同時にノスタルジックな感覚も抱くサウンドプロダクトは、万人の心にそっと寄り添ってくれるような安心感がある。

 もともとはクラブイベント用の即席バンド的なところから始まり、そのままマイペースに活動を続けてきただけに、メンバー同士のやりとりも非常に自然体で仲の良さが節々から伝わってくる。インタビューを受けるのもほぼ初めてということで、結成から現在までの歩み、社会人としての音楽との向き合い方など、まだ明かされていないバンドの全貌を掘り下げていきたい。(編集部)

つづきの由来は「いつまでも続いていったらいいな」

SEKI-NE

ーーつづきは2012年結成ということで、もう結成から10年目を迎えるバンドですが、そもそもはどのように始まったバンドなのでしょうか?

Yochi:元々はDJがいる音楽イベントをやりたいなと思って。フィッシュマンズとかサニーデイみたいな、いいムードの音楽が流れるようなイベントをやりたかったんです。それで友人のDJのCOOLGさんという方と2010年に「DUBPOPNITE」というイベントを立ち上げたんですけど、蓋を開けてみたらすごく反応がよかったんですよ。それで、2年目からはイベントにライブも入れようと思って、SEKI-NEや友くん等に声をかけたんです。それが最初ですね。3年目にはイベントを博多や札幌でやったりするようになったりもしたんですけど、その辺りで必要に駆られて「つづき」というバンド名を付けました。なので、そもそもはイベントのためだけにやるバンドっていう感じだったんです。年に2~3回くらいライブをやる感じで活動を続けていたら、気づいたら10年経っていました(笑)。

ーー今のメンバーの5人に固まったのは、いつ頃なんですか?

Yochi:6年くらい前だと思います。

ーーYochiさん、SEKI-NEさん、友さんでつづきがはじまったときに、理想とする音楽的な方向性などはありましたか?

Yochi:明確な方向性は無かったと思います。しいていうなら映像的なものにハマるような音楽とか、あとはやっていて無理がない、自分たちにとって心地良い音楽をやりたいというのはありました。だから最初は自分たちの好きな曲のカバーをやっている感じでした。イベントの雰囲気もそういう感じでしたし。クラムボンとかSmall Circle of FriendsとかNujabesとかやってました。

友:あと、Polarisとかね。

ーー「つづき」という印象的なバンド名はどのように決定したんですか?

Yochi:このメンツで一緒にいたら楽しいし、「いつまでも続いていったらいいな」と思って結構安直に付けました。

友:当時はまさか10年続くなんて思っていなかったですよ(笑)。その場限りで終わるバンドだと思っていたので、そこまで深くは考えていなくて。なので、バンド名を提案されたときも、誰も反対することなく、即決でしたね。

好きなことを好きなようにやって成立する環境

ーー振り返ると、つづきとして最初のシングル「逡巡歌」がリリースされたのが2017年、次のシングル「邯鄲夢 -KANTANMU- (feat. o'taka & adipoy)」がリリースされたのが2019年で、そして今年、新曲「(what you've) lost」がリリースされて。現状、つづきの音源として私たちが触れることができるのはこの3曲なんですけど、そういう意味では、非常にゆっくりとしたペースで活動されてきていると思うんです。だからこそ、そうやって続いてきた10年という年月は端から見てもすごく特別なものに感じます。皆さんにとって、日常や生活の中で、つづきというバンドはどういう場所なんですか?

友:ライブイベントをしたり、5年前くらいに『東京Neighbors』という作品に「音楽を付けてほしい」と言われたり、そういう「音楽を作らなきゃいけない」タイミングというのがあって、そのときに声をかけやすい面子というか……ちょっと正直に話しすぎている感じもしますけど(笑)。まあ、元々仲がいいので。僕はまなぶさんとはつづきの前から一緒にバンドをやっていたりもしたし、わりと旧知の仲なんですよ。なので、本当に友達感覚ですね。この5人のなかでSEKI-NEくんだけいまは東京にいないんですけど、会いに行くために昨日までバンドメンバーで旅行してました(笑)。音楽的な話ができてなくて申し訳ないんですけど(笑)。

ーーいやいや、思うことをお答えいただければ。まなぶさんはどうですか?

まなぶ:私としても、「年がら年中、つづきです」というスタンスではないんですよね。それこそ必要に迫られたらやるっていう感じのバンドなんですけど、じゃあ、必要に迫られることが嫌かというと、そういう感じはまったくなく。いつも「この時が来たな」っていう感じなんです。この5人で集まってやる練習から企画から、全部が非常に緩くて、居心地がいいんですよね。日常的にはみんな別の仕事で働いていますけど、そんな中で、疲れが取れるような空間がもたらされているバンドだと思います、私にとってつづきは。そういう部分は、これまで出してきた曲にも出ているのかなって思いますね。

ーーYochiさんはどうですか?

Yochi:ふたりが言ったことに近いんですけど、バランス感覚が心地良い人たちの集まりだと思います。仲は良いけど互いの領域への踏み込みの度合いを常にしっかり測ってくれるような。このメンバーでスタジオに入ると楽しいんですよ。3時間スタジオをとっていたら、1時間くらいは喋っていたりする(笑)

一同:(笑)。

Yochi:別に先のことをすごく考えているわけではないんですけど、「結構先まで一緒にこういうことをやっていられそうだな」と思える面々なんですよね。あまり我が強いタイプの人もいないので。むしろ、前に出たくない人たち(笑)。

まなぶ:みんないい大人だけど、素直だよね(笑)。音楽をやるときに「お前らついて来い!」みたいな感じでやる人たちもいると思うけど、この5人に関してはそれが一切ない。そこは居心地がいいよね。

SEKI-NE:それは思いますね。僕は仕事を生活の中心に置いているので、あくまでも、それがあっての音楽なんです。つづきのメンバーとは、その距離感がマッチしているなと思います。音楽にグーッと向き合って、衝突しながらいい音楽が生み出される場合もあると思うけど、そうではない、いい距離感の、いい関係性の中で音楽活動をすることで、生まれるものがある。なので、すごくありがたい存在です。なくても生きていけるけど、あると、すごく糧になる。あと、僕は若い頃から音楽をやってきて、ソロでもやるし、バンドもいくつか組んだことがあるんですけど、バンドに関しては全然上手くできなかったんですよ。

 なので、すごく苦手意識があったんですよね。周りにはパンクやエモコアを好きな人が多かったこともあって、それこそ、音楽を好きなもの同士がガチンコでぶつかっていく、みたいなノリもあったけど、それが苦手で、合わなくて。だから「バンドはもういいかな」と思っていたんですけど、Yochiさんのイベントでかかっている音楽は好きだったし、その音楽を好きな人たちが周りにいることも嬉しかったし、その人たちに「バンドをやろう」と誘ってもらえたことも嬉しくて。「ここでは自分の好きなことを好きなようにやっていいんだ」っていう、それがもう自分にとっては衝撃でした。

スヌ:「好きなことを好きなようにできる」っていうのは、本当にそうだなと思います。自分がギタリストとしてつづきにいますけど、「私、ギタリストです」みたいな感覚が実はそもそもないんですよ。最初に入ったバンドではキーボードを弾いていたし、ドラムを叩いてたこともあったし。必要とされたときに、自分のできるアウトプットをするっていう感じで音楽をやってきたんですけど、つづきの場合、自分が好きな音色やフレーズを持っていくと、それがハマるというか、「いいな」と言ってもらえるんです。本当に、自分が好きなことを好きなようにやって成立する環境ですね、つづきというバンドは。

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